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或る少女の軌跡

「だ、大丈夫!?」


 倒れてる人に駆け寄り、声をかけてみる。どうやら女の人で、多分大人……かな?植物のツルのようなものがデザインされた、青色の珍しいドレスを着ている。髪の毛も綺麗な青で、街の中とかにいたら特に目立ちそうな感じかな。

 それしても、こんななんでもない山間の道に1人で倒れてるなんて、一体何が……。心配すぎるよ!


「ダメ。」


 でも、その人に触れようとしたところで、ユイが静止してきた。


「何が?」


「下手に触れてはダメ。倒れていたり意識を失っている人間に外部から無駄な衝撃を与えるとそれが致命的になることもある。………つまり、人殺しになりたくなければ、軽く触れて声をかける程度にしておくべきということ。覚えておくといいわ。」


「そ、そうなんだ………知らなかった…。ありがと。」


 そういう所はちゃんとしてるなぁ………と思った矢先、


「でも、どうでもいいわ。放置して行きましょう。起こす必要も無い。時間を無駄にしたくはない。」


 それだけ言い、わたしと倒れている女の人を置いていこうとした。えぇ……。


「いやいや!さすがに無理!無視できないよ!」


「………アカシックノートが示す未来は私にとって最悪。彼女の意識が戻ったら………」


 と、まさにその時。倒れていた人は意識を取り戻したようで、ゆっくりと起き上がった。それを見て、ユイはさらに距離をとる。どうしたんだろ?



 体を起こし立ち上がると、その長くて綺麗な青色の髪の毛がふわりと踊り、とても綺麗。立ち上がったことで少し背が高いことにも気がついた。


「あらら………わたし………なにしてたのかしらぁ。んー…」


 まるで昼寝から起きたかのような感覚で、女の人はゆっくりとそう呟く。大人の人なのに、まるで女の子みたいな振る舞いで、不思議な感じ。


「あ、大丈夫ですか………?」


「ん〜……?」


 声をかけてみても、目も半開きでまだ何かぼーっとした感じで、当たりをキョロキョロとしている。でも、離れたところにいるユイを見つけた途端、元気になり駆け寄っていき、嬉しそうに言う。


「ユイちゃん!よかった、やっと会えたわぁ!嬉しいわぁ!」


「………………はぁ。どうしてあなたがここにいるの。何が目的。アカシックノートは問題なく作用して、私自身も特に問題は無い。意味を感じられないわ。」


「違うのよ、違うの。ただ会いたかっただけよ〜。たまにはいいでしょう?」


 なんだろう………知り合いかな?それにしてはユイは嫌そうだけど。


「意味不明。」


「そんな事言わないでほしいわ、だってユイちゃんがそうしていられるのはわたしの………」


「それはわかっている。でも、元はと言えば私は何も望んではいなかった。これで終わり、後のことは知らない……そう思っていたのに、いざそうなってみたらあなたがいて、アカシックノートがあって、ここに至った。恩を売るような言い方は納得ができない。」


「うー……」


「私に会うためにわざわざあそこで倒れて待つなんてルナと同等のアホね。私は特にあなたに用はないし、余計なことをしゃべられては困る。」


 随分と嫌ってる感じ…………。


「ね、ねえ……?」


 何となく見てられず、二人の間にはいる。


「何かしら。」


「だぁれ?」


「あ、ルナって名前です。ユイと旅している感じです。………それはいいとして。何があったか知らないけど、あんまり言っちゃ可哀想だよ!別にこの人に悪気なんてないだろうし、せっかくわざわざ会いに来てくれたってことは、ユイのことが気になるとか、大切だからでしょ?………多分。ね?」


「………めんどくさい。あなた、ある意味地雷踏んだわよ。」


 アカシックノートをみて、ユイはそう呟いた。はて、なんの事?


