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運命だって楯突いて

 示された方角に向かって歩いていくと、少しづつ家が減ってきて、いかにも街のはずれって感じの雰囲気になってきた。そこから更に進むと………


「お、あれかな。」


「随分と立派ね。ここで間違いないと思うけど。」


 広い場所に、3階建ての大きい御屋敷が建っている。建物の雰囲気は街にあったものとそんなに変わらないけど、こう大きいとやっぱり迫力が違う。夜っていうのもあって、なんか雰囲気がある。


「罠……とかあるかな?」


「あったとして、引き下がるのかしら。」


「いや、行くけど。」


「なら悩むだけ無駄ね。行くわよ。」


 ユイと並んで屋敷の入口に進んでいく。別に落とし穴とか、どっかから矢が飛んでくるとか、なにか落ちてくるとか、そういうのは全くなく、ドアの前まで直ぐにたどり着く。


「言われたとおり来たよ………開けて!」


 大きな声でいいながらドアを叩くと、すぐに開く。………でもそこに居たのはツインエースじゃない。


「あ……ルナさんとユイさん………ですよね?」


 小さい声で、恐る恐る喋るな女の子。知らない子………と思ったけどその声と髪型、それなら服装…………


「…スティア?」


「は、はい!!あたしはスティアです………えっと、どうかされましたか………?」


 名前を呼んだだけでそんなに驚かなくても…………


「………まあある意味反転………かしらね。」


「あ、奥でアリスが待ってます………入って正面の階段をあがった先の部屋にいますので………どうぞ………。」


 すんなりと入れてくれた。いちいちこれを罠かもなんて疑ってたらキリがないから、どんどん進む。


「………やっぱり、この様式は………」


 階段をあがりながら、ユイはまたなにか呟いている。内装も結構綺麗で、見たことないような飾りや照明器具なんかもある。ユイは知ってるのかな?


「ここね。」


 階段を登りきり、大きいドアの前に立つ。


「うん、開けるね。………よいしょっと。」


 少し重く、軋む扉を開けると、広い部屋の真ん中にツインエースが立っていた。背面にある窓からの月明かりで薄明るい。


「ようこそいらっしゃいました。ここはわたくしの屋敷。さあ、こちらへどうぞ。」


 言わるがまま、部屋の中に入り、ツインエースの前まで行く。


「改めて自己紹介。わたくしは怪盗ツインエース。『カルチェレ』の街を治めるルナちゃんのお手伝いをしていますのよ。」


「どうも………」


「……………」


 アリスだけどアリスじゃない………変な感じ。


「本来であればどんな事があってもここに人を呼ぶことはありませんが………おふたりは特別、あちらの世界からのお客様。お話くらいはしてもいいと思いまして。」


 深くお辞儀をする……アリスっぽくないなぁ。すっごい丁寧。


「知ってるのね………まあ、ルナの仲間なら当然よね。」


「ええ、話は聞きましたわ。……さて、いかがでしょうか、この街………カルチェレの人々や雰囲気は。」


「どうって………なんか変。思ってたのと違う………。」


「そうね。ここはディストピアかのような話だけれど、中に来てみれば普通の街。むしろ、外の世界こそ危ないと信じている。そして、嘘をついたり騙されている雰囲気もない。」


「そうでしょう、それこそわたくしたちの思惑通り。でもご安心を。ここは間違いなく『終身独裁官ルナの治める絶望の街カルチェレ』であっていますよ。しかし、街の人は本気でここを安全だと思い、ルナちゃんはいい人だと信じている……不思議なものですね?」


 どうせ答えはわかってるだろうに、ツインエースはわざとらしくとぼけるふりをする。


「因みに、あなた、それからスティアはどんな立場なのかしら。」


「わたくしは怪盗……しかし、本当に役割は街の治安維持。外から来た人が持っている危険なものや、ぐうぜんこの中で発見された危ないものを回収しております。しかし、ただ回収するだけじゃ楽しくないのでこのように『怪盗ツインエース』として振舞っているわけです。つまり、この刀もそういうことでしてよ。」


 ツインエースはいつの間にか刀を持っていた。そして、それをわたしの手に持たせてくれた。


「ふぇ?」


「これはお返し致します。実を言うと、わたくし……興味が出てきてしまいまして。」


「なんのことかしら。」


「あちらの世界からやって来たおふたりが、いかにしてこの世界の『真実』にたどり着くか、そして、ルナちゃんと対峙した時に何が起きるのか………。ルナちゃんはいつも、『人間の運命は既に決まっている』『我に歯向かおうと意志を持った時点で死の運命からを逃れられない』『真実など意味は無い』なんて言ってますけど、わたくしはそうとも限らないと思っております。」


 ツインエースは微笑みながら言う。綺麗な笑顔。


「じゃあ………わたしたちが、()()()を倒せるかどうか試すってこと?」


「そういうことになりますね。きっと、ルナちゃんは最初からわたくしのことなんて信じていません。だから、こうやって『ゲーム』みたいなことをするのも想定しているでしょう。」


「……どうしていいきれるの。」


「それはもちろん、あちらの世界のルナちゃん……今ここにいるあなたが、『どんな相手でも友達だと思えば無条件で信頼してあげる』、とても優しくて綺麗で、素敵な心を持っているからです。」


 な、なんかすごい褒められた…………


「えっと…………反転ってことは………こっちの世界のわたしは、基本的に絶対誰のことも信用しないってこと?」


「さて、どうでしょうか?」


 はぐらかされた……!


「と、お別れの時間のようですね。あなた達ならきっと、ルナちゃんの言う『運命』にだって楯突いて、真実を見つけられると信じていますよ。さあ、窓の外をご覧になって。」


 ツインエースは大きな窓を開け、手招きする。ユイと二人で近づき、外を覗くと……


「では、頑張ってくださいね。」


「ぐえ」


 思いっきり押された。そのまま下に落ちる。大した高さじゃないから怪我はしなかったけど、随分荒っぽい。隣を見ると、ユイはもう立ち上がって歩きだそうとしている。


「うわ、待って待って。どこ行くの?」


 わたしも立ち上がり、あとをついていく。


「まずはとにかく歩き回って、人から話をきくわ。一体この世界、この街がなんなのか…そこに隠された真相がなんなのか、突き止めるしかない。それがきっとこの世界から出るための手がかりよ。」


「はーい……」


 これじゃあわたしたちが探偵だよ………

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