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世界はもう

「………さすがに、全く知らないなんてことはないわよね?」


 徐々に街に近づきながら、ソフィさんが確認……念を押すかのようにきいてきた。


「うーん……なんか世界には沢山の国があって、お城にいる偉い人たちが統治してる……で、それを更に世界統括団体がまとめてる……くらいの認識で生きてる。」


「そう…………」


 うーん、ガッカリされた気がする。


「でも、だって……実際そんなこと気にしないでも生きてこられたし、旅に出てからも直接そういうことと関わることもなかったし、知らなくてもしょうがなくない?」


 諦めて開き直ってみる。


「………確かに、そうかもしれないわね。それならちょうどいいわ、街に着くまでのあと少しの短い時間だけでも、しっかり理解できるように教えてあげるわ。」


「お手柔らかに………」


 頭いいんだろうから、わかりやすく、なんて言いながら難しい言葉使ってきたりしそう…………、それか逆に、頭いいからこそわかりやすく教えてくれるかな?


「昔……まだ世界統括団体がなかった頃は世界中に大小様々な国があって、たくさんの国同士の争い……戦争があったのよ。でも、それじゃよくないわよね?」


「うん………」


「だからこそ世界統括団体が出来たのよ。」


 ああ、それはアリスからきいたっけな………


「……まあ、そこの話は国そのものとは関係ないから置いておいて………国は沢山あって、その数は………まあ、とにかくたくさん、沢山あるのよ。ね?」


 微妙に目を逸らしながらソフィさんが言う。


「う、うん。」


 ……ソフィさんも把握してない?


「それで、国にはそれぞれ領地があって……例えば、今いるこの場所は西では一番の大国『ルーベル王国』という国の領地なの。国から他の国の領地に行くには、昔は手形をもって関所を通る……なんて言う面倒な手順だったけど、今は好き勝手に超えられるわ。世界統括団体が長い時間をかけて世界中の国に取り合ってくれたかららしいわ。それでも形式的にだけ関所を残しているところもあるみたいだけれど。」


「なるほどなぁ………」


 じゃあわたしの村もどっかの国に属してたんだ。


「ルナちゃんの言った通り、国ごとに大きい、小さいはあるけれどお城を持っていて、そこにいる人達が国の決まり事を考えたり、領地の管理をしているのよ。根本的な世界の決まり事……人を殺してはいけませんとか、ものを買う時はこのお金を使いましょう、とかは世界統括団体が決めているけれど、それ以外の細かい決め事は国ごとに決めていいことになっているの。国によって、王政、共和制、様々だけれど基本的なルールは同じよ。」


「王政?共和制?」


「あら……それも知らないのね………。」


 視線が痛い!


「ごめん………」


「いいのよ、別に。でも……もう着いちゃうわね。続きはまた今度ね。」


 確かに、人もかなり増えてきた。


「はーい」


――――――――――――――


 着いた街は『ディルベル』って街。確かに、街の向こうの方には砂漠らしきものが広がっている。砂漠、なんて聞くと果てしなく拡がっていて入ったら帰ってこられない……みたいに勝手に思ってたけど、そうでも無いみたいで砂漠から街に向かってくる行商ってぽい人もいる。ソフィさんが言うには、ここは色んな方向から道が繋がっているから、人が集まりやすいんだって。お城の近くの街ってわけじゃないのに、城下町より発展してるなんてなんかおもしろい。


「じゃ、ここで一旦別れましょうか。」


 街に入り、噴水のある広場にきてソフィさんが言う。どうでもいいけど、噴水なんてあるってことは本当に砂漠地帯よりこっち側は水も沢山あるんだろうね。


「え、別行動?」


 てっきり一緒だと思ってたからびっくりして聞き返してしまった。


「そうよ?買い物するなら別々に、それぞれ必要だと思うもの買う方がいいと思うし………ルナちゃんのそのポーチと、その中に入ってた宝石なら色んなものも買えそうだし、すこしは関係の無いもの……自分の好きな物も買ってみてらどうかしら?たまにはいいんじゃない?」


 ………好きな物か。そういえば前、へんなナイフ騙されて買わされそうになったことあったなぁ………今度はそうならないように、勉強も兼ねて色々見てみようかな?


