切り札へと変わるカード
ツインエースを放置し、わたし達は扉の向こうのフロアへと足を踏み入れた。少し暗いけど、視界が悪いって程じゃない。
「なんか、綺麗な部屋だね」
「せやなー、さっきの部屋と違って狭いけど、テーブルが置いてあったり、椅子があったり……またここでも誰かとなんかで対決されられるんか?」
「そうだと思うよ、ほら……あのテーブルの周りに置かれたいす……あれは完全にあたし達のためだと思うよ。」
確かに、部屋の真ん中には大きめの正方形のテーブルがある。そして、そのまわりにはそれぞれ一辺に対してひとつ、椅子が置いてある……合計三辺、つまり3つ。そして、こちらから見て一番奥側の辺には大きい水槽………ああ、ってことは今回の相手は………。
「…セーラ。」
わたしが呟くと、部屋が少し明るくなり、水槽の水がぶくぶくと音を立て始めた。そして
「……は、はい。正解です……」
ビックリするくらいオドオドしてる、弱々しい態度のセーラが水槽から出てきた。上半身だけ水から出して、こっちを見ている。元の世界と同じで、水の中なのに普通の服を来ている。
水槽が透明なおかげで、下半身が魚ってのも見えるから、マリーも直ぐに理解したようで口を開く。
「魚人……こいつが独裁菅の仲間の凄い魚人なんか?全然そうは見えへんけど……」
まぁたしかに。元の世界であんなふうだったからこっちでこうなるのは当たり前だけど、いざそれを見るとすごい違和感。絶対弱いでしょコレ。
「あ、あの……そんなにみんなで見つめて……ボクなにかしましたか……?」
「うわ、ボクっ娘じゃん。うわうわ…」
アリス……ツインエースと違って、服装とか髪型とか外見が完全にセーラのままだからなんか気持ち悪い。あっちのセーラになれてるからもはや怖く感じるレベル。
「なんでもいいけど、あなたもあたし達となにかゲームで戦うの?」
「はい……そういうルールになっているので……皆さん、テーブルの方へ来てください…あ、罠とかないので平気ですよ………」
あってもなくても、近くに行かなきゃ始まらないけどね………
とりあえず、わたし達3人は適当に椅子に座る。場所に対する意味はないらしいから、わたしがセーラの正面で、ノルンとマリーが向かい合う形に座ってみる。
セーラに関しては、水槽に入ったままでもテーブルに手が届くような設計になってるのは流石って感じ。
「で、何するんや?ウチら全員がルールちゃんと分かるゲームじゃないとアカンで?あと、ずるもなしやで。」
「ゲームは……こ、これです……」
セーラはどこからか何かが入ったケースを取り出す。そして、それを開きテーブルに中身をだす。出てきたのは………
「カード……」
「ハートにスペードに……ほーん、なるほどな。」
「まあ、テーブル囲んでやるゲームならこれが無難だよね。」
そう、トランプ。たとえ反転してても、これは存在してるんだね。枚数も色も数字も全部同じだと助かるけど、どうだろ。
「……で、なんのゲーム?」
トランプって言っても、いくつもあるから、結局これを使って何をやるかが重要なわけで。
「ウチは七並べとか好きやなぁ。」
「あたしはババ抜きとか好きだよ!人間ども…じゃなくて、人の表情を見るのも楽しいし!」
今一瞬なんかでなかった???
「わたしはまあなんでもいいかな……」
すると、セーラが申し訳なさそうに言う。
「あ……あの…大富豪……です。ボクがいちばん得意なゲームなのでこれでお願いします………ダメですか?」
「お、ええやん。言っとくけどウチ強いで?」
マリーは乗り気でテーブルに手をついて言う。それに続いて、ノルンも大きい声を出す。
「はいはーい!あたしも自信あるよ!あとどうでもいいけどあたし的には『大貧民』呼びがしっくりくる。」
「わたしはどうかな………ていうか、3対1だけど、勝敗どうなるの?」
「4回やって、そちらの3人、誰か一人でも、1回でも大富豪で上がれれば勝ちでいいです………。」
「つ、強気すぎない!?」
それほどまでに絶対的な自信があるのかな!?それとも、本当に…逆に、弱気すぎるだけ?
「そちらが勝ったらこの先の部屋……ルナのいる部屋へ通して上げます……けど、ボクが勝ったら……あなた達3人にはボクの実験に付き合ってもらいます……」
…………つまり、負けたら殺されると同意義………だよね。
そんなことには全く臆する様子も見せず、マリーが元気よく喋り出す。
「あ、せや。始める前にルール確認しとこ?ウチ的には縛りとか革命とかの基本的なルールの他に、『エンペラー』とか『天変地異』あとは……『宗教革命』とかやな……。まあ、やってたのはもう結構昔やけどな。最近はみんなウチとなんて絶対遊んでくれへんし……」
「え、なにそのルール全然しらない!あたしは『シークエンス』、『等差数列』……『モノポリー』とかがいい!」
「待って待って。わたしが村の子達と遊んでた時は……『クイーンボンバー』とか『砂嵐』とかあとは……」
そういえばなんでトランプの12ってクイーンって言うんだろ。……今目の前にあるトランプの12のカードは、わたしのよく知るトランプと違って、『Q』という知らない文字が書いてあるけど関係あるのかな。ってそれより……
「あの……み、みなさん……」
セーラが声を出す
「なんや?」
「ん?」
「なに?」
「…………これ、永遠に始まらなくないですか……」
「……ウチもそれおもたわ。」
「だよね〜」
「地域差がエグすぎて……」
だいたい、わたし達3人の出身地がそれぞれ、反転世界、田舎の村、虚無……とかいう超変則的すぎるからでしょ。ていうか、なんでノルンはそんなルール知ってるの………イリスと遊んでたのかな?
さて、どうしよ?