また会う約束しよう
「色々とは……」
メルリアはぐっと顔を近づけてきて、わたしを真っ直ぐ見つめて喋り出す。
「まずねー……ありがとね。」
「へ?」
「シオンは何も言ってなかったと思うけど……魔王軍?の強い人たち倒してくれたんでしょ?知ってるよ!」
「………ああ、倒したって言うかなんて言うか………」
1人はまあ倒したけど、後のふたりはなんか勝手に仲間になった。まあ無力化したって意味では倒してるか………。
「なんで知ってるの?」
「秘密。でも、敵側の戦力を減らしてくれたのは助かるし、ルナだってなんにも役に立ってないなんてことは無いよ。」
「そ、そっか………」
なんか素直に喜べないような……?
「で、それはそれとしておいておいて。もう1つ。」
「ん、なに。」
「もしかしたら……もうこれが、会うのは最後かもしれないから……一旦お別れ。……」
「は、ちょ……どういうこと??」
突然すぎる。メルリアは笑って続ける。
「これから先、とりあえず西にある物を取りに行くけど……ルナは南だよね?だから当然、普通に考えても暫くは合わない……。で、きっとそのうちに私達はもっと他のものも集めているはず………」
「うん………」
「きっとそう遠くないうちに、今まで以上に魔王に本気で命を狙われる。そうなったら、迂闊に他の人と合流したくないの。危険だから………。だからお別れ。次に会うのは……世界が平和になったらだよ!約束!」
「あ、ああ…なんだそういうこと………」
びっくりした。この先の旅で、死ぬ覚悟をしてる……とか、そんなことかと思っちゃった。単に、物理的に会えないってだけね。
「でもさ………」
「ん、なに?」
「シオンとも少し話したことあるんだけど………この世界、ホントに救う意味あるのかなって。」
「ど、どういうこと?」
メルリアは笑ってるけど、しゃべり方はすごい真面目。なに?
「だってさ、ほら。今日だって盗賊団を退治したけど、別にこれは魔王なんて関係ない。魔王がいてもいなくても、自分の利益のためだけに攻撃的になる人はいる………でしょ?」
「それはそうだけど………」
「世界を救ったその先にあるのは本当に平和な世界?魔王が現れる前は本当に世界は平和だった?……ねえ、どう?」
顔をぐっと近づけてきて、メルリアは問いかけてくる。
「……わかんないよそんなの。なんでわたしにきくの。」
「…なーんて!」
「は?」
「そんなこと、考えてもしょうがないし!悪い人達がこの世界にいるのは事実だけど、だからって世界を救わなくていいなんてならない!ちょっと意地悪なこと聞きたかっただけ!魔王がいなくなったら、その時はそのときでちゃんとまた考えればいいだけ!」
「そ、そっか………」
本当に冗談?メルリアは本心では何を思ってるの?取り繕ってるだけにも見えなくもない。考えすぎ?
「むしろ、魔王がいるからこそ『もうどうでもいい』って自暴自棄で犯罪に走る人もいる……だから、絶対魔王は倒すの!……そろそろ戻ろっか。ソフィも起きてるかも。」
メルリアはわたし手を引いて立ち上がる。
「そうだね、最後に話せてわたしも嬉しかったよ。」
「うん!ルナはルナで、ソフィのお手伝い頑張ってね!」
「任せてって!」
――――――――――――――――――――
「あら、2人ともどこ行ってたの?」
部屋に戻ると、ソフィさんはもう起きていて、部屋の机に向かってなにかしているところだった。
「ちょっとね。」
「お話してたよ!……ソフィは何してるの?」
「ちょっと気になることが………メルリアちゃん、シオン君の持っている『勇者の剣』、あれってどこにあったものかわかるかしら?」
あ、わたしもきになってたやつ。
「んとね、なんか…勇者として覚醒すると、その時に一緒に……出現?するんだよ。こう、パって。」
メルリアは何かしらの手振りをしてるけど、よくわからない。
「そう……ということは、それまでは世界中どこにも存在しないのね?」
「うん。わたしの持ってるこの杖とかは昔から存在している、魔王に立ち向かう力のある武器だけど、勇者の剣は少し特別。その瞬間に生まれるわけだから、絶対に勇者の手元にあるわけで、探さなくていいから簡単!」
「たしかに」
「なるほど……でも、そうなると……この世界には今勇者の剣が2本あるのかしら?」
「?」
「なんで?」
ソフィさんは立ち上がり、メモのようなものを見せてくれた。
「昨日見つけた壁画。メモもしたんだけど……かつての勇者も、勇者の剣を持って魔王に向かった……でも、シオン君の持っている勇者の剣とこれは別なのよね?それなら、この剣も世界のどこかに残ってないかしら?それとも、いくら勇者の剣とはいえ、風化には耐えられないのかしら…?」
「どうだろね?私もちょっとわかんない!…………それに、その伝承は…………ま、いいや。ね、お腹すいたからご飯食べようよ!」
「賛成!ほらソフィさんも!下の階に食堂あったから、いこ!」
「え、ええ……そうね。行きましょうか。」
ソフィさんの手を引いて、部屋の外に出ようとした時
「歴史なんて………いくらでも誤魔化せるよ」
メルリアがなにか不穏なことを言った気がしたけど、気のせい気のせい!ご飯食べよ!!