「うん、探してみるね。」


「きっとほかの場所じゃ見たこともないようなものも沢山あるはずよ。それじゃあ………日が落ちた頃、またここでね。」


「はーい」


 ソフィさんは手を振って言ってしまった。よし、わたしも行こう!


――――――――――――


 適当に街を歩いていると、何となくお店が多そうな感じの通りに出た。道の左右に色んな人が適当に露店を開いてる感じ。売ってるものも色々で、どこにでもあるようなものから、見たことも無くて何だかわからないものもある。そういえば、いつだったか聞いた話だと、西の地域は魔法が盛んだって言ってた気がする。なるほど、確かにそう考えるとそんな感じのものも多いかも。


「……そうだ、宝石、買い取ってもらおうかな。」


 まずはお金がないと始まらない。ちょうど何でも買取ってくれるようなお店が目に入ったから、店の人に声をかけてみる。


「すいませーん」


「ん、なんだい?」


 店をやってた人は髭を生やして、頭にターバン巻いてて……なんか、絵本にでも出てきそうな、絵に書いたような『商人』って感じのおじさんで、笑いそうになる。そんな人が、道の脇に布を広げて座って、店をやっている。


「これ、買い取ってもらっていいですか?」


 全部売る訳にも行かないから、サファイアとオパールを渡す。


「あー……こっちの宝石はいいが……こっちの青いのはダメだな。買い取ってもいいが5ルピアくらいの価値しかないから、持ってた方がいいだろうよ。」


 あおいの、サファイアは買い取れるけど、オパールはダメ?どうして?


「………オパールも価値のあるものだと思ってたけど…」


 それに、元々これをレヴィがどうやって手に入れたかは知らないけど、岩に埋もれた原石なんかじゃなくて、綺麗で大きいもの。これなら絶対価値あると思うけど………。


「お嬢ちゃん、旅人かい?」


「え、まあ、はい」


「どこから来たかはまあ知らないが、教えておこうか。ものの価値って言うのは相対的なものだ。」


「そーたいてき?」


 わたしの反応を見て、おじさんは『やれやれ』って感じの反応をして、ふたつの宝石を手に持って言う。


「こっちの青いヤツ……サファイアは西の地域じゃあ全く取れない上に、装飾品としてかなりの人気だ。それに対してこっちの石ころ……オパールは、残念ながらこの近くの岩山を叩いて岩を砕けばボロボロ出てくる。綺麗に取り出すのに時間がかかるとはいえ、流通量はかなりある。わかるだろ?そういう事だ。」


「ふんふんなるほど、わかった」


「ほんとうかい?」


「沢山あるからやすいってことですよね。わかりますわかります。サファイアは遠くでしか取れないから、運ぶにしてもなんにしても、時間もお金もかかるから………ですね、なるほど。じゃあオパールは売るの辞めます………」


 きっともっと高く売れる地域もあるでしょ!それまで我慢!


「じゃ、サファイアの分の代金だけ渡しておこう。」


「はーい」


 どこでもなんでも売ればお金になると思ったけど、そうでも無いんだね。勉強になるなぁ。



「うーん………??」


 それからさらに進んで、色んなものを見たけど………イマイチ。


 魔法で作った防具だとか、錬金術の力がやどる武器とか、なんか凄そうなものは沢山あったけど、わたしの心に響かない。武器とか防具とか、別にって感じ。だいたい、重い防具なんてきてたら動けなくなって逆効果だよ。ルルちゃんが着てたみたいな薄くて丈夫なやつならいいかもしれないけど、意外とああいうものって見かけない。作るのが大変なのかな?


「あー……もう暗くなっちゃうよ……」


 しょうがないから、適当に保存のききそうな食べ物だけ買って、ソフィさんと約束した場所に向かう。無理してなにか買うこともないし、また来る機会もあるでしょ。次はまたその時にでも……ね。

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