問題解決…?
砂漠を通り、村に戻ると入口のところでシオン達と村長さんが待っていた。
「お、戻ってきたか。」
「おつかれ〜!」
気楽そうな2人に対し、村長さんは深く頭を下げて言う。
「盗賊団を退治してくれたようだ………本当に感謝している。」
「………あれ?」
そんな3人の背後、村の様子はさっきまでと変わっていなくて、人気がない。そういえば、取られたものとかさらわれた人とかってどこに………
「……でもまだ解決じゃないのよね?」
ソフィさんもそれに気がついたようで、村長に問いかけた。
「ああ……縛り上げた盗賊団を問いつめたところ、奪ったものは別の場所……ここから少し東の洞窟に集めてあるらしい。しかし……」
続けて、シオンが言う。
「その周辺には今、厄介なモンスター『サンドシャーク』が住み着いてやがるんだ。盗賊団達も近づけないらしい……だから」
「私達で倒しちゃおう!ね?」
…………そういえば。
「ねえねえ、ルルちゃんとアルト君は?」
盗賊団退治には二人で来て、もう2人はむらで待機…とかかと思ったけどそうじゃないのかな?
「ああ、あの二人は今別のところにいる。ちょっとわけがあってな。」
「…?」
「実はね〜私の魔法が暴発しちゃって、意図しないワープ反応が出たの。で、わたしとシオンがそれに巻き込まれて西の方にワープしちゃった……ってこと。だって、そうでも無い限りこの間まで東にいたんだからこっちに来れるわけ……あれ?そういえばなんでルナも西にいるの?」
「うっ……そ、それは………」
まずい……適当な言い訳が思いつかない………。
「まあ今はいいじゃない。それより、早く洞窟に向かいましょう。」
「そうだな。それじゃあ村長さん、行ってきます。」
ソフィさんのおかげで、とりあえず何とかなった。ところで、今からサンドシャークの討伐に行くわけだけど……これこそわたし行く意味無くない?待ってた方がいい…なんて言う前に、みんな出発してしまった。……着いてくしかないよね………。
――――――――――――――――
「ルナちゃんはサンドシャークって知ってるの?」
討伐に向かう途中、砂漠を歩きながらソフィさんにきかれた。
「砂漠を泳ぐサメ………」
「………そ、そうね。」
ぶっちゃけ、知らない。
「サンドシャーク……まあ砂漠を及びサメ、間違ってはいないが……砂漠を泳ぐだけのサメじゃない。体は普通のサメ……ホホジロザメなんかより一回り大きく、あっちが海の『白い死神』ならサンドシャークは砂漠の『黒い殺し屋』なんて呼ぶ人もいる。」
「近くにいる動物の『音』を感知して、襲ってくるんだよ。その速さは砂漠に適応した馬が引く馬車でも追いつかれちゃう。それに全身の黒い皮膚はやたらと固くて、普通の刃じゃ通らない……とか?」
「それに加えて、鋭い牙は鎧も貫いて、一撃で相手を殺すなんて言われてるわね。でも牙だけじゃなくて、しっぽを激しく揺さぶって殴ってきたり、体当たりしてきたり……とにかく凶暴なのよ。団体の中でも襲われて大怪我をした人がいるわ。」
「へ、へぇ……」
そんな化け物じみたモンスター (二重表現)と戦うの…?
「恐らく、サメらしく背びれを出して泳ぎ回ってるはずだ。姿が見えたらお前は待ってろ。絶対役に立たないだろうし……」
「うー……」
言い返す言葉もない。せめて邪魔だけはしないようにってこと………。
「へーきへーき!私達ですぐ倒すから!ソフィもそれでいいよね?」
「いいわよ。あなた達なら信頼してもいいわ。」
メルリアって人との距離詰めるのうまいなぁ………
「連携も何も無いけど、一応……俺はとりあえずあいつが姿を見せたらわざと音を立てて引きつける……砂から姿を現したところでメルリアは爆発させてくれ。そのあと……」
「私とシオン君でサンドシャークの体の中でも柔らかい箇所……口の周りかお腹を斬る……かしら?」
「……さすが戦いになれてるって感じか。それで行こうと思う。」
シオン達とソフィさんの連携………ちょっと楽しみ………。
そして暑い中をしばらく歩くと、それが姿を見せた。
「いたぞ、あれだ。」
シオンが剣を抜いて示した方向には、ゆっくりと動き回る背びれ。まだこっちには気がついていなくて、その場を小さく回っている。そしてその奥には岩の洞窟。
「じゃあルナちゃん、ここで待っててね。」
「うん、頑張って…!」
それぞれの武器を持ってサンドシャークに向かっていく3人の背中を見送る。シオン達の戦いを見るのは久しぶりだけど、もっと強くなってるのかな………?