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遠く広い遥かなるもの

 小屋に戻り、まずは取ってきたものをビッドさんに渡す。


「木の実にキノコに……おう、魚もこんなにだな。助かった!これならうまい飯が作れそうだ。」


 カウンターの少し奥まったとこ、そこにキッチンがあるみたいでビッドさんはそれをそこに置き、なにか準備を始めた。


「やった!」


「それなら、期待して待つわね。………ところで、あっちは………」


 ベッドがある奥の方を見ると、アリスが………怯えてなくて、誰か知らない男の人と話している。


「アリス、戻ったわよ。」


「あ、おかえりなさいです!」


「誰?」


 男の人はわたしより少し背が高くて、綺麗な白い髪をしている。服装は………なんだこれ??見たことない変な服きている。スーツみたいな服?なにこれ?派手な色で高そうなな宝石の装飾が着いている。


「あ、僕は………」


「その服装………凄いわね。それ、『世界統括団体』の関係者……それも、まあまあ上の方よね。」


「え!!お兄さんそうだったんですか!?」


 どうやらアリスは知らないで話していたらしい。


「………世界統括団体は知ってるけど、その職員……すごい人ってことでいいの?わたしよくわかんない。」


「はは、そんなにすごくないよ。」


 男の人は近くの椅子に座って軽く笑う。


「いやいや……謙遜なんでしょうけど、さすがに無理があるわよ。詳細はあたしもアリスも知らないけど、あれの職員になるのって相当すごい人ってことでしょ。なんてたって世界をまとめるのよ?そこらのバカや、自分を有能だと思ってるだけの権力者じゃ務まらないわ。」


「へぇ……それで、そんなすごい人がこんな所で何を?」


 すると、男の人の代わりにアリスが答える。


「アリスは今ちょうどお話聞かせてもらっていたところです。お兄さんはあの気持ち悪い虫…シェルビートルの調査に来たらしいです。」


「なるほど。」


 今度は男の人が答える。


「そう、君たちも聞いたんだよね、あの虫のことは。彼らはあのような巨体を持ちながら、産み落とす子供は異常に小さい。そして、その幼虫たちがいつどこでどのくらいの大きさになって、そして蛹になるのか、それともそもそも蛹なんていう過程はないのか、最終的にどうしてあんなに巨体になるのか……何もわからない。各国の有力な生物学者に協力金を出して調査の以来もしているけど、やっぱりこうして自分で見るのと大切だからね。」


「世界統括団体はそんなことまでしてるのね……」


 難しい話。


「まあね。わからないことや解き明かすべきことがあるなら放置は出来ないかな。結果的に、何が世界を良くすることに繋がるかもわからないしね。それに……こんな時代だ、できることは出来るうちにやらないと。」


 その言葉には、怒りのような感情がこめらていたように感じた。魔王……だよね。


「あの………もし失礼な質問だったらごめんなさい。でも、アリスはちょっと不思議に思います………。世界をまとめる団体なら、魔王になにか打つ手を考えていますよね?……勇者の手助けをしているとか、道具を探しているとか、全くそういう話を聞かなくて……。」


 アリスはベッドに腰掛け、恐る恐るきいた。わたし達もせっかくだし近くの椅子に座る。


「はは………痛いところをつかれたよ。……ここだけの話にしてね、実は………上の人たちは勇者の手助けなんてしてないし、する気もないようだよ。あくまでも統括団体の中だけで何とかしようとしている。………どうせ無理だろうけどね。」


 声を潜め、呆れたように薄く笑いを浮かべて言う。


「え、なんでですか………」


「さぁね、偉い人の考えることは僕にはわからないけど、どうせ『プライド』なんていうくだらないものだよ。自分たちでやらないと、世間からバカにされるとか……ね。ああ、でも……」


 そこでいったん区切り、さらに声を潜めていう。


「実は……『勇者が魔王を討伐したその後』を危惧している説もあるね。僕はそれについては分からなくもない。」


「え?」


「何よそれ?」


「変な話だけどね……。言うならば、魔王は『独裁者』だ。徐々にその力を広げ、力と恐怖で世界を支配しようとしている。それを倒す勇者……歴史に準えていうなら『革命家』だろうね。………さて、革命家が独裁者を討ち、世界を奪い返したあと……何が起きると考えられる?」


 男の人はわたし達に問いかけてくる。


「平和になる……」


「世界が統一される………?」


「………独裁者が生まれる……かしら。」


 スティアは意外なことをいう。けど


「……そう、その可能性も十分に有り得る。なにも勇者やその仲間を疑うわけじゃないからね。でも、魔王を倒す……それはつまり、過剰な力を持った個人レベルが世界を救い、トップになるようなもの。そうなったら世界統括団体といえども勇者ということには下手に逆らえないし、言いなりだ。もし、そこで勇者達が変な気を起こせば…………新たる独裁者だ。その可能性を完璧に潰すためにも、世界統括団体という大きな団体で魔王をなんとかしようとしている……とかかな。」


「ほえ〜……」


 そんな考え方もあるんだ……。まあ、シオン達に限ってそんなことはないだろうけど。


「っと、きみたちにこんなこと言っても仕方ないね……じゃ、僕はもう行くよ。シェルビートルの近くにテントをはって夜通し観察するつもりだ。」


「はい、頑張ってください!」


「うん、ありがとね」


 そして、男の人はいってしまった。


「ふーん……よくわかんないや。」


「そうかしら、一概に否定できないわ。………なんて、あたし達が考えてもしょうがないけど。」


「そうですね、頭のいい人の考えてることはアリスにはわかりません。それより、あんな虫の調査なんて意味分かりません…」


 そしてまた、アリスは怯え始めてしまった。



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