パーフェクトゲーム
ツインエースが指を鳴らすと、舞台の上から何かが降りてきた。板になにかが取り付けれれていて、その板が細い鉄柱にくっついていて、その鉄柱が少しずつ下に降りてくる。
「あー、これね。」
「これならウチも知ってるで。ルナも知ってるやろ?」
「うん。ポーカーとかできるお店に設置してあったよ。」
それはダーツ。板に丸いボードが取り付けられていて、数字が書いてある。当てたところによって得点になって、色んなルールで遊べるゲーム。『ゲーム』が好きなツインエースらしい。
「で、これで何するの?」
「それはもちろん、わたくしとあなたがたの対決でしてよ。本来の複雑なルールは一切無しで、ルールはシンプルに……お互いに3投して得点がわたくし以上になればそちらの勝ちですわ。わたくしは1人で3回、そちらは1人1回ずつ……いかがでしょう?」
ツインエースはダーツの矢を3つ持って、こちらに向けてくる。それに合わせて、観客もざわつき出す。
いかがでしょうって……断ることできないでしょ。
「なあ、なんであんたより得点が高い、じゃなくて以上でうちらの勝ちになるんや?」
それ気になる。
「そうだね、そのルールだと同点だった場合、あたし達の勝ちでいいんだよね?なんでそんなルール?」
ノルンが問いかけると、ツインエースは口元を緩ませてダーツボードの方に向き、言う。
「理由……そんなものは単純でしてよ。見せて差しあげましょう。」
そして、ツインエースは3つの矢をそれぞれ少しタイミングを遅らせて投げる。
ツインエースの手から放たれたそれらは、まっすぐ綺麗にボードに向かっていき、最初のひとつは20のトリプルリングに見事に刺さる。そして、それに続く2本目は……一本目のフライト部分に真っ直ぐ刺さった。そして、3本目も同じく、2本目のフライトに刺さる。
一瞬の静寂。そしてツインエースが観客に向けて手を上げると、あの不快な音……声が割れそうなくらい響く。頭痛くなる………。
「…………これってトン・エイティー(20のトリプルリングに3回とも当てること)扱いなの?わたしルール詳しくない……。」
「ええ、もちろんですわ。少なくとも、ここではわたくしがルール。これはトン・エイティー……つまり、最高得点の180………これが答えでしてよ。」
「あー、なるほどね。」
「……ウチらも同じことせんと、絶対勝てないってことやな。」
「うわー……」
じゃあ、1人でも20のトリプルリングいかなかったその時点で………ってことだよね。
「さあ、次はあなたがたの番よ。順番は………お好きにどうぞ。せいぜい無駄に足掻いてくださる?」
ツインエースはバカにするように少し笑い、わたし達に1本ずつダーツを渡してきた。さすがに、これ自体に仕掛けがあったりしない……つまり、ツインエースは絶対に負けない自信があるってことだ。
「ど、どうする?わたしダーツなんて全然………」
すると、ノルンが前に出て、投擲位置に立って言う。
「こういうのってさ、相当すごいプロレベルと、始めたての初心者以外は腕なんてみんなそうは変わらないよ。最後はメンタルだよ。周りに惑わされず、緊張しないでさ。」
喋りながら、大してダーツボードも見ずにノルンは矢を投げる。無謀にも思えるその投擲は、そんなことはなく見事に20のトリプルリングに命中、深く刺さる。
「おぉ………」
そして、観客からは盛大なブーイング。そりゃそうだよね、ここにいる人?達はみんなツインエースのファンみたいなもので、ツインエースの勝利だけを待っている。一投目とはいえ、トリプルリングに当てられたらそりゃ怒るよ。
ツインエースは少し不服そうに、刺さった矢を抜いてくれた。無言でこちらを見つめるその顔は、でもまだ余裕がありそう。
「んじゃ、次はウチやな。ウチこう見えても意外と器用だし、メンタルも強いで。」
そんなブーイングの中、今度はマリーが前に出る。
まあメンタルは強いと思うけど。
「マリリン!いけいけー!!」
「任せとき!ウチがぱぱっと60点取って、ルナに繋いだるわ!」
マリーも喋りながら、軽く矢を投げる。
放られたそれは、素直にまっすぐ、なんの躊躇いもなく20のトリプルリングに深深と突き刺さる。
「っしゃあ!みたかウチの実力!ブーイングでも何でも好きにしてろや!騒いでられるのも今のうちや!」
そんなマリーの声をかき消されるほどの凄まじいブーイングの嵐がわたしに向けられる。その声、外見も相まってホラー以外の何物でもない。
ツインエースはイライラした様子で、矢を抜いている。次で、最後。わたしが決めれば……
「ほら、最後だよ。あたしとマリリンが繋いだバトン、ルナっちに任せるよ!」
「ルナならできるやろ!自分信じて、ひょーっと投げればそれでもう決着やで!」
2人に背中を押され、投擲位置に立つ。うーん……意外と遠い。
「よ、よし………いくよ!」
ダーツにわかです……