「ルナちゃん……ルナちゃん!とっても優しいのね………わたし嬉しいわ………!」


「うわっ!」


 いきなり抱きつかれた。意外と勢いがあって、少しよろめく。


「ユイちゃんから庇ってくれたのよね……なんていい子なのかしら……なんて優しいの………まるで聖母みたい…………あ、そうだわ。せっかくだから『ママ』って呼んでもいいかしら?」


「うわキツイ!やだ!!」


 勢いでそのまま女の人を突き飛ばし、距離をとる。


「そういう厳しいところもやっぱりママって感じよね……甘いだけじゃなくて……」


 何故か女の人は嬉しそうにする。


「ヤダヤダ!何この人!?なんで年上の知らない女の人からママって言われてるのわたし!?キツイ!!ていうか誰なの!?」


 ユイなら知ってると思い、ユイに問いかける……けど、その答えは。


「知っている。でも言えない。これは根本を覆す。あなたがそれを知ってしまえばあなたの世界は秩序を保てなく可能性すらある。これはアカシックノートの力でもなく、私自身からの忠告。」


 その言葉どおり、本には一際目を落とさずに、真っ直ぐこちらを見すえてそう言う。その瞳は相変わらず………。


「んー………そうかしらぁ。わたしとしては言ってしまった方が楽しいけど………。アストラルからの啓示もそれを感じさせるものになっているわ。」


 なになに、知らない言葉どんどん使わないで。アストラル?なにそれ。食べ物?


「……安心して。いまの『アストラル』は特に意味は無いわ。彼女はそうやって、意味もなく変な言葉を使いたがるだけ。…………ちなみに、『アストラル』は……いや、そんな話はどうでもいいわ。」


「適当なのバレちゃったわね。まあ………教えちゃおうかしら。わたしとユイちゃんの……秘密♡♡♡……ふふ、ママにだけ特別よ。」


 ウインクをしてカワイイ風で言う。


「やめてそれ!気持ち悪いから!」


「それじゃあ……えいっ!」


「なっ……!やめなさい………それは………!」


 女の人が何かをするのをみて、ユイは初めて感情を感じさせる声を上げ、それを阻止しようとした。けど、それは叶わず、わたしもユイも、その場で意識を失ってしまった。


―――――――――――――――――――


―――――――――――


――――――


―――





そして




「……え、今のホント?」


 再び意識を取り戻した時、たくさんの情報が頭の中に流れてきていた。ユイとこの……『イリス』っていう名前らしい、この女性の事。


「認めたくないかもしれないけど、本当。どうかしら、こんなバカげた話。」


 ユイは特に態度を変えず、いつも通り本を見て喋る。もう諦めたって感じだ。


「………わかんない。」


「うふふ〜そうよねぇ。いきなりこんなこと言われても、ねえ。」


 と、自分で教えてきたくせにイリスは笑う。


「え、でもだとしたら………色々違くない?アカシックノートのこととか、ユイの立ち位置とか………そもそもの目的とか。」


「そうよ。だから言いたくなかった。これを知られてしまえば、少なくともあなたからみて私は今までとは全く別の存在に見えてしまう。幸い、この場にいないあの二人を欺くことはまだできるけれど。」


「でも、なんの意味が………」


「私は私の目的のためだけに生きる。本来無いはずのこの命、なんの偶然か、誰の気まぐれか……もう一度だけそれがあるなら、この世界における私のするべきことをするだけ。故に、結局のところあなたを利用することは変わらない。もちろん、拒否権はない。」


「ねえ、イリス……は!?いないし!」


 最もたる元凶のイリスに言いたいことがあったのに、気がついたらどこにもいない。なんなんだ………


「逃げたのかしら。まあ、どうせまた自分の都合のいい時に現れるわ。さて、私たちもそろそろ行かないと。」


 ………やっぱり真意がわからない。今のことを知ってもなお、ユイって人物の全体像が見えない。まあきっと、わたしなんかじゃ想像も出来ないようなことが、沢山あったんだろうなぁ。


 それに、だからといってなにか変わるわけじゃないし、むしろ良かった。()()()()()()()()()()。安心して、2人でとりあえずの目的に『蒼海の入江』を目指せる!



「でも」


 山間の道を歩き出し、少しするとユイが自分から口を開いた。


「ん」


「やっぱりあなたのことはわからない。アカシックノートが示すか示さないか……そういう次元ではない。どんなことが起きても、それが常軌を逸してきても、受け入れる。」


「うーん……そんな風に言われてもよく分かんないけど………何でもかんでも疑ってたらつまんない!それだけ!」


「………詐欺くらいは疑う事ね。」


 ユイは鋭く睨みつけて、ボソリと言う。


「…それは気をつける。」


 と、またユイは黙ってしまったし、まだまだ道は長そうだから、もう一度、さっきのことを頭の中で考えてみようかな。


 たしかに、よく良く考えればそれがそうだったとするなら、いくつか納得出来ることもあるし。特にあの理解できない服装!それに関しては多分、理解出来た。

省いた部分は次のお話からやります

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