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背中合わせの嘘と真実

なんの話でしょう……

 鏡の世界のどこか。


「………貴様らがどんな御託を並べようと、既に運命の歯車は回り、ひとつの終焉への真実を示している。無駄なあがきだ。」


 どこかで、大きな椅子に座りながらルナとユイが映し出された鏡を見て笑う少女………()()


「どうでしょう?わたくしはあの二人が勝つ可能性も捨ててませんけど。」


 椅子の前に立ち微笑みながらそう返す少女…………ツインエース。


「ふん。どうせいつも通りだろう。口ではそう言いながら、腹の中では勝利を確信している。()()()()()()()()()()()()()、最も性格の悪さが出る手法だ。」


「まあ、そう言わずに是非見届けましょう。世界に違和感を覚え、真実に近づくほどに抗えない闇に飲まれていく少女………悪くないゲームでしてよ。」


 そう答えるツインエースに対し、ルナは刀を向ける。


「それないいが………何かの間違いで本気で我を裏切るような真似をするなら……わかっているな?」


「ふふ、それはもちろん。怪盗ツインエースは常に独裁官ルナの味方、それは絶対に揺るがないこと。ご安心を。」


 その言葉を聞き、ルナは刀を背中に収める。


「あと少し………目前に迫った、我が完全に統治する理想郷………最後の詰めとなる。」


「もちろん、それが完成したあかつきには………わたくしをルナちゃんの右腕って感じにしてくれる………のでしょう?」


「約束してやろう。ただ……………いや、なんでもない。」


「?」


「まあいい。いつあの愚か者共が世界のまやかしに気が付き、自らの置かれた状況を理解するか…………暇つぶしには悪くない。だが恐らく、その身にやどったあまりの業に自ら死を選ぶこともあるだろう。人間などそんなものだ。もっとも、その『死』すら満足に選べるとは限らないがな。」


「よく喋ること。もしかして、ずっとひとりで退屈でしたでしょうか?」


 ツインエースはバカにするように言う。


「……我は『準備』をしてこよう。監視は貴様に任せる。くれぐれも、馬鹿な気は起こさないことだ。」


 そう言い残し、ルナはどこかに消えていく。1人残されたツインエースは監視用の鏡を見て呟く。


「ごあいにく様。怪盗は正体を隠して人を欺き翻弄するプロフェッショナル。いつなん時も特定の誰かの見方とは限りません。さてさてルナちゃん………あなたの描いた運命の行き着く先………果たして、本当にそうなるのでしょうか。運命に楯突く………わたくしは本気で信じてますのよ。」


 そして、鏡を部屋の隅に置き、虚空を見つめて語り出す。


「さて………きっとどこかできいていらしてるでしょう。怪盗ツインエース、終身独裁官ルナ、そして………あの子。わたくしたち3人は力を合わせ、作られた偽りの反転世界を統治してます。しかし………反転世界と言えども、人間の本質までは変わらないもの。大半の人間は自分のことだけを考え、常に自分が世界の中心で、自分は悲劇のヒロインだとでも言いたげな振る舞いをするわけです。他人の意志を無視し、自分のエゴの押し付け………それは争いに繋がっていく…………。どうでしょうね、()()()はその先に何を見据えているのか…………答えが返ってこないのは、わかっています。」


 一呼吸置き、ツインエースは言葉に力を込めて続ける。


「わたくしは………そんな人間にはうんざりしています。わたくしも…………いえ、どうしてもみんな、そうなのでしょうか。『苦労してるのは自分だけじゃない』そんなのは綺麗事?『自分は可哀想だから思いやれ』そんなのはエゴ、ただのアピール?わたくしにはなにも、全てがもはやわかりません。知りませんし、理解しません。したくはない……………。全てわたくしのせいにして、全てを壊して奪って、それでもなおわたくしを責めたてた()()()のことを、わたくしは………」



「ですがそれでも、わたくしは………怪盗ツインエース。鏡より作られし偽り………いいえ、それすらも偽りかもしれない。魔王様もルナちゃんも、あの二人も………そして世界も全部騙して奪ってこそ、怪盗………でしてよ!」


 なにか、自らの中で決意を固めたのか、ツインエースは監視用の鏡を派手に叩きわり、部屋の外へ飛び出して行った。

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