サンサンと輝く
「ぁぁ……あつい……」
「そうね……わかってはいたけれど暑いわね……」
まだそんなに長い時間歩いてはいないけど、この暑さは体力を奪われるよ……街の方はこんなにぶっ飛んだ暑さじゃなかったのに…どうして……
「あっちを見て……この暑さはアレのせいと言うのが一般的な説よ……」
ソフィさんは遠くに見えるヘブンズ・マウンテンを指さす。あれが何……?
「山と暑さになんの関係が………」
「実はね……ヘブンズ・マウンテンのあの辺だけは特殊な鉱石が露出しているのよ………『鏡玉石』だったかしら……自然の中で作られるものでありながら、綺麗な鏡みたいなのよ……」
「だからなに………」
何とか歩みは止めず、少しづつ先に進みながらききかえす。もう喋るのもめんどくさくなる。
「そこに当たった陽の光がこっちに反射するらしいわ……」
「えっと………つまり………」
この位置から見るとヘブンズマウンテンは……えっと…西方向?違う、だいたい東だ。そこに陽の光が当たるってことは……あれ?でも今午前中で太陽は東寄りにあって……ん??なんかおかしい?あれ????
「なんか理屈的におかしいような…………ソフィさん………」
「……え?そうかしら……ちょっと待ってね………。えっと……きっと距離があるから時間差があるんじゃないかしら……それとも、熱がこもりやすい地域とか………私も知らないわよそんなこと………」
「なにそれ……」
あーもう、暑くてなんかイライラしてくる……かと言って休むのも簡単じゃない。水とかもだいぶ余裕があるし、結局のところ体の疲れより、この暑さが全てなわけで……休憩なんてしたら、この暑さに晒される時間が伸びるだけ…………なら、進むしかない……。
―――――――――――――――
「ルナちゃん…!見えてきたわ!とりあえずの目的地の街……村ね。」
「あれね………よかった………」
確かに、街って感じではない。建物も砂漠の上に作るのは大変だからなのか、テントとか簡易的なものが多い。なんでもいいけど暑さを凌ぎたい………ていうか……
「草木あるし池ある……砂漠なのに………」
「オアシスってやつよ……理由は知らないけどこういう場所もあるのよ……だから人が住むの………」
「あー!!やっとついたー!!疲れた!!」
村について、とりあえず村長?に声をかけたら空いてる家を貸してくれた。中は何故か涼しい!
「砂漠は理屈では知ってたけど、実際に歩くとこんなに過酷だとはね………はぁ……でも、これもいい勉強よ。」
「いやー、でも涼しいねぇ。」
空き家と言ってたけど、割と……かなり綺麗。まるでついこの間まで誰か生活していたかのよう。
「そうね……北の地域で作られている工業品のおかげね……部屋の天井に吊るしてあるあれよ。」
ソフィさんは床に座って水を飲みながら上をゆびさす。
そこを見てみると、変な形のものが着いていた。四角形で、各辺に細い穴が着いていて、そこから風が出ている。上に伸びている管は天井を尽きぬけて外に伸びている。
「なにあれ?」
「外に伸びている管で外気を取り込んで、箱の中で冷気に変換して排出してるのよ。」
「へえ〜」
「……興味無いわね。」
「うん。」
……………………………
「ねえ」
「どうかしたの?」
この村に着いてからずっと気になっていたこと……。
「人、少なくない?こんなもんなの?」
村の中では村長さんいがいには2人くらいしか見かけなかったし、わたし達以外に立ち寄ってる人もいなかった。それに、何故かわたし達をみて少し困っていた。
「いや……私も詳しく知らないけど、家の数や村の広さからみてこんなに少ないわけないわ。……それに、この家。もしかしたら………」
ソフィさんはなにかを思いついたようで、外に出ていこうと立ち上がった。
「どこ行くの?わたしも行くよ。」
「村長さんの所よ。」
「はーい…あっつ!!」
ソフィさんがドアを開けた瞬間、熱気が体を包む。
「やる気をそがれる暑さね………」
――――――――――――――
「村長さん、ちょっといいかしら?」
村長さんの家に行くと、まずは直ぐに中に入れてくれた。暑いもんね。そして、家の中で改めてソフィさんがきく。
「この村……なにかトラブルでも起きてるのかしら?」
それに対して村長さんは
「なるほど……なぜそう思う?」
と答えた。……因みに、『村長』なんて言うとおじいちゃんおばあちゃんのイメージあるけど、全然そんなことなくて若い、日焼けしている男の人。薄い服を着ているから、その上からでも腕とかの筋肉が見えるくらいには『そういう』感じの人。少し顔怖いし。
