嫌い嫌い言っても
「ソフィからきいてるとは思うけど、オレ達は北の地域の貴族『セクレタン』家の産まれなわけさ。ただ、貴族の産まれっていっても何もしないで威張って生活出来なんてことはもちろんありえない。……まあ今でもそんな変な勘違いしてるヤツらも居るが……。」
「そうらしいね、わたしにはよくわかんないけど……」
『貴族』とか『王族』が偉いだけで何もしていない……なんて、流石のわたしでもそんな勘違いはしないよ。何かしらの大切だ仕事をしたり、地位があるからその肩書きがあるんだし……ね?
「でさ、知っての通りソフィはなかなか入るのが難しいなんて言われる世界統括団体に、それもコネなんかじゃなくて自分の実力で入ったわけ。さすがだよな。」
「う、うん………」
お酒飲んでるけど、酔ってるって感じは無い。素直に、ソフィさんのことをすごいって思ってるんだろうし、大切な妹っていうのも嘘じゃなさそうだね。
「………そしてオレの話だ。実はこう見えてオレも世界統括団体に所属しててさ、どうだ?そんなふうに見えるか?」
「………………全く見えない」
だって制服は来てないし、武器も持ってない………ていうか、ほんと?世界統括団体に所属してるなら、ソフィさんも言いそうだけど…?
「いやー、世界統括団体はいいよな。今は着てないけど、制服テキトーに来てればみんなそれなりにいい対応してくれるし、綺麗な人とか可愛い人も来てくれるぞ?ああ、あんたみたいなお子ちゃまは別にどうでもいいけどさ……」
「ちょちょ、ちょっと?いや別にわたしもどうでもいいけどさ?」
なんなんだろこの人……
「まあオレは戦いも苦手だし、危険な場所の探検も嫌いだ。さらに言えば頭も良くはないから魔法も使えない。」
何種類化のお酒を混ぜなて飲みながら、調子よく喋る。
「じゃあなんで世界統括団体に?」
「……それが原因でソフィはオレのことを無視するような扱いをしている。……まあつまり、オレこそが『コネ』なわけ。ソフィに頼んで、入れるようにしてもらった。」
「うわぁ…………」
無い、それはさすがにありえない。妹に頼んで無理やり入った挙句、ろくに何もしないでその立場だけ利用してるの??そりゃあ他人のフリもしたいよね。もしかしたらわたしよりも……
「おいおい……そんな顔されてもな………。オレはさ、別に人に迷惑かけたり、誰かを困らせたりはしてないぜ?なぁ?」
「…………私はかなり困ってるのよ」
「お、ソフィ。いつから居たんだ?」
いつの間にか背後にいたソフィさんに驚くこともせず、お兄さんはそのまま隣の席にソフィさんを座らせた。
「ルナちゃん平気?変なことされてない?」
すごく心配そうにきいてくるあたり、普段の信用が見え隠れしてる気がする……。
「平気だよ………すごいしょーもなくて残念で可哀想な話きかされただけだし………」
「オレのことか?」
「自覚あるなら何とかしてよね……ミトラス」
「ん?」
「お、どうかしたか?」
「あら……なにかきになる?」
あれ?いいの?なんか珍しくない?
「ミトラス…さん?ってソフィさんのお兄さんだよね?」
「それがなんか変か?……あと呼び捨てでいいぞ。」
「あ、うん…………いや、だから…ソフィさん………ミトラスって呼んだから………なんか、年上の兄弟とか姉妹のこと名前で呼び捨てって、珍しくない?」
「あー……まあそうかもな。あれだよ、これもソフィがオレのことを碌でもないやつって思ってるっていう気持ちの現れ…とか、そういうやつだろ、多分。」
「なんで他人事なの………」
「いいのよ、私はこれで。昔からそうだったもの。歳も近いし、こんなんだし……あんまり兄って感じじゃないのよね。バレちゃったからもう隠しはしないけど………どう思う?こんな兄。」
ソフィさんはミトラスの隣に座って、嫌そうな顔できいてくる。どうってきかれたら、そりゃあ……
「嫌……かな。たしかに他人のフリもしたくなる。」
「おいおい、初対面の女の子にそんなこと言われる程なのか……。」
わざとらしく驚く仕草なんてして………いやいや、絶対自覚あるでしょ………。
「まあなんでもいいわよ………こんな兄だけど、一応私の……………いや、なんでもないわ。じゃあ私先にいってるわね。ルナちゃんも、適当に話切り上げた方がいいわよ?」
「はは………」
そして、ソフィさんはほんとにそのまま行ってしまった。
「それなりに久しぶりにあったってのに、それだけかよ。」
口ではそんなふうに言いつつ、全く残念そうにしないでいつの間にか運ばれてきていた料理を食べるミトラス。………それわたしのな気がするんだけどね。
「久しぶりなの?世界統括団体の本部で会わない?」
「会わないなー。オレ、基本どっか歩き回ってるし、ソフィもそんな感じだろ?だからこうやって超偶然会わないとだな。まあ会っても嫌味しか言われないが……。」
「だろうね。」
でも、そんなふうにいうミトラスは急に声のトーンを落として、少し真面目に喋り出す。
「さて、せっかくだし話しておくとするか。」
「え、なに?」
「ま、大したことじゃないさ。オレ達の……セクレタン家のこと。本来はそんな人にべらべらと喋ることでもないが、あんたならいいだろ。ソフィもやたらと信頼してるし、オレからしても恩人だしな。」
「そ、そりゃどうも……」