表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/118

無表情な仮面

「に、逃げるって言ってもこの先に抜け道とかあるの!?」


「そんなんウチも知らんわ!言った通りこんな深い階層まで来たのは今日が初めてなんや!てか、こんな所に閉じ込められてるとかユイとあんた、一体何したん?」


 ……多分、わたしたちの場合は罪の重さってよりも………他の事情が大きく絡んでると思う。まあ、そんなことは言えないけど。


「わたしも知らない!こっちが聞きたいくらいだよ!…うわ!さっきより近いし!」


 後ろを見ると、少し近づいてきている。喋りながら全力で走る、かなり疲れる……もう長くはもたないよ……。


「はぁ……ちょっと体力的にもきついな……」


「てか、なんでそんなハンマー背負ってるのに走れるの?重くない?」


「んな事後で説明したるわ!………はぁ、しゃーない、こうなったら……」


 マリーは立ち止まる。そして


「よし!やったるわ!ルナ、あんたもそんな立派な刀持ってんならなんかしらできるやろ!?」


 これ以上逃げたところで、この先に何があるかも分からない。それなら、とマリーは看守達を迎え入れる姿勢をとる。


「い、いや……これはまあなんというか、飾りというか……そう、お守り!だからわたしはこの刀全く使えないよ!抜いたこともない!」


「はぁ!?そんなん知らんて。やるってなったらやるしかないんよ、ほら、行くで!」


「え、ええ!?」


 無理やり刀を抜かれ、渡される。持ったこともないよ…!


「わ、わかんないし!」


 そんなことしてるうちに、看守はすぐ目の前に来ていた。きたない鉈を持って、こちらを(多分)睨みつけている。追いかけてきた勢いのまますぐに襲ってくるわけじゃないあたり、知能はちゃんとあるのかな………。


「オラァ!どけやこの贋作どもがァ!自分を人間だと思い込んでるアホが!喰らえ!」


 マリーは距離を詰め、すごい勢いでハンマーを振り下ろす。多少隙があったから片方の『△』の方は後方に避けられたけど、『○』には当たった……てよりも、たたきつぶした。一体どんなグロいことに……と思ったら、何故か跡形もなく消えていた。不思議に思っていると


「ルナ!何ぼさっとしてんねん!そっちいったで!」


「ああ!!」


 気をとられてた。逃したもう1人が、わたしのすぐ側に来てきた。振り下ろされた鉈に対して、咄嗟に刀を出す。


「うわっ」


 運良く、鉈が刀にあたり、防げた……。看守はよろけている。けど、そんなの偶然。次もう1回来たら…。マリーは遠くにいるし、あんな大きいハンマー構えたまま瞬発的な動きは出来ないはず……


「一瞬でも隙が出来たなら十分や!ウチのもう一個の必殺技見せたるわ!」


 いや、出来てる。正確には、ハンマーは捨てて、丸腰で走ってきた。そしてそのまま飛び上がり、足を高くあげて看守の上からかかと落とし!本来脳天であろう場所に直撃して、看守はそのまま倒れこむ。


「よし、これで平気やね。」


 マリーはハンマーを拾いに行く。その間に倒れている看守を見てみる。顔の形は『△』。マリーのかかと落としはその頂点に当たったはず。マリーも痛そう。


「んー……うわ、気持ち悪い……」


 倒れている顔も、どこから見ても正面を向いた形にしかならない。なにこれ………。顔以外は普通の人間と同じだから、余計変な感じ。いっそ、もっと異形の化け物の方がまだ良かったよ…


「ん、どしたん?気になることある?」


 そりゃあありすぎる。まずは手始めに。


「かかと落としする時パンツ見えてたよ。」


「別にええやろ……。なんで今それをまっさきに言うんや。」


 呆れてる。


「いや、気がついてないのかなって。」


「んなアホちゃうわ。知っとるわ、あの体勢になったらそりゃ正面からはガッツリ見えとるやろな。でもウチにとってはこの服装であの体勢が1番動きやすいんや。見えるって理由くらいじゃ変えへんわ。」


「へえ。」


 まあこだわりとかの話するなら、刀持ってるわたしがなにか言えたことじゃないし。それにしても初めて使ったなぁ……もう使わなそう。


「あ、そうだ。ハンマーは?なんで背負ってると軽いの?」


 だって、どう見ても重そうだし、実際マリーも使ってる時は重そうにしている。


「理屈はウチも説明出来んなぁ。これはもうそういうもんだと思って使ってるしな。錬金術とか魔法とか、そういう類の術であるんよ、特定の時だけ重さを感じなくする、って感じ。」


 ………よく考えたら、わたしの持ってるなんかよくわかんないけどものが沢山入るポーチ、これだって理屈不明のものだしね。これはメルリアの魔法で作って貰ったやつだけど、こっち側の世界にも色々そういうものがあるのかな。


「てか、もっと気になってること絶対あるやろ?」


 マリーは倒れた看守を見ているわたしの顔を覗き込んでくる。


「まあ、あるよ。これ。この顔?頭?どうなってるの?そもそも、奪われたって何?」


「ああ、その前に………ちょっとまっててな。」


 マリーは倒れている看守の頭……『△』の部分をもう一度、強く蹴飛ばした。すると、ハンマーで叩かれた『○』の方みたいに、体諸共跡形もなく消滅してしまった。


「これでよし、と。」


「なにごと?」


「ん、こうしないとそのうち起き上がってまた襲ってくるんや。んで、頭の部分にめちゃくちゃ強い衝撃与えると、今みたいに消えるんや。」


「全然意味わかんないし……」


「でも、どーするか。ちょっと騒ぎすぎたから、本来行こうとしてた道行くのも危険かもなぁ。降りてきた看守と鉢合わせもいややし。どこに出るかわからんけど、もっと奥行ってみよか。」


「う、うん………」


 何が何だか、なんにもわかんないけどとりあえず言われるままに着いていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