表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/118

虚空の中で朽ち果てる

 実験室から奥に進むと、さらにさらに下にくだる階段。マリーの灯りがなかったら多分真っ暗で、歩けない。


「エラい下に行くなぁ。一体どんなヤバいやつが捕まってるんやろか………」


「たしかに、そんな人ほんとに助けてあげていいのかな……」


 極端な話、レナもセーラの仲間で、これも何かの罠だとか。まあ、そんなこと考えたらキリがないし、マリーは乗り気だから行くしかないかな。


 その後しばらくくだると、やっと階段が終わり、その奥にやたらと厳重な扉が見えた。近づくと、その異様さがさらに際立つ。


「な、なんやねんこれ……やりすぎやろ。」


「『絶対に開けさせない』って意思をめちゃくちゃ感じる…」


 牢屋って言われたから、普通に格子だと思ってたけど、全然違う。

 鋼鉄で出来たやたら分厚そうな扉に、何重にも鎖が這わせてある。さらに、その鎖にはいくつもの鍵が着いてる。こんなの、いくらマリーのハンマーでも壊せそうにない。


「どうしよ?」


「んー……?なんか書いてあるで。」


「なんて?」


「『室内は時空間から切り離された虚空なため、内部からの脱出の恐れはありません。月に一度の点検以外では見回りも必要なく、看守もつけません。』……なんやねんこれ。この中が異空間にでもなってるんか?」


 それにしたって、わざわざそんな注意書きするかな?まるで、ここの部屋のことを知らない人がここに来る前提かのような文章。


「なんだろうね…そんなにやばい人が捕まってるのかな…」


「ま、なんでもええわ。ぶっ壊すだけや!」


 マリーは背中のハンマーを手に取る。途端に、重そうになり、ゆっくりと振り上げる。


「オラァ!どや!?」


 勢いよく振り下ろさせたハンマーは、鋼鉄の扉にぶつかり、鈍い音を立てて停止した。


「……ど、どう?」


「いったぁ!こんなん素手で何回もできんわ!手痛すぎて死んでまうわ!ビクともしてへんし、やるだけ無駄やわ。」


「だよね〜……」


 金属で金属を叩いたら、そりゃ痛いか。でも、どうしよう。何かほかに方法は………


「……おーい。」


「ん、マリーなんか言った?」


「なんや、ルナがなんか言ったんかと思ったわ。」


「違うけど………聞き間違いかな?」


 でも、確かに聞こえた気が……


「……おーい………おーいっ!!聞こえないの!?」


「うわっ!?」


「な、なんや!?どこの誰や!?」


「ここだよ、ここ!目の前にあるどデカい扉の内側だよ!あたしはここ!聞こえてるかな!?」


 やっとはっきり聞こえてきた。女の子の声だ。


「う、うん!きこえた!」


「あんた誰や!?そっちがわおるんなら、閉じ込められてるちゅうことやろ!?」


 とりあえず、大きい声を出す。


「そうだよ!もう長すぎていつからここにいるかもわかんないし!……さっきの感じだと、あなたたち2人のどっちかが扉を思いっきり叩いたんだよね!?そんなんじゃ壊せないよ!あたしのこと助けに来たんだよね!?」


「そうだけど、じゃあどうすれば!?」


「その扉、フェイクなの!実際はその扉の向こうには壁しかない!ほら、よく耳済まして!あたしのこの声、どっから聞こえてる!?」


 そういうこと…………………………


「うーん?」


「わからんわ。」


「そ、そっか……」


「てか、随分元気やなぁ。ずっと長いこと監禁されてたのに、平気なんか?」


「あったりまえ!あたしを誰だと……と、そんなことより!もういいや!どっかその辺の壁壊してみて!多分中と繋がるから!」


「っしゃ!そういうことならウチに任せな!ほな、ちょっと下がっててな。」


「うん、頑張って!」


 一旦、階段の方まで下がる。マリーはそれを確認し、ハンマーをめちゃくちゃに振り回し、あたりの壁を破壊しだした。程なくして、言われた通り向こう側の部屋と繋がった。なんだ、見た目の割に大したことない。『時空間から切り離された』なんて書いてあったみたいだけど、全くそんな感じもない。


「繋がった!」


「なんや、簡単やな。」


「じゃ、あとはあたしの体を縛ってるこれも取ってよ。」


 中に入ると、狭くてかび臭い、何も無い部屋の中に声の主である女の子が居た。長い間捕まってたって言う割には、体も服も髪も綺麗で、そんな感じ全然しない。


 捕まっていたのは、わたしよりすこし年下っぽい綺麗な女の子。黒い綺麗な、短めのドレスを着ていて、吸い込まれそうなくらい綺麗な真っ黒の長い髪。見たことない子だ。


「ほな、これとってやんないとやな。」


 そう、その子は壁際で変なものに縛られている。両手両足は壁から生えてきている、それこそイカの足みたいなもので縛られていて、腰の辺りには金属のワイヤーみたいなものが巻かれている。


「あ、意外と簡単に取れそう。」


「丁寧にお願いね〜」


「なんかエロいわぁ……」


「…………」


 マリー…………


―――――――――――――


「あー!久々に身自由に動かせる!気持ちいい!助かったよっ!」


 女の子は全身を大きく動かして、叫ぶ。


「よかった、けど………」


「あんた何者なん?こんな奥底に長い間閉じ込められてたとか、尋常じゃないで?」


「ん、それは……ってあぁ!!」


 女の子は突如、わたしの顔を指さして叫ぶ。


「な、なに?」


「あなた!あなたは!!ルナっ!!だよね!?」


「え、え?なんで……?」


「ん、ルナ知り合いなんか?」


「え、知らないけど……」


「あなたは知らなくてもあたしは知ってるの!よし、ちょっとこっち来て!」


「うわ、マリーごめん!ちょっとまってて!」


 腕を強引に引かれ、壊した壁から部屋の外に連れていかれた。


―――――――――――


「改めて確認だけど、初対面だよね?」


「そうだよ。会ったことは無い。でも、あなたのことは知ってるよ。ルナ。勇者シオンにクビにされた女の子。」


「うわ、なんで。」


 すると、女の子は顔を近づけてきて小声で言う。


「いい?これから話すことは冗談抜きに本当に大切なこと。だから、あっちの子には絶対に内緒、わかった?」


「う、うん……」


「よし、じゃあ教えるよ。あたしが何者で、どうしてあなたのことを知ってるのか。あとついでに、『時空間から切り離された虚空』の意味も教えてあげちゃうよ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