「人の少なさと不自然な空き家……それから、私達に対する反応……かしら。」
「わたしもそう思う。なんか、わたし達が来ることに大して驚いてた?」
「そうか……まあ、本当なら旅の人なんかに話すことじゃあ無いが……そっちの姉ちゃんは世界統括団体だろ?なら話してもいい……というか、もしできるのなら……手を貸してほしい。」
村長さんは頭を下げながら言う。
「そうね、困り事なら協力するわ。ここを拠点に調査活動をしようと考えていたし、このままじゃあ私としても困るもの。ね、ルナちゃん。」
「う、うん………」
人助けはいいけど……南にたどり着くの、遠のいたなぁ………。
「それで、一体何が………」
「実は……この辺りの地下には岩窟があって、そこに入れるルートもある……どうやらそこに盗賊団が目をつけたらしく、いつの頃からか複数で滞在しててここに目をつけてたらしい……。それで数日前に攻めてきて、金目の物や弱い村人を奪っていった……。そして言った、『次にオレ達が来るまでにもっと多くの物を用意しておけ』と。」
「それが守れないなら……ってやつだよね………」
「そうだ。この村でも腕が立つ奴に討伐に向かわせたが……帰ってきてない。もうできることは………残っていない。……どうか力を貸してほしい。盗賊団がいるせいで、東や南からの行商人も減ってしまった……多くはこの村を経由していたわけだ……。」
村長さんはまた、深く頭を下げる。
「な、なんてこと……そんなことが………」
口に手を当てて小さくつぶやくソフィさん……
「ソフィさん……」
「そんな………魔王あるこの時代に、未だにそんな力にものを言わせる前時代的な頭の悪い手法をとる盗賊団がいるなんて……」
「ん?」
「どうせ世界が闇に包まれるから何でもしてやろう……そんなところかしら……ああ、なんて頭の悪い馬鹿な人達……かわいそう。」
「あのー、ソフィさん?」
「……ああ、ごめんなさい。ちょっと驚いちゃって……。もう今の時代、そんな人たちいないものだと思ってたわ。でも、それなら安心して。村長さん……私達が何とかしてきます。場所だけ教えてくれれば、あとは平気よ。」
あ、わたしも行くのね。
「助かる……それなら、場所は………」
ソフィさんと村長さんは何か話し始めた。まあこれはわたしはきかなくていいでしょ。そっか、空いてた家、誰か住んでたんだね。謎の生活感はそれか。
……それにしても、盗賊団って実在するんだ。絵本とかではよく悪者の象徴って感じで描かれてて、主人公が捕まえていた。ってことは、わたしとソフィさんがその主人公になるってことだね。…………まあわたしは多分何もしないけどさ。
「……じゃ、ルナちゃん。これに着替えて?」
「ほえ?」
急に服を渡された。なぁにこれ?
「この砂漠を歩くのにその服装はよくない。姉ちゃんの方は世界統括団体の制服ってことでそのままだが、嬢ちゃんは着替えた方がいいだろうよ。その服なら多少はマシなはずだ。」
「なるほど!村長さん優しい!……でもなんでわたしにちょうどいいサイズの服が?」
「……娘のだ。気にしなくていい。」
「……ごめんなさい。」
ちょっとさすがに無神経だったかな。
「じゃあ一旦さっきの家に行きましょうか。」
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「みてみてソフィさん!どう?」
借りた服を着て、ソフィさんに見てもらう。
「いいわよ……素敵よ……とってもかわいいわ………最高……触りたいわ。」
「……それはちょっと怖い。」
普段の服と比べると、肌が出ている部分が多い。肌出てると太陽の光で火傷する?みたいな話もどっかで聞いたことあるような気がしたけど、別にそんなことないみたい。上半身はおへそ周りは完全に出てるし、胸の周りも少し少なめでちょっと……まあ、うんって感じ。変な不安感はまったくないけどね。下半身は、スカートだけど、短めのスパッツ履いたよ。危ないし。でも素材のおかげか、多少涼しく感じる。靴は砂地を歩きやすい変な靴。
「いつでも行けるよ!」
「なら、早速出発よ。夜になるまでには終わらせたいわね。」
「瞬殺、かっこいい!」
…………いやいや、人殺しはダメだけど……ダメだよね?いくら悪人相手とはいえ、その場で殺すのは……ね?ソフィさんに確認したかったけど、もう既に外に出ていた………のと、何故か聞くのが少し怖い。そんなことは無いと思いたいけど、もし明らかな価値観の相違とか見えちゃったら困るし………ね。