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伏線がスマートすぎない

「おぉ………」


「おまえさん達のおかげでうめえもんが作れたんだな。遠慮しないで食えよ。」


「凄いわね、これは………」


 ビッドさんが作ってくれた料理は思ってたより全然すごい。3つの食材はもちろんだけど、それ以外にも動物の肉とか、色んな野菜とか、川で取れるカニとかエビとか、色んなものがある。いいのかな、こんなに。


「…………」


 でも、アリスだけは何故かちょっとつまらなそうな顔をしている。


「あれ、どうしたの?」


 テーブルに並べられた料理を眺めて、アリスは呟く。


「アリスは甲殻類と葉っぱのお野菜が食べられません……」


「ああ……そうだったわね。アレルギー多いと大変よね。」


 へぇ………知らなかったなぁ。だからスティアが作ってくれたアレにはそういうものが入ってなかったのかな。


「それは知らなかった、すまんすまん。まあ、食べられ物だけでも食べて欲しいんだな。」


「はい!いただきます!」


 早速わたしも食べてみると、見た目と匂いで想像出来ていたとはいえ、やっぱりめちゃくちゃ美味しい。魚の切り身は少し焦げるくらいに焼いてあるけど、これが逆に香ばしくてかけてある少ししょっぱいソースとよく合う。直ぐに全部食べちゃう。


「やっぱり、こういうちゃんとした料理がいいわよね。錬金術で誤魔化して作ってやつとは違うわ。」


「たしかに、そうかも。」


 あっちを食べた時は本物と大差ない!と思ったけど、普通の料理を食べて改めて考えると、言葉じゃ上手く言えないけどなんか違う。


――――――――――――――――


 ご飯も食べ終わり、3人で少し適当な話しをして、明日に備えて早めに寝ることにした。ビッドさんの話だと、あの虫たちは今夜のうちにはいなくなるってことだし、今日あんまり歩けなかった分、明日の朝早く出て歩こうってこと。


 ベッドに入ると、すぐに寝てしまってたみたい。やっぱり寝ぶくろとかよりベッドの方が何倍も寝やすい。………けど


「まだ夜……だ。」


 ふと目が覚めて、しかもそれがかなりハッキリとした目覚めだったからてっきり朝かと思ったけど、まだ真っ暗。開ける気配もない。


「うーん………こういう時に限って目が覚める………」


 普段は朝起きるの大変なこと多いのに………


「…………?」


 わたし達以外誰もいなくて、静かなよる。………なのに、外でなにか音がする。よく耳を澄ますと、歩くような音で、一定の周期でわたしの今いる場所の壁のすぐ向こう側の外を歩いている音がする。…………建物の周りをぐるぐる回ってる?


「誰………」


 当然、アリスとスティアは寝ているし、ビッドさんも寝てると思う。じゃあ他の旅人?………いや、だとしたらドアを叩くよね普通。こんな意味の無いことしない。動物やモンスター………も無い。足音的に2本の足で歩いてるし、そもそもモンスターとかだったらうめき声がするはず。


「なんだろ………」


 月明かりの光しかない暗い部屋。考えれば考えるほど怖くなる。寝てしまえばいい……んだけど、こういう時に限って寝れない。…………すごい気になる。


「よし………」


 こうなったら、この目でみてやる!!


 こっそり、音を立てないように玄関のドアの前に向かう。変に音を立てると怪しいし。


「……………あれ」


 けど、わたしがドアの前に立った瞬間、その足音もドアの前で止まった。()()()()()()()()()()()()()()()()()


「………」


 

 てことは、今ドアの前に誰かいる訳………だよね。え、どうする………。


「………よしっ!」


 ここで悩めば悩むほど、気持ちが後ろに引いちゃう!だったら勢いで一気に開ける!


「…………ぁ」


 ドアを開けると、そこに立っていたのは。


「『スティアの話に出てきた本の女の子』………正解。より正確に言うなら『万物流転の観測者』。」


「…………」


 とりあえず、後ろ手でドアだけ閉める。スティアたちに気が付かれたくない。


「……………『もう出てくるんだ』…………どういうことかしら。」


 スティアから聞いたとおり、抑揚のない、感情を感じない声で喋ってる。


「いやさ、今日のお昼頃にスティアから話聞いて、その日の夜にって早いなって思って。もっとあとまで引っ張るかと思った。」


「意味不明。アカシックノートは示した。『裏切り者が私のことを話す』と。」


「なるほど………だからわざわざ来たんだね。」


 えっと………どうしよう。いきなり戦うなんて無理だけど。


「そのつもりじゃない。」


「え?」


「今はあなたたちと刃を交えるつもりはない。………あ、2歩前に出て。」


「?」


 言われたとおりに少し前に出ると、その瞬間屋根の一部が崩れ、その場に落ちてきた。そのままいたら頭に直撃してた。


「ひえ……」


 驚くわたしに、少女はほんから顔をあげて言う。………たしかにその瞳は常軌を逸している。怖い。


「アカシックノートがある以上、私には全て見えている。今後はあなた達のことを監視することも容易。忠告。これでもまだ神器を探すなら………」


「わかってるよ!でも探すから!それがわたしの……わたし達のすることだし!それしか出来ないし!」


 そしてまた、彼女は本に目を落とす。


「愚か者……何も見えていないものはこうも愚か。『ところで、万物流転ってどういう意味?』…………バカ。」


「いやー………知らない言葉だなぁってずっと思ってて……」


 これ恥ずかしいね!?


「よく覚えておくこと。『破滅の錬金術師』はもう居ない……けど、『反転世界の王』と『アルカナの支配者』はあなた達じゃ到底勝てない。とくに『アルカナの支配者』……人間としては最低ランクの価値のない男、でもあのお方から貰った力は最凶……。死ぬより恐ろしい目にあう覚悟をする事ね。………『変な服着てるなぁ』……あなた、人の話聞かないのね。アホ。」


「えー、でもさ。何その服?」


 スティアも言ってたけど、たしかにすごい妙な服装。スカートとか上着とか、まあそれ自体はおかしくないようにも見えるけど、全体的に凄いへん。言葉じゃ表せないし、まるで()()()()()()()みたいな服装してる。なぁにこれ。


「説明不要。………あえて言うなら私が私である最後の要素。」


「?」


「あなたは………わからない。アカシックノートもあなたの全てを示さない。理解できない。あなたは……なに?」


 『万物流転の観測者』は初めて本を閉じ、真っ直ぐこちらを見据えた。


「なにって……わたしはわたし、ルナはルナ……だけど。」


「完全無欠……アカシックノート………示さない未来………いや、違うわね。アホで馬鹿でマヌケ………それだけ。」


「ちょっと!?」


「忠告はしたわ。次はない。あなたを待つ未来……漆黒か、終焉か、破滅か……できるものから超えてみて。『反転世界の王』、『アルカナの支配者』、そして私『万物流転の観測者』を。」


 そして、わたしに背を向け、一瞬で消えた。


「あ………」


 後に残るのは、月明かりと、崩れてきた屋根の一部だけ。あの子がいた痕跡は全くない。


「いいなぁ……あの服可愛いし欲しい…………まあいいや。寝よ。」


 忠告だかとか監視とか言われても、今更だし。もうとっくに魔王に目つけられてるから怖くない!………うん、怖くないない。

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