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回想

 自分が居なくてもパーティが成り立っている……それを見て、近くの町に帰るまでの間、わたしは今までの事を思い出しながら歩いていた……。


―――――――――――


「勇者?」


 あの日、田舎でなんにもない村に、シオンが訪れできたことでわたしの人生は動き出した。


 村の噂で、勇者が来てるって聞いて、探していた。


「勇者って……あの?」


 田舎のわたしでも知っていた。勇者っていうのは世界を支配しようとしている魔王を倒す、すごい人だって。魔王が世界に現れてからというもの、少しづつ、でも確実に世界は闇が広がり、魔物も増えている。このままじゃだめ……でも、普通の人には何も出来ない。


「勇者……もしホントにいるなら…」


 わたしは別に何も不自由なく暮らしているけど、できるものなら世界を旅したいと思っていた。だから、村に来ているというシオンを探していた。わたしの回復魔法があれば勇者を支えられる、そう思って。


「勇者……っうわ!あ、ごめんなさい……」


 そんなんで、周りがちゃんと見えてなかったわたしは、人とぶつかって……でも、それが。


「ん、ああ……別に気にすんな。」


 その顔を見て、すぐに感じた。この人だって!


「勇者!」


「お、おう……そうだけど……なんか用か?」


「わたしも一緒に旅したい!!」


――――――――――


 まだ他の仲間もいなかったこともあり、何とか無理やり仲間にしてもらい、わたしは旅に出た。知らないことがたくさんの広い世界で、色々なことを経験した。


「なあルナ…」


「ん。なに?」


「お前さ……その歳まで何してたんだ?」


「何って……村の子達と遊んでたよ。わたしは村で1番お姉さんだから!」


「はぁ……まあいいや……。明日までに次の街着くように歩けよ。」


「えー!疲れる!」


――――――――


 なんだかんだと言いながら、旅を続けてしばらくだった頃。とある依頼で、『サンダーバード』という魔物を退治しようとした時のこと。


「ルナ、お前自分の役割わかってんのか!?」


 後ろでウロウロしてると、不意にシオンが叫ぶ。


「回復でしょ!」


「わかってんならさっさとしろよ!サンダーバードは今の俺一人で斬り続けても勝てる相手じゃないんだよ!勇者の剣があればまだしも、今は……!」


「いや、してるけど……?」


「え?」


「え?………し、シオン!まえ、前!!」


 わたしの方を一瞬振り向いたシオン。その隙に、サンダーバードは巨大な翼で羽ばたき、一筋の閃光をシオンに向けてはなった。


「……っ!」


「危ないっ!!」


 シオンにあたるその瞬間、その前に誰かが現れ、盾でそれを受け止めた。


「大丈夫ですか!?」


 白銀の鎧を着て、黄金の盾を構えた、その誰か……ルルちゃんは、こちらを振り向き……シオンに合図をする。


「……誰だか知らないが、助かった!よし、一気に攻めるぜ!」


「はい!協力しますよ!」


 そして、2人は一瞬でサンダーバードを倒した。これがルルちゃんとの出会いだったなぁ。


 ――――――――――――


「ルルちゃんはどうしてあんな所にいたの?」


 3人で旅をするようになって、そういえば……と思い、きいてみたことがあった。


「私は、サンダーバードを元々追いかけていたんです。あの個体は特に凶暴で、何とかしないといけないと思っていたんです。」


「ほーん……じゃあ偶然俺たちがいたってだけで、もし居なかったら1人で倒せてたのか?」


「どうでしょうか……私は護りの方が得意なので、1人ではちょっと厳しかったかもしれないません……」


 たしかに、ルルちゃんは立派な盾と鎧を装備している。レイピアもあるけど、剣と比べると威力は落ちる。


「護り…か。ってことはお前、騎士なのか?」


「はい!わたしは聖騎士パラディンナイトです!故郷の街で1番のパラディンだって、みんなから言われてました!」


「へぇ〜!わたしより年下なのに凄い!しかも女の子なのに!」


「パラディンナイトには性別も年齢も関係ありません。強い者が弱いものを護る。それが掟です。そして、その中でもいちばん強いものは、『世界を守る』使命があります。」


「世界を………か。」


「はい!なので、世界を救う勇者様を守ること、それがすなわち『世界を守ること』に繋がるわけです!なので、頑張ります!」



「うん!よろしくね!わたしは回復専門だよ!」


「なるほど……ルナさんは回復魔法が得意なんですね。」


「そそ、任せてね!」


「どの口が言うんだよ……」


――――――――――――


