だいたい真相なんて
「ここなら平気だろうね。」
店を出て、周りに人がいないことを確認してから、話し出す。
「えっと……エルリック……さん?」
なんて呼ぶべきだろ?
「あ、別にそんなふうに呼ばなくていいよ。呼び捨てで構わない。見た感じ、そんなに年も変わらないだろうしね。」
「わたし16」
「ちなみに、私は17よ。」
「えっ」
ユイ、年上だったんだ。へー。
「あ、年齢の話は別に広げなくていいんだけどね…。で、本題だけど。」
エルリックは改めて、周りに人がいないことを確認してから、少し小声で話し出す。
「君たち………この街には来たばっかり……だよね?」
「あれ、言ったっけ?」
「いや、言ってないわよ。」
うーん、やっぱり探偵だからわかるのかなぁ。
「そして、疑問に思っているはずだ。『聞いていた話と違う』……と。」
「おっ」
やっぱり、何かあるのかな。
「『独裁官ルナが治めるディストピア』……のはずが、この街はどう見てもそんな様子はない。どこをどうみたって、至って普通……どころか、生活の水準は高く見える。実際、僕も初めはそう感じた。」
「その言い方は………あなたも意図的にこの街に入ったのかしら。」
「そうだよ。以前、僕の友だちがこの街に連れていかれてしまって、助けようと思って潜入した………けど、その友だちを探すにも、この街は街なんて言うにはあまりにも広すぎて、探すあてもなかった。それより僕は、君たちと同じでこの街のあり方が気になってしまってね。そっちを調べることにしたんだ。」
「うーん……」
ちょっと話が難しくなる予感がするなぁ………ユイに任せちゃおうかな。
チラッとユイの方を見ると、ユイはエルリックの話を最初より真剣に聞いていて。ああ、もう既にそのつもりでしたか。じゃあわたしは周りの景色でもみてよっかな。
「そして、ある程度はこの街で何が起きてるのか、外の認識との相違がなぜ起きているのか、掴むことは出来た。出来たんだ、でも………」
「なにかしら、それをここで私に伝えることは出来ない?」
「そう、そういうこと………。一見すると今もどこにも誰もいないんだけど、実はそうじゃない。やっぱりここはディストピアで、常に監視はされている。だから、僕が知り得たことを他人に伝えると…………」
「なるほど。」
なんの話しだろ………??わかんないね。
「大抵の場合は彼女……『ツインエース』がすぐに駆けつけて、それ相応の対応をされる。でも………彼女すらこれらない場所というのももちろんこの街にはある。けど、じゃあそこが安全かと言えば全くそんなことは無い。原理も方法も全く不明だけど、そういう場所でそれ相応のことをすると、まるで『水中に引きずり込まれたかのように姿が消える』なんて話もある。」
「…………ん?」
なんか心当たりあるような…………。いや、ていうか絶対そうでしょ。こっちの世界のわたしの側近にアリスがいて、アリスの仲間にスティアがいた訳でしょ。となると、もう1人………わたしの仲間になってるはずの存在がいるはず。
あれ、じゃあ……今ここでわたしが彼女を呼び出したら誰が出てくるんだろ?どっち?どっちの世界?
「うーーん…………」
「ルナ、きこえてるかしら」
「え!あ、なに?」
わたしが考えてるうちに、さらに話が進んでいたようで、何が問いかけられている。
「とりあえず、僕の知ってることを話したい……けどさっき言ったようにすぐに見つかってしまう。何かいい方法がないかなって思ってね。どうかな、なにか案はあるかな。」
「無駄よ。ルナにきいても何も進展はしない。」
いや、多分………
「えっと、まずは……アリス…じゃなくて、ツインエースが来られないであろう場所に行きたい。わたしの考えが正しければ……多分安全に話が出来る。たとえ監視されてても、連れていかれることは無い……はず。」
きっと、ツインエースがどうしても行けない場所には、彼女のためにアレがあるはず……だから、それをどうにかすれば済む話!
「………わかった、とりあえず案内しよう。この街にもそういう場所はいくつかある。ついてきて。」
歩き出したエルリックの後に続いてわたしも進む。その後ろをいてくるユイは、心配そうに言う。
「まさかあなたから案が出るなんて。信頼していいのかしら。」
「平気平気!だってわたしだよ!」
「ダメね。次の案を考えておくわ。」
うーん……