まさに最高演出
……そして、わたしの放ったダーツは見事に、トリプルリングに…
「よしっいけ!」
………刺さらなかった。
「んな!?おかしいやろ!」
「見てたよ……今のは。」
途端に、2人が大声で文句を言う。しかし、その声は観客の耳障りな歓声にほぼかき消される。
「あら残念。勝負はわたくしの勝ちのようね。」
ツインエースは髪の毛を弄りながら、興味無さそうに言う。
「待って待って!いまわたし見たからね!刺さる瞬間、ダーツボードのついてる板、すこし下がったでしょ!」
「ウチも見てたで!あれはどーみてもずるいやん!んなせこい手使ってまで勝ちたいんか!?」
「あたしも見たよ、確かにしたに下がってた!」
しかし、ツインエースは動じずに答える。
「そう。なら、証拠はありまして?確たる証拠がない以上、わたくしから見ればあなたがた3人の言い分は、ルナちゃんが外したのを誤魔化すために難癖をつけているようにしな見えませんわ」
「なっ……!?」
ズルすぎるでしょ!?
「わたくしは勝てる勝負しか挑まない……つまりそれは、負けない自信がある…いえ、違います。絶対に勝つ方法があるただそれだけでしてよ。」
「ただズルいことしてるだけなのに何偉そうに語ってんねん!不正やで不正!認めんわこんなん!ルナとノルンももっと言ったれや!」
マリーはツインエースに掴みかかりそうなくらいの勢いでまくしたてている。それを見ている観客は、ブーイングをする訳でもなく、静かに見守っている。何この空気………
「これであたし達の負けって言うつもり?」
「ええ、もちろんですわ。何か問題がありまして?」
「あるでしょ!絶対絶対10000000%ズルしてたよ!」
「ですから、証拠もなしに何度も言われても、話になりませんわ。」
……………そんなこと言われたら、最初からこっちのまけは決まってたじゃん。なにそれ、ずるっていうか、つまんない。じゃあ最初からそう言って殺しにかかってくればいいのに。自分が絶対勝てるゲームをわざわざ仕掛けて、作り出された抜け殻の図形人間にそれを見せつけて優越感にでも浸ってるの?なんか、かわいそう。
「ふっざけんなや!ウチは認めんわ!」
「お好きにどうぞ。いくら喚こうがなんと言おうが、わたくしの勝ちに代わりはなくってよ。言いたいことがあるならご自由に。」
ツインエースはマリーを煽るように言い放つ。
「言われなくても言うわアホ!卑怯者!バカ!マヌケ!ずる女!ボケ!███!!█████!!!」
うわうわうわ。それは言い過ぎだよ。
「………はぁ、アリスは変わってないね。あなたはそれもあたしのせいだって、いまだにそういつもり?」
不意にノルンが意味深なことを言い出す。そして、それを聞いたツインエースは苛立ちを見せながら言う。
「ノルン……あなたみたいな存在に一体わたくしの何がわかるのでしょう?そうやって上から人を見下して、わたくしに対してもあのようなことを……!!」
「うわ、なんやなんや?喧嘩か?」
この2人、一体何が………
「ルナっち、マリリン。実はさ、アリス……ツインエースがこんなふうに歪んじゃったの、あたしのせいなんだよね。詳しくはまた今度教えるけど、なんていうか………とにかく、アリスの全てを否定して、ぶっ壊したらこんなふうになっちゃった。」
「え?」
「何言ってるんや?」
「異常なまでに勝ちにこだわるのも、言動が支離滅裂で理解できないのも、非常識的な承認されたいって感情も、そのせいかな?だから、ここはあたしが責任取るの!ふたりはそこで見てて!」
そう言って、ノルンはツインエースに近づく。そして、武器を振るうわけでも、魔法を使うわけでもなく、耳元でなにか囁いた。
「………ね。」
上手く聞き取れなかったけど、短い言葉だったと思う。そして、その言葉を聞いたであろうツインエースは力なく、その場に膝をつき座りこむ。
「え、なに?」
「な、なんや……何したんや?」
「ふふふ」
ノルンは楽しそうに笑いながらこっちに戻ってくる。
「大したことじゃないよ。ちょっとした魔法の言葉。……とてもじゃないけど、人に説明するようなことじゃない。ほら、気にしないで先に進も。見た感じ、観客達はあたし達のことを邪魔するきなさそうだし。」
「え、あ、うん……」
静まり返る舞台の上で、わたしとマリーはノルンに背中を押され、扉の方に向かって歩く。
「なあルナ……ノルン何したと思う?」
「全然わかんない……」
「うーんそうだねぇ……いつか、もっとずっと先、あたしとルナっち達が対立した時わかるかもね?」
「……………そう、なんだ。」
わかんないけど、とても良くないことな気がする。