いざ旅へ!
「……はい、ちゃんと5つありますので、こちらが報酬です!」
木の実を酒場に持っていき、報酬を受け取る。……3000ルピア。内容の割には高いけど、全然少ない。
とりあえず外に出てみるけど、もう夜で真っ暗。よく考えたらこれからどうするかは勿論として、夜どうやって過ごすかも考えてなかった。お金全然ないしどうしよ?
「うー………おや、あれは……」
街をフラフラ歩いていると、見たことある鎧を着た女の子が……ルルちゃんが居た。白銀の鎧は綺麗で、夜でも………というか夜だからこそ目立つ。思い返せば、ルルちゃんって寝る時とか一部の時を除けば大体いつも鎧きてた。
「ルルちゃんだ!」
「あ、ルナさん……!」
向こうも直ぐにわたしに気が付き、手を振ってくれた。
「なにしてんの?1人?」
「1人ですよ。今は、お買い物です。明日の朝には出発するので、準備をしておかないとなんです。」
………そうだ、どこに行くかだけでもきいておけば……。
「そっか、4人でも頑張ってね!……ところで、どこに行くのかな??」
「まずは至宝魔術書のグリモワールを探すために、キンベルより東にある『スフィアの森』……その中のどこかにあるという、魔法使いの方たちが住む里に向かおうと思っています。」
「じゃあそこにグリモワールがあるの?」
「それはハッキリとしていません……が、少なくとも何かしらの情報………伝承かなにかはあるはずです。それ以外に今は何も手がかりがないので、まずはそこに行くことにしたんです。………それで、ルナさんは……。」
ちょっと目を逸らして気まずそうにルルちゃんは喋る。うん、別にルルちゃんは何も悪くないよ。
「わたしはね〜どうしよっかなぁ。この街にいてもどうしようもないし、故郷の村に帰ろっかな!パパとママも待っててくれると思うしさ。」
なんて、嘘。本当はこっそり着いてく……いや、むしろ先回りする!目的地は聞けたし、もう早速向かっちゃおうかな!
「そうなんですね、それでは会えるのはこれが最後でしょうか………。世界が平和になった、私一人だけでも絶対に、会いに行きますね!」
「うん、ありがと!それじゃ!」
あんまり長く話してても迷惑だし、そうそうに切り上げてわたしは立ち去る。会うのは最後……果たしてそれどうかな!?次に会うのはスフィアの森だよ!
―――――――――――――――
「………あ、あれ……?」
街の外を出て平原をしばらく歩く。最初は気のせいだと思ってたけど、違った。普段より暗いし、そのせいで歩きにくい。
「………あー!そっ、そうだったぁ!普段はメルリアの魔法で照らされてたから夜も歩けたんだ!………しかも地図もなかったし、困ったね?」
振り返ると、もう街見えないし………ここどこ?広い平原、つまり目印になるものは何も無い。昼間なら、遠くに見える山とかでなんとなくの方角は分かるけど、夜だとわかんない。曇ってて月もでてないから本当に何も目印がない。
「……テントもないじゃん!ダメだこりゃ。」
食料位は何とか買えたし、料理の道具は一応持ってるけど、テントも何も無い。忘れてたね。いつもは他の誰かが持ってたから。
「……ん?何かいるような気が……」
気配を感じて後ろを振り向くと、小さいけど立派なキバや翼がある、四足歩行の竜が居た。犬くらいの大きさだけど、めちゃくちゃ強そう。四肢は太くて爪は鋭い、コウモリの翼を大きくしたような不気味な翼は羽ばたくだけですごい音がする。牙をのぞかせて吐息が漏れている。
「………『キーヴル』だ。」
夜行性のドラゴン。とても頭が良くて、雑食。一説によれば、少しだけ進化や歴史がズレていれば人間じゃなくてこいつらの世界になっていた可能性があるくらい、知性があるらしい。……わたしとどっちがかしこいかな?
「………ゥゥゥ」
キーヴルは唸り声を上げて、今すぐ飛びついてきそう。これはまずい。死ぬ。………でも、平気。わたしは死なない。頭がいい……それなら、逆に……。
「ま、待って待って。ちょっと待って。いいの?本当に今この場でわたしを殺して食べてもいいの?」
「………ゥゥゥ?」
お、おお……人の言葉通じてる?
「見えないのかなぁ?わたしのこの背中の刀!ほらみてこれ、これこれ。」
わたしは半身になって背中の刀をキーヴルに見せる。
「わたしはこんな刀持ってるんだよ。わかるかな、君みたいなちっこいドラゴン、1発で真っ二つ!それが嫌なら……わたしの言うことをきいてね!」
……ど、どうかな………?
「……ゥ。」
キーヴルはわたしにおしりを向け、上に向けて口から少し火を吐いた。そのおかげで辺りは少し明るくなり、歩きやすい!更に、キーヴルはなにか指示を待っているように見える。
「…お、もしかして案内してくれるの!?じゃあ早速……スフィアの森まで連れてって!そこまで行けたら終わりでいいからね。」
キーヴルは素直に指示に従い、歩き出した。なーんだ、やっぱり頭いいって言っても人間には及ばないじゃん!わたしの勝ち!
――――――――――――
しばらくついて行くと、景色が少し変わってきた。足元も草原って感じじゃなくて、少し岩が出てきた。更に、周りにも岩壁の様なものや小さい洞窟?がある。
「ねー?ほんとにスフィアの森に近づいてるの?こんな岩場に森なんてあるの??」
文句を言いながらまたしばらく歩くと、キーヴルは足を止めた。どうやら、着いたみたい?
「ん?ここがスフィアの森の入口………っていやいや!?」
顔を上げると、そこは洞窟の目の前で、中には3倍くらいの大きさのキーヴルが居る。小さい方……わたしを案内してくれたキーヴルはそいつにしっぽを振ったあと、わたしの方見て……少し笑ったようにみえた。
「んな……!」
騙されちゃった!?もしかして、わたしノコノコと巣まで着いてきちゃった!?餌じゃん!餌にされるよ!?
「い、いいのかな?ほ、ほんとにいいの?わたしにはこの刀……ひぇっ!?」
わたしが言い終わる前に、大きいキーヴルは火を吐き出して威嚇してくる。
賢い!とても賢い!これは人間と並ぶレベルで賢い!
「お、お邪魔しましたっ!さよなら!!」
その場で向き直り、わたしは全力でかけ出す。モンスター相手に背中見せて逃げるとマジでありえないけど、これしか方法無い!
でも、逃げてる最中……振り返らなくてもわかる!めっちゃ追ってきてる!唸り声で何かが燃える音がすぐ近くで聞こえる!え、どうするのこれ?こんな所で死ねないよっ!