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監獄都市

「ねえねえ!洞窟の中も明るいとかさすが反転世界って感じだよね!」


 大きい声を出すと、よく響く。そんな広くて明るい洞窟の中で、ユイに言ってみる。


「違う。これはヒカリゴケ。これか光を発しているだけ。暗いものは暗いわよ。昼間や夕方に太陽が出ていて明るいのだから、明るいものは明るい、暗いものは暗い……その常識は覆ってはいない。」


「…………反転世界なら、ヒカリゴケで暗くなるんじゃない?」


「知らないわよ。」


 まあユイが創ったわけじゃないしね………むしろ、わたしだし。


「そんなことより、早くここを抜けるわよ。無駄なことをしている時間はない。」


「はーい」



―――――――――――――――――――――


 洞窟をぬけて、その先の森を歩いていると、すぐに日が落ちて、真っ暗になってしまった。本来、日が落ちてから森を歩くなんて良くないけど、今はそうも言ってられないから、先に進む。しばらく歩くと………


「うわ、なにあれ………」


「………あそこね。」


 突如として、視界が開け明るくなる。その先には、高い……わたしの身長の3倍くらい…の壁に囲まれ、辺りは謎の発光物で照らされている場所………『カルチェレ』だと思う。


「……隠れて。」


「うわっと。」


 突然ユイに服を引っ張られ、近くの茂みに隠れる。こっそり覗くと、壁の近くでオレンジと青の例の服を着た人達が何人かで、何か話している。


「見回り?」


「そうね。目的は不明だけど、きっと彼らはこの近辺にいる人間を捕まえて、中に入れているはず。たしかに、手っ取り早く入るならその方法だけど、それではダメね。」


「どうして?」


 ユイは視線は向こうに向けたままこたえる。


「たしかに、彼の言っていた通り倒れたフリでもしていればすぐに入れるはず。でも、そんな手段をとったら持ち物も没収されるでしょうし、全く使う気がないとはいえあなたは背中に刀を持っている。危険人物扱いされて牢屋に入れられる可能性もゼロではないわ。もっと慎重な手段を取るべき。」


「結構考えてるんだね…… 」


「もちろん、あなたと違って。」


 でもまあ確かに、持ち物奪われちゃうのは困るし、乱暴なこともされたくはない。となると、こっそり入る方法………何かあるかな?


「………こっちに来るわ。もっと低くして。」


「うっ」


 ユイに頭を抑えられる。地面に顔が着きそう…………。


「…………ん?」


 耳を済ませると、見回りの人の話し声が聞こえる。2人いるかな………


「………って話聞いたか?」


「………てない。……が……なのか?」


 ダメだ……風が吹いてて草の音が邪魔する………


「じゃあ行ってみるか?……があるんだろ?」


「わかった、……か。」


 あー……いっちゃった。………それにしても、なんか変なもの持ってたような………。


「もう平気。誰も居なくなったわ。」


 ユイに言われ、顔をあげる。数人いた見回りは一人もいなくなっていた。


「きこえた?」


「風の音で聞こえなかった。…………それにしても、彼らが持っていたあれは………」


「知ってるの?わたし初めて見たよ。」


 持ってたもの。見たことも無いものだった。黒くて、持ち手のような物が前の方と後ろの方に着いていて、先端が筒状。重厚感があった。


「文字といいあの武器と言い、あの壁の周りの照明………この世界はなんなのかしら…………だとするなら、女神、それか破滅の女神の関与も………」


 ユイはなにか1人で考え込んでいる。何がそんなに気になるのかな。


「ねえユイ、なにを」


「……おい、お前たちここで何をしている?」


「あ」


「………想定外。」


 全く気が付かなかったけど、いつの間にか背後に見回りの人がひとりいた。……そっか、ユイはアカシックノートに慣れてたから不意打ちに弱い………。あ、わたしは常に弱いけど。


 見回りの人はさっきのよく分からない武器?をこちらに向けている。


「………道に迷っただけ。くらい森をさまよっていたところであの壁を見つけた。明るいからついつい見入ってしまったわ。迷惑ならすぐに立ち去るわ。」


「………わ、わたしも同じです…………。」


 なぜだかわからないけど、武器を見ていると緊張してくる。わたしはあんなもの知らないし、一体どんな手段で攻撃するかも分からない。でも、本能的に怖い。


「………着いてこい。」


 見回りの人はそう言って歩き出す。反抗もできず、言われるがままに見回りの人の後について行く。


「………少し予想外だけど、多分上手くいくわ。」


「じゃあこのまま………」


 と、しばらく歩くと予想通り、壁の一角に作られた門の前まで来た。見回りの人がそこで何かすると、扉がゆっくりと、少しだけ開いた。


「入れ。」


 …………投獄ってことだよねコレ。まあ、今のわたし達はそれが目的だけど。


 中に入ると、見回りの人は扉をしめながら、捨て台詞のように言う。


「よし、これでお前たちもこの街の住民だ。死ぬまでこの街で暮らせるんだ、ありがたく思うんだな。」


 そして、扉は完全に閉まりきり、外の世界とは隔絶された。


「…………入れたね。」


 振り返らず、扉をみたままユイに話しかける。


「ええ、そうね。でも…………荷物は一切奪われなかった。あなたのその立派な刀も。反逆なんて絶対にされない自信でもあるのかしら。それとも………」



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