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これからの物語

「うーん………なんか3日くらい何もしてなかった気がするなぁ」


 ユイとイリスの2人からあのとんでもない話を聞いて、まだ30分くらいしか経ってないのに、不思議だな。


「何を言ってるの。」


 ユイは変わらず、冷たい感じ。でも、魔王の配下だって言うのも、わたしを殺そうとしてたのも、本心じゃないってわかって、少し怖い感じもなくかったかも。


「………勘違いしている。私はアカシックノートが示すならなんだってする。あのお方…いえ、あなたの前ではこの呼び方をする意味はないわね………魔王の命令なんてなくても、アカシックノートが『ルナを殺せ』と示すなら、私は従う。」


 前を向いて歩いたまま、こちらには一切視線を向けずに冷酷にそう言い切る。


「あ、怖い………」


 やっぱりダメ、怖い。


 ユイが他の世界で1度死んで、こっちで生き返った?なんてびっくりしたけど、それより……自ら死を望む………つまり、それって自殺だよね………なんでそんなことを。


「それには答えられないわ。あなたみたいに何でもかんでも考え無しに喋ったりはしない。」


「よ、よまれてる………喋らなくて楽でいいね。」


「…………はぁ。」


 また呆れられちゃった。



―――――――――――――


「ねえねえ!」


 少し歩くと、やっぱり暇になってユイに声をかける。


「何かしら。」


「ユイがいた世界ってどんな世界!?全然違うって話だけど、どんな風だったの!?」


「……私の住んでいた場所の場合、国の中心や、それに準ずる都市は特に発展していた。何十階もの高さがある建物や、高速で移動することが出来る、電気やガスなどの様々なエネルギーで動く乗り物。他にも離れたところにいる人と実際に会ってるように話ができるものがあったり、剣や魔法なんて目じゃないくらいの武器も沢山あったわ。………そう、沢山ある。」


「凄っ!じゃあどんなモンスターが出ても平気!?」


「そんなものはいないわよ。私の世界の武器は、人間が人間と戦うために作り出したものばかり。そして互いにあまりにも強大な力を持ちすぎたため、ある種の結末を迎えたのかもしれないわ。」


「????????」


 うーん、どうしてもっとわかりやすく言ってくれないんだろう。


「楽しい世界じゃなかったの?」


 歩く足はとめず、続けて聞いてみる。


「楽しい………どうかしらね。そう感じる人は多かったんじゃないかしら。でも、その楽しさは時に何かを壊す、何かを犠牲にする、そんなこともある。私はどちら側の人間だったのかしらね。もしかしたら私のこの瞳は………」


「?????」


「私もそれが正しかったかどうかはわからない。でも、自ら死を望んだ事は正解だったと思っている。あんな世界、1秒でも身を起きたくはなかった。死んで、全てをおわらせたかった。…………なのに。」


「わけわかんない!いいじゃん別に。」


「なに?」


「難しいことわたしにいってもわかんないって知ってるのにわざと言ってる?でも、いいよ。何があったのかは全然わからないけど、ユイが多分元いた世界がそんなに好きじゃなくて、良くないことがあったっていうのはわたしでもなんとくわかった!でも、それはもういいじゃん。ここは別の世界なんだし、聞いた感じだとまったく違うんでしょ?なら、きっとユイにとって楽しいこととか好きなこともあると思うし!」


「………まったく、あなたは単純でそこ抜けにあほね。」


 ユイは前を向いたまま、そう言う。でも、その声は少し嬉しそう。


「あほ…………」


「でも、そうね。あの世界で私を拒んだものはこちらには全く存在していない。それに、私のはこのアカシックノートもある。私は変わらず死を望むけど、それまでの時間は少しくらい前向きにいてあげてもいいわ。もちろん、アカシックノートがそれを阻むのなら、私もそれに従うし、あなたを殺せと言われれば躊躇いはない。……………でも、感謝するわ……ルナ。」


 そして振り向いたユイは、初めて笑顔を見せてくれた。瞳は怖いし、明らかになれてなさそうなぎこち無い顔だけど、こっちまで笑顔になっちゃう。ちょっと気になること言ってたけど気にしない気にしない。



「やったあ!ね、アカシックノートには何が書いてない?このまま蒼海の入江を目指すので平気なの?」


「そうね………いや…………何かしらこれ…………」


 笑顔が一転、ユイはまたすぐにいつもの表情になり、本を凝視する。………いや、普段よりも怖いかも。なに?


「反転世界の王………どうやら、彼女が私達に対してなにか仕掛けて来るようね。でも、肝心なことが書かれていない………これだから信頼できないのよあの女神。」


「反転世界の王………四天王だっけ?どんな人なの?」


「あなたも1度会ったことあるはず。彼女はあなたよ。」


「ん…………???」


 反転世界の王がわたし……………あ!


「夢だと思ってたけど…………違ったんだ。」


「そうね。どんな手段であなたの意識に介入にしたかは知らないけれど。」


「あの子………確かに、完全にわたしだった。声も顔も、全部。何者なの?」


「あれは魔王が魔界の鏡を触媒に作り出した『反転世界』の存在。反転世界はこの世界を元に作られていて、こちらに存在する人間は、その性質を裏返して存在している。つまり、あちらの世界でのあなたは完全に、邪魔できるものが居ないくらいまで力をつけていたということは………」


「言わないくていいよ!!」


「彼女は強い忠誠心を持っていて、自らを作り出した魔王にすぐに従った。もともと魔王もそのつもりで反転世界を作ったみたいだし、それは計画のうちね。彼女だけは自由に二人の世界を行き来でき、普段は反転世界で独裁者として振舞っている。気に入らないものはすぐに殺す……そうやって生きている。」


「そんな子と戦うのかな……」


「そうね。どんな手段で仕掛けてくるかは全く分からないけど、警戒して。アカシックノートが示してくれればいいんだけど、それもまだ分からない。」


 そこまで言うと、ユイはまた黙って歩き出す。わたしもさすがになにか聞く気にはなれず、黙って着いていく。…………わたし自身の反転した存在と戦うなんて、そんなことになるとは…

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