超えてみせるから
「ふぅ……」
トイレの中で、また少し考える。さっきの人達……やっぱり砂漠に行くのかな?もしかしたら、本当に砂漠で何が起こってて、それを何とかしに来てくれたとか?ならいいけど、どうかな……
「……やっぱりすこしジュース飲みすぎたかな……次から気をつけよっと……」
「さてさて……そろそろ寝よっかな……」
トイレから戻ると、急に眠くなってきた。明日寝坊しても良くないし、もう寝ちゃおう。どうせなにか考えても答えなんて出てこないし。
「それじゃおやすみ。」
―――――――――――――――
「………?」
気がつくと、真っ暗な空間。……これは夢の中だね。わたしにはわかる。たまにあるよね〜こういうやたらと意識ハッキリしてて、夢を夢と認識できる時。
「だとしてもハッキリしすぎ………」
そういえば、初めてわたし……反転世界のルナと出会ったのも夢みたいな変な空間だった。じゃあもしかして、今回も誰かが何かしらの力でわたしに干渉を………
「正解よ〜久しぶりねぇ。」
「あ、イリス………」
いつの間にか目の前には、この前見た時とおなじ青っぽいドレスをきたイリスがいた。
「ママって呼んでもいいかしら?」
「うわ、まだそれ覚えてたんだ…きもちわるいから絶対だめだよ。」
イリスは少し笑い、のんびりとした喋り方で言う。
「ノルンちゃんと、会ったのよねぇ?」
「…うん。」
「そう。それなら、あの子がどういう神様がわかったかしらぁ?」
「何となく。イリスの双子の妹………今は魔王がいて好き勝手出来ないけど、魔王がいなくなったら世界を壊す………」
「まあ少し違う部分もあるけど……ほぼ正解かしら、だからわたしはそれを止めるためにユイちゃんにノートを渡してお願いをしたの。いまユイちゃんは世界のどこかでノルンちゃんをおってるみたい。だからそっちはとりあえず任せるつもり。」
「……それで、わたしになんの用?態々夢にまで干渉してくるなんて、よっぽどなにか………」
「…………そうよ」
イリスは意味深に間を置き、2歩わたしに近づき珍しく力強く喋る。
「例え人の願いで作られた存在だとしても、わたしは女神。多少の人間離れした力は持っている。そんなわたしから………忠告みたいなものかしら…………どんな運命がルナちゃんをまっていても、最後まで立ち向かって欲しいの。約束よ。」
「は、はぁ?」
「未来視……そんな正確なものじゃないけど、きっとこの先ルナちゃんには……ルナちゃんだけじゃなくて、その周りの人達も、きっとたくさん辛いことがあるの。でも、絶対に諦めないで欲しい……それだけ。」
「えーっと………イリスに言われるまでもなくそのつもりなんだけど………」
「なら大丈夫ね。それじゃ、またね〜」
そんな一方的に!?という前に、すぐに意識が遠のいた。
―――――――――――――――――――
「あさっ!!いい天気!!」
目を覚まして、窓を開く。日はまだまだ低い位置で、どう考えてもまだ早い時間。街を歩いている人もまだほとんど居ない。
そうだ、ソフィさん起こしにいこっかな。
「確か隣の部屋……」
わたしの部屋は1番奥だったから、隣といえば片方しかない。間違えようがないから安心。
「ソフィさーん!おはよー!」
扉越しに声をかける。開けようとしてドアに手をかけると、
「ルナちゃん?少し待っててね……今は開けちゃダメよ……。」
と言われてしまった。
「え、そっか………」
「ごめんなさいね、色々あるのよ……大人って。」
「あ、そう………」
………エグい寝癖とかかな?
「そこで待っててもらうのもなんだし、先に下降りててくれるかしら?朝ごはん食べましょ。」
「うん、わかった!待ってるね。」
朝ごはん、なんだろ?
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「おはよ……あら?」
下で待っていると、ソフィさんが降りてきた。わたしの前に座ると、何か言いたげにわたしを見てくる。
「な……なに?」
「髪……今日は縛ってないのね。」
「ああうん。たまにはいいかなーって。」
夢の中でふとあっちのわたしのことを思い出して、同じ髪型にしてみた。とは言っても、ツインテールやめてそのまま下ろしてるだけだけどね。
「ふふ、そっちも似合ってるわね。ルナちゃんはかわいいから色んな髪型とか服も似合いそうね。……今の服装はちょっと変わってるけど。」
そんな事言われても……これはいつもの服装だし。そういうソフィさんは昨日と同じ格好……まあ、仕事だしね。
「それより、お腹すいたよ。朝ごはんは……?」
「持ってきてあげるわ、ちょっとまっててね。」
ソフィさんが立ち上がり、カウンターの方に歩いていく。その拍子に、すごいいい匂いが鼻に入ってくる。……ソフィさんの髪から?たしかに、髪すごい綺麗だし、丁寧にケアしてそう。
「はい、どうぞ。」
ソフィさんが持ってきてくれたのはサンドイッチ。中身は…………これは
「……肉?」
け、結構大きいような………
「そうよ、西の地域で養殖されている牛のお肉よ。」
「朝から厚めの牛肉サンドイッチは重くないですか???」
そんなわたしの意見は無視するかのように、ソフィさんは座ってサンドイッチを食べ始めている。
「んー…でも今日は砂漠に行くのよ。途中で疲れちゃったりお腹すいちゃうのもあんまり良くないわ。出来れば食べた方がいいけど……」
「なるほど……それなら全然食べるよ!普通に好きだし、余裕!………あそうだ、ねえソフィさん。」
「なにかしら?」
「昨日、このロビーで世界統括団体の人たちがなんか話してたよ。ソフィさんの知り合いかなって思ったけど、どうかな。」
「昨日ここで……?見間違いじゃない?」
「えー?そんなことないよ……制服着てたし………」
「そう………ならそうね……なんの用があったのかしら……人でもそんなに多くはないってことでここの調査はわたし1人に任されたのだけど………なんの話ししてたかわかる?」
「ごめん、わかんなかった。でも、地図見てたからどっか行く予定でも立ててたのかな?」
……うわ、ソフィさんもう食べ終わってる。いつの間に……
「……ちょっとわからないわね。まあでも、別になにか困ることがあるわけじゃないし、特に気にすることでも無いわね。今度本部に戻る時にでもきいてみるわね。………じゃ、私は先に戻ってるわね。準備が出来たら部屋に来て。」
「んぁーい」
「……口に入れすぎよ。」
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朝ごはんも食べ終わり、部屋で準備も終わった。まあ準備って言っても特にすることないけど。忘れ物がないかだけ確認して、ソフィさんを呼んで外に行く。
「いい天気だね。」
雲ひとつない快晴。
「ちょっと晴れすぎって感じよね。」
………そうだった、砂漠に行くんだもんね。
街の中をしばらく歩くと、終端になり、砂漠が目の前に拡がっている場所に出た。
「ここから?」
「そうよ、砂塵の塔の地上に出てる部分は小さいから、徒歩で探しながら行くわ。……まずは砂漠の途中にある村を目指しましょうか。」
「え、砂漠に村があるの?」
「そうよ。それじゃ、私について来て。いい?絶対離れちゃダメよ……素人が砂漠で1人で迷子なんて、間違いなく死んじゃうわ。」
「わ、わかった………」
ソフィさんの目、本気だ。脅しとか冗談で言ってない。本気で忠告してくれてる……気をつけよう。
よし、それじゃあ出発だよ!