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事実確認

2つ前の『表裏の自分』からの続きです

「………こっちの世界でも、食べ物は普通ね。」


「ん、そうだね。」


 注文してからやたらと直ぐに、テーブルに料理は運ばれてきた。見た目も味も、普通。別に辛さと甘さとか味がひっくり返ってる訳でもない。少し気になったのは、注文した時に一瞬店内の人達の多くが話をやめて、わたし達をちらっと見たこと。………まさか、この料理はハズレだったりして………なんて心配もしたけど、美味しい。


「………別に全ての事象が反転するわけじゃないのね。」


「そうだね……昼は明るくて夜は暗い、性格や振る舞いは反転していても性別はそのまま……」


「文字もどうしてこれが使われているかは置いておいて、左右の反転はなく、言葉はそのまま………反転はしているのは『人間の性格や能力』だけなのかしら。」


「今のところそうだよね………」


 話を進めながらも食べ続ける。


「ねえ、もしかしたら………シオン達もいるのかな?」


「勇者シオン………そうね、もしかしたらいるかもしれない………けど、はたして生きているのかしら。あちら側では世界を救う力を持った勇者や古の賢者の力を持つ者、至高のパラディン・ナイトに高度な魔法を使う剣士………それが反転したとするなら。」


「……すっごい弱くなってそう。まあそうだよね………わたしがあんなふうになるくらいだもんね。それに、反転世界とはいえ勇者だとしたら真っ先に狙われてそうだし。………ユイは居ないの?」


 ユイはもう食べ終わっていて、テーブルを拭きながら答える。


「いないと思うわ。恐らく、この世界が作られてから私は女神のせいで生き返った。だから、反転しようがない。」


「あ、そうだ。女神、この世界とは関係ない?」


 ユイは少し考えて、わたしが料理を食べ終わる頃に答える。


「ないとは言いきれない。文字のことを考えれば、複数の世界と何かしらの関係を持っている可能性は十分に………」


「……ちょっといい?」


 不意に声をかけられる。その声の主は知らない、若い男の人。わたしよりすこだけ年上かな?少し長めの茶髪で、優しそうな感じ。薄いコートを着ている。


「………なにかしら。」


「いや、ちょっとね………なんとなくだけど、君たちから…こう、『謎』というかなんというか……とにかく、そういう雰囲気を感じたんだ。あ、僕は『探偵』をしている『エルリック』で………」


 多少申し訳なさそうにしながらも、全然遠慮しないで喋るなぁ。


「探偵………割といるもんだね。」


「エルリック………それが本名なら探偵にふさわしい名前ね。」


「え、そうかな?」


 どういう意味だろ、まあいいや。


「それで、謎って何かしら。」


「わたし達からなにか感じた?」


「そう…………かな。上手く言葉じゃ表せないけど、そんな感じだよ。だから、出来たら話を聞きたくて………」


 丁寧に頼み込んではいるけど、その言葉とは裏腹に、隣の席に座り、もう完全にガッツリ話を聞く体勢に入っている。


「………申し訳ないけど、いきなり信頼しろなんて無理な話よ。」


 ユイは冷たく言う。まあそりゃそうだけど。


「探偵………もし本当なら頼れるかもしれないけど…………自分で言ってるだけだったりして………」


「はは………まあそう思われても仕方ない。こんな場所だし、他人を簡単になんて信用出来ないよね。」


「………」


 あれ………『こんな場所』って認識してるってことは…………?


「うーん……別に『僕は探偵です』なんて証明書があるわけじゃないしね…………。あ、そうだ……これで証明になるかどうかなんてわからないけど………」


 そう言い、椅子から立ち上がりわたし達のことを少し見つめる。そして、また椅子に座る。


「そっちの君……金髪の子。君の背中のその刀……おそらく、飾りかな?君は1度もそれを使ったことは無い………どうかな?」


「え、なんで………」


 確かにわたしは1度もこれを使ってない……けど。


「君は右手で食事をとっていたから、多分右利きだと思う。そうなると、多くの場合利き手で武器を振るったり、両手で持つ場合もまずは利き手で武器を手に取る人が多いと思う……けど、君のその刀のしまい方だと、相当無理な体勢かつ、ひねくれた取り方をしなき限りは左手で武器を抜くことになる……。盾を持っている訳でもないから、普通ならそんな方法をとるわけが無い。それと、君の手も……すごく綺麗だから、きっと何かを強く握って、振るったことがないかな………って感じだよ、当たってるかな?」


 自信無さそうに言ってるけど、ここまで一気に言うあたり、自信ありそう。


「すごい!完璧!」


「当てられて喜ぶより、使いもしない刀を持ち歩いてることをもっと疑問に思うべきね。」


 そんなことをいうユイに対して、彼は続けて言う。


「………どうかな。少しは信頼…………できないかな。」


「わたしはいいと思うけどなぁ……ユイは?」


 少し考えてたから、ユイは答えた。


「正直に言えば、今の程度なら探偵かどうかなんて関係なく見抜ける人はいくらでもいる……まあいいわ。とりあえずは信頼する……でも、何かあれば………」


「そ、そんな怖い目で睨まれたら、もし本当に悪事を企んでいたとしても出来ないんじゃないかな………あはは……。」


 じゃあ早速………と思いきや、どうやらここじゃ話せないらしく、支払いを済ませ、わたし達3人はとりあえず店を出ることにした。



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