 そして旅を続け、たどり着いたのがわたしが住んでいた村よりさらに田舎……というかもはや、谷。谷の下にあった集落。そこで出会ったのが……


「あっ!!勇者シオン!?」


 集落について直ぐに、青い羽衣を身につけたポニーテールの少女に声をかけられた。それがメルリア。


「おい……なんで俺の事知ってんだ?」


「知ってるよ!生まれた時からずっと!私はそういう運命!だからこれからよろしくね!」


「か、変わった人ですね……?」


「何者……?」


「私は賢者!ずぅっと昔の大賢者の生まれ変わり!だから、勇者と共に魔王を倒すの!そう決まってる!」


「お、おう……?」


 その集落で詳しく話を聞いたところ、まあとりあえずそう言う伝承が残ってるとの事。

 伝承によると、かつて存在していたという大賢者は、『未来視』の力があり、後世で魔王が世界を支配しようとすることを知った。そして、それに備えて自らの力を未来に託し、その命を絶った……。それが時を超えて、『メルリア』としてこの世に誕生した。

 そうなれば拒否する訳にもいかず、一緒に旅をすることにした。成り行きでの仲間だったけど、メルリアの魔法『スーパーノヴァ』初めて見た時はめちゃくちゃ驚いたよ。


―――――――――――――――――


「いけぇ!スーパーノヴァ!!」


 記憶にある中でも特に凄かったのは、冗談じゃなく、小さい山を吹き飛ばした時。


「えっぐいな……お前の魔法。 」


「さ、流石の私もこれは受けられませんよ……」


「メルリアすごい!」


 どうしても通過しなきゃ行けないって場所に、『影毒虫』っていう恐ろしい虫が繁殖していた時があった。その虫は、影みたいにこっそり忍び寄ってきて、体に着いている小さな針を人間に差し込む。すると、そこから毒が入り、早いと1時間もしないで死んでしまうこともある。勇者もパラディンも関係ない。


 だから、メルリアが思いきって山ごとぶっ壊した。後々聞いた話だと、その虫はその山でだけ大繁殖するらしい、近隣の人も助かったらしい。


――――――――――――


「いつの間にか仲間も増えたな。俺は勇者だからいいとして……賢者にパラディン……となるともう1人くらい剣使う奴がいてもいいよなぁ。」


「ですね。バランスが良くなります。」


「私も賛成!」


 ………ん?今思い返すと、わたしこの時点で…………???




 そして、旅の途中で通りかかった霊山、そこで戦っていた狼みたいな魔物『フェンリル』。そいつと戦ってる時、アルト君と出会った。


「くっ……ただの犬みたいなくせに強いじゃねぇか……!」


「犬じゃなくて狼だよ!」


「そ、そんなことはどうでもいいですよ…!」


 わたしの前で、3人が1匹のオオカミに翻弄されている。フェンリルは素早く動き、キバと爪で激しく責めてくる。ルルちゃんがなんとか盾で受け止めるけど、いずれ限界が来そう。


「おい!ルナ!見てないで回復!」


「してるんだけどなぁ……」


「なんでお前の魔法範囲1人だけなんだよ!効率悪すぎんだろ!?」


「こ、このままじゃ護りきれませんよ……!」


「んー!動きが早すぎて魔法が当たんない!」


 と、その時。一瞬でフェンリルの体が真っ二つになり、そのまま吹き飛んで行った。


「……え?」


「災いをもたらす大いなる獣よ……我が獄炎の剣の錆となるがいい……。」


 アルト君。初めて見た時は危ない人かと思ったけど、全然そんなことはなかった。すごい強いし、剣も魔法も上手。




 そんなわけで、わたし達5人は一緒に旅をすることになった。

―――――――――


「ね、アルト君。」


 アルト君も馴染んできた頃、きいてみたことがある。


「なんだ?」


「アルト君さ、なんでそんな喋り方なの?変わってるって言われない?」


「……お前さぁ…」


「ふ、別に隠すことでもないから教えてやる。オレはこの剣に誓った。世界を闇にとざす邪悪な王に引導を渡すと。これはその誓の形だ。」


「………????」


「アルトさんって不思議な人ですね……」


「んー……ま、強いからいいよね!おっけぃ!」


「それにしても……ルナ。お前のその刀は一体なんのためにある?オレから見ればかなりの業物だが……それを振るう姿を1度も見たことがない。」


「あ、これ?これね、パパから貰ったの。わたし刀なんて振るったことないから使えないよ。でもかっこいいから持ってる!」


「…………ふん、好きにしろ。」


―――――――――――――


「……思い返すとたしかにわたし何もしてないじゃん…」


 悲しい事実に気がついた頃、ちょうど街にたどり着いた。


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