表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/118

終焉を迎える始まり

「なんて、意地悪してる場合でもないよね!ほら、こっち来て!」


「わっ」


 ノルンはわたしの手を引いて元いた部屋……『時空間から切り離された虚空』に戻る。ていうか、これの説明されてないじゃん!


「なんや、そんなに慌てて走って、どないしたん?」


 部屋で待っていたマリーは、当然状況を知らないから、特に慌てている様子もない。


「説明はあとだよ!ルナっち!マリリン!あたしの手握って!」




「……………んあぁ、ウチのことか?」


「早くっ!」


「ホイ、これでええか?」


 マリーが左手、わたしが右手を掴む。部屋の外を見ると、顔が✕と◻️の人間が階段をおりてきていた。


「き、来ちゃったけど!?」


「うわ、でよった!こんな行き止まりで看守たちに襲われたらめんどいで……なんか方法あるんか?」


「平気!ほら、行くよ!…………やぁっ!!」



―――――――――――――――――――


「はい、大成功!」


 ノルンの掛け声を聞いた次の瞬間。何故かわたし達3人は地下牢ではなく、外にいた。夜はあけていたみたいで、曇り空の向こうに少し太陽を感じる。


「………ここは………」


「あれ、なんでウチらこんなところに………ってここ、ウチらの住んでる場所やん。ほら、ルナに言ったやろ?助けた人とか、捕まってない人達が固まって住んでる場所。このへん一帯がそれや。」


「あぁ……なるほど」


 『真実を知った世界』。いまのわたしの目に写っているのはそれ。最初に見たようなオシャレ世界なんて何処吹く風。ここに広がる世界は正しく『街そのものが監獄』。


 開けた場所に、廃屋同然のボロボロの建物がいくつもある。中には屋根すらまともに着いていないものまで。そして、まばらに目につく人達もまた、怪我をしていたり、座り込んでいたり、まるで元気はない。………見たくもないけど、もっと奥に目を向けると、()()()()()()()()()()らしきものまで。


「ここが……」


「せや、ここで暮らす。暮らすしかないんや。食べ物もまともにないから、畑作って育ててはいるんやけど、ほらみてみ。こんな腐った土ばっかりや。まともに育つわけがないわ。育っても、極わずかな量をわけなあかんしな。それでもみんな、文句も言わずに頑張ってるんや。いつか絶対、あの独裁官をぶっ倒すやつが現れて、全ては過去になるってな。」


「…………そっか。それと………気になったんだけど、マリーはどうしてそんな格好してて、ハンマーなんて持ってるの?みんな、服もボロボロなのに、マリーは綺麗だし武器まで………」


「あー、まだ話してなかったな。でも、ちょっと待ってや。ウチの気になることもあるんや。………あんた、何もんなん?」


 ここに来てマリーはやっとノルンに話を振る。


「おお、あたしこのまま無視され続けるかと思ったよ。」


「無視できるわけないやろ。あんたの力やろ、ここに来れたの?なんや、ワープでも使えるんか?」


「うん、そんな感じ。」


「あのね、ノルンは終え」


「バカ!!」


「いたっぁ!?な、なに!?」


 本気で殴られた。頭。なんで??


「お、なんや喧嘩か?」


「あのね…」


 ノルンはわたしにだけ聴こえるように耳元で言う。


「マリリンはこっちの世界で生まれた()()の存在なんだよ。本来の世界の存在である終焉の女神の話とか、していいわけないでしょ。混乱招くし、ルナっちが1番警戒してた『あなたは作られた存在ですよ』っていうのにも繋がっちゃうよ。」


「そ、そっか……そうだよね。ノルンが終焉のめ」


「だから!!わざとなの!?」


「ごめんて」


「さっきから何しとるんや?」


「き、気にしなくていいよ……」


「そうそう!で、あたしのことね。名前はノルンだよ。あたし実は『大魔法使い』なんだよ。すごい強い力を持ってて、その力を恐れた独裁官に捕まったの。さっきのワープもあたしのすごい魔法のおかげってこと。だから独裁官はあたしをわざわざ『時空間から切り離された虚空』なんていう大層な場所に封じた。あの場所、マリリンがやったみたいに外から無理やり壊さないと、絶対外に出られないし、時間も止まったまま。」


 ノルンは全く嘘のことを、あたかも本当かのようにスラスラと喋っていく。


「それでね、あなた達が来てくれなかったあたしずっとあのままだったわけ。時空間から切り離された虚空だから、死ぬことも出来ないし………ね。あくまでもあたしは普通の人間なのに。」


「結構えぐいことされてたんやな……」


 普通の人間………まあいいや。


「で、結局ノルンとルナは知り合いなんか?」


「あ、えっと………」


「んー、あたしは覚えてたんだけど、ルナっち忘れてたみたい。まあ、あたしは魔法使いだから記憶力も普通の人よりいいからね。別に忘れてても怒んないよ。」


「あ、ありがとう……?」


 よくもまあ、そんな嘘をスラスラと。でも、マリーは納得した様子で頷いている。これでいいんだ…………。


 すると、向こうの方の家から声が聞こえてきた。


「おーい、マリーか?戻ってきてたんなら、こっち来てくれ。」


 声のするほうを見ると、数人の大人の人達がマリーを呼んでいた。


「あー……すまんな、ちょっと行ってくるで。すぐ戻るから、その辺の椅子でも座っててな。ほな行ってくるわ。」


 マリーは走って呼んでいた人達の方へ向かっていった。周りを見ると、椅子………椅子?……とにかく、座れそうな何かがいくつかあった。


 とりあえず、ノルンと向かい合って座る。


「うーん………」


「なに?どうしたの?」


「………ユイのことは知ってるの?」


「ユイちゃん、知ってるよ。お姉ちゃんに頼まれて、あたしを殺そうとしてる子だよね。まあもしこの場にいても、殺せないよ。」


「どうして?」


「だって、ここから脱出するにはあたしの力も必要だし。殺すなら、その後でしょ。ま、無理だろうけどね。」


「でも、いつかは………」


 わたし自身はノルンに対してなんとも思わないけど、でも、本当に世界を壊す気なら…


「魔王がいる以上あたしも世界を壊すのは無理かなぁ。だからまずは一緒に魔王倒そうよ!で、そしたら、その後で改めてあたしとみんなは対立して、ぶつかり合って、戦う。それでいいでしょ?まあ、勝てないだろうけど。」


「いいのかな………」


 魔王を放置すれば世界は闇に包まれるけど、崩壊はしない。魔王を倒すと、世界は闇に包まれないけど、近いうちに世界が壊される…………詰んでるけど…………。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