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ミラーリング・ディストピア

 その辺に家に適当に入って寝ようとすると、まさの事態が!!!


 人が住んでた。


 つまり、わたしとユイは人の家のドアを勝手に開けて、勝手に入ったやばい人ということに。鍵かかってないって思ったけど、壊れかけててそういうレベルじゃない。


「………なんだ、あんたら?」


 中にいた、若い男の人に怪訝な顔をされる。………当然だけどさ。


「あ、えっと、その………」


「私たちは………すこし、道に迷ったの。もし良かったら、ここがどこか教えてくれるかしら。」


 特に謝りもせず、ユイは堂々も家の中に入り、尋ねた。仕方ないから、わたしもそれに続いて入る。


「迷ったって………どっから来てどこに行くつもりなんだよ………この辺りには、人の住む場所はあの『カルチェレ』くらいしかないし、他に行くあてもないだろ………それとも、俺みたいに逃げてきたのか?」


 男の人は力なく床に座り、面倒くさそうに言う。


「……情報量が多いからお話はユイに任せるね。」


「そうね、私もその方がいいと思うわ。…………私たち、すこし事情があって知識がなくて。もし良かったら話して欲しいわ。」


「あぁ………?なんか変わったヤツらだな………、まあいい。人の事情なんて俺は気にしない。ただ1つだけ約束してくれ。俺をあそこに連れ戻したり、どっか連れていくような真似だけはやめろよ?」


 少し強気で、釘を刺すようにそういう。何かに脅えてるような、そんな感じ。


「ええ、約束するわ。話だけきいたら私たちは立ち去る。それでいいかしら?」


「よし、その約束、絶対まもれよ?」


 そして、男の人は立ち上がってわたし達の近くに来て話し出した。


「今いるこの場所から、近くの洞窟を抜けてさらに歩いたその先に、『カルチェレ』はある。俺の知る限り、この辺りでは唯一まともに人が住んでいる場所かもしれない………いや、『まとも』かどうかはわからないな。」


「カルチェレ。それは街の名前?それとも、国?」


「自称『終身独裁官』のルナが治めている街………と言ってはいるが、規模で言えば小さい国だなアレは。アイツは壁に囲まれた範囲を街と呼んでいるらしいが、馬鹿みたいにその範囲は広い。カルチェレは街そのものがある種の監獄みたいなもんで、あの中は全てルナ、それからその配下の思うがままのむちゃくちゃな世界だ。」


 ………わたしが悪いみたいで気まずい。いや、わたしと言えばわたしだけど、わたしじゃないし。知らないし。


「……ディストピアってところかしら。それで、あなたは?そこを抜け出したということかしら。」


「ああ、そうだ。本来の抜け出そうとしようもんなら即刻見回りに捕まって地下の本物の牢屋送りだ。でも、俺はそこまでアホじゃないし弱くもなければそれなりに覚悟もある。弱そうな見回り1人くらいぶっ飛ばして、服を奪って変装して仕事のフリして外に出る…それくらいはできる。その証拠がこれだ。」


 そして、男の人は部屋の奥にあった服を持ってきた。見たことの無い文字でなにかが書かれている、青とオレンジの目立つ服。それに加えて、顔を守るヘルメット……だから変装がしやすいんだ。


「………『carcere』……カルチェレ…………どうして………」


 その文字を見たユイは、すごく驚いている。珍しい、どうしたんだろ?


「ん、なんだ?おまえ………この文字がどうかしたか?」


「………あなたはこの文字が読めるのかしら?」


「おいおい、さすがにバカにしすぎだろ?これくらい読めるだろ。意味としてはまあ…それこそ、『牢獄』だとか、そんなところか。」


「…………何故。」


「ん?」


「どうしたの?」


 ユイはまるで、なにか恐ろしいもの………と言うよりも、見てはいけないものを見てしまったような顔をしている。


「…いや、なんでもないわ。………………それで、そのカルチェレに入る方法はないかしら。」


 すると、男の人は信じられないというふうに言う。


「お、おいおい………なんだよお前ら………好きこのんであそこに行こうってか?俺は死ぬ気で逃げてきたのによ………。まあ、入りたいってなら止めないが……。方法は簡単だ。ルナはとにかく自分の支配する地に人を集めたがる。カルチェレの近くで倒れたフリでもしてれば見回りの奴らが拾って、放り込んでくれるだろうな。」


「なるほど。参考になったわ。」


 もう用はないようで、ユイはドアを開け外に出ていってしまった。わたしも追いかけようとすると、男の人に声をかけられた。


「何が目的が知らないが………やめておいた方がいいぞ。あんなところ、1秒もいたくない。なあ、もし良かったら教えてくれ。お前たちはなんのためにあんなイカれた世界に飛び込もうって言うんだよ。」


「……わたしもわかんない。」


「……なんだよそれ。」



――――――――――――――――――


 家をあとにしたユイは、話にあった洞窟の方に向かっていた。走って追いついて聞いてみる。


「ねえ、何するつもり?」


「なにって、ひとつしかないでしょ。カルチェレに行って、独裁官の情報を集める。この世界から戻るには、王である彼女を倒すしかない。」


「それはそうだけど………わざわざ、監獄みたいな街に行くの?」


「それ以外に方法はないでしょ。彼がいた場所に住んで、死ぬまでこっちの世界にいるつもり?」


 ユイはいつもの瞳で、凄い圧で睨みつけてくる。


「い、いや!行く!倒す!わたしのことはわたしが倒すよ!」


「そうね、それなら行くわよ。カルチェレ……この先にあるらしいわね。」


 洞窟に入ると、()()()()()()………そこも反転してるんだ………基準がわからないけど……

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