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その目に映るは

 朝。目が覚めると、アリスとスティアは特に変わらず、くっついたまま寝ていた。……まあ、平和ならそれでいいけど…。


「ん……ちょ、アリス……あんたほんとにずっとくっついたままだったの……?」


 ちょうど同じタイミングでスティアも起きる。仕方ないので、まだ寝ているアリスを剥がしてあげる。


「全く………この子いつもこんな感じよ。」


 スティアは面倒くさそうに言う。


「………いつも?いつもって分かるくらい一緒に寝てたの?」


「な、何言ってんの!?んなわけないでしょ!まったく、これだからバカは困るわよ………。」


「あ、そう。………お腹すいた。」


「マイペースね、ほんと…………。あたしが準備してあげるから待ってなさい。その間にアリス起こしてテント片付けておいてよね。」


「はぁい。」


―――――――――――――


「おはようございます……今日は曇り空です………アリスの心です………そのうち雨が降り出して豪雨になって洪水になって全部流れてなくなっちゃいます………」


 起きたアリスはいきなり(ある意味)絶好調。


「お、おはよ………」


 とりあえずアリスをテントから出して、片付ける。その間にアリスはアレをアレしたみたいで、すっかり元気になっている。


「ルナちゃん!スティアちゃん!おはようございます!今日も頑張りますよ!」


「はいはい、元気でいいわね。」


 あれ、なんか思ってたより態度冷たいね………昨日の勢いはどこへ…。


「はい、出来たわよ。カレー。」


「あ、朝からカレーですか!?」


「重くない?」


 お皿にはそこそこの量のルーとお米が乗っている。


「なによ、嫌なら食べなくていいわよ。あたしが食べるから。」


「……ねえアリス。」


 隣にいるアリスにこっそり聞く。


「はい?」


「スティアって………めちゃくちゃ食べるタイプ?」


「そうですね………ひくくらい食べます。」


 なのにあの体型………おかしい!ぜったいずるしてる!錬金術!?


「……聞こえてるわよ?」


「ごめーん。」


「い、いただきます!」


 食べてみると、美味しい。やっぱりビーフシチューと同じあのよくわかんない道具なのかな?ともかく、スティアが同行してくれるなら心配事も減るね。


――――――――――――――


「よし、じゃあ出発!」


 朝ごはんも食べ終わり、準備完了!


「南にある蒼海の入江に向かいます!スティアちゃん、頑張りましょう!」


「言われなくてもわかってるわよ。で、場所の検討は着いてるの?」


「そ、それがですね………」


「いやー、実はわたしもアリスも、そもそも南がどっちかもわからないんだよね〜。困った困った。」


 それを聞いたスティアは少し声振るえさせながら、なんか色んな感情を込めて言う。


「あんたたち……よくそんなんで行けると思ってたわね………。しょうがないわ、あたしに着いてきなさい。方角くらいわかるわよ。とにかく南に行って、街や村があったらそこで聞き込み、これでいいわよね?」


「賛成!」


「アリスもです!」


 あ、そうだ。せっかくだし………


「3人での協力の印にこれ、あげる!」


 2人の手にそれぞれのものを渡す。


「何よこれ?」


「これは……」


「金と銀と綺麗な折り紙!」


「いらないです……」


「はぁ………まあ、錬金術に使えなくもないかもしれないから一応貰っておくわ………。」


 うーん……なんか受けが悪いんだよねえ。なんでかな?


「じゃ、今度こそ出発よ。ちゃんと着いてきてよね。」








 曇空の下、しばらく平原を歩いていると林地帯になった。それ以外は特に変わったことも無い林を歩いていくと、開けた場所、それから少し大きめの小屋があった。


「人の家?」


「少し違うわ。あれはお店……みたいなもんよ。時間や天気によっては泊めてくれるのよ。あの看板、旅するなら覚えておきなさい。」


 確かに、小屋の入口の上には赤と青の綺麗な看板がある。どうやら、あの看板が着いている建物は色んな場所にあって、比較的低額で泊めてくれたりするらしい。たしかに、助かる。


「でも、まだそんなに歩いてないしお昼前です。どうします?」


「そうね、泊まる必要は無いけど、一応何かあってもいいように管理してる人に声かけておいた方がいいわ。」


「ん、わかった。」






「こんにちわー!!」


 少し軋むドアを開けて中に入ると、意外と綺麗。基本的にそこまで泊めることを前提としてないのか、部屋ごとに別れてなくて無造作にベッドが置いてあるだけ。………カウンターもあるけど、誰もいない。とは言っても広めの室内を見渡しても綺麗な装飾や壁のあかり、床のカーペットが目につくだけで、他の場所にも人はいない。


「あれ……留守ですか?」


「ま、そういうこともあるわよ。辺りで作業してることもあるでしょうし、少し待つ……」


 と、その時カウンターの奥……いや、した?から誰か出てきた。そして、カウンターに置いてある椅子に腰かけて言う。


「おやぁ?お客さんかい?」


「うわぁ!びっくりした!」


 出てきたのは普通のおじさん………なんだけど小さい。背が低いっていうか、こう………とにかく小さい。縮尺が小さい。どう見でもおじさんなのに、小さい。わたしの半分くらい。


「あれ、もしかして…」


「地人……かしら?」


「ああ、そうさ。オラは地人種、名前は『ビッド』。ここで店をやってるわけだな。」


 地人……初めて見たけど、こんな感じなんだ。


「あれ、地人って外でも平気なの?陽の光がダメとか……」


「ああ、大半のやつはそうだぞ。でもオラみたいに平気なやつもたまにいる。そんな奴はこうやって外に出て、原種さん相手に商売するわけだな。この方が儲かるし、街に帰った時家族が喜ぶ。」


 嬉しそうに話すビッドさんを見てると、やっぱり原種に対する嫌悪感なんてみじもなくかんじる。セーラ…………。


「で、なんだ?何の用だ?」


 ビッドさんは椅子からおり、わたしたちを見上げながら言う。


「用ってほどじゃないけど。一応見かけたから声かけようと思って。この辺は危険な場所とかないかしら?」


 なるほど、こういう人なら詳しいはずだもんね。


「そうだなぁ……この辺の林ももう少し行けばすぐ抜けられるし、そしたらまた草原。んでそれを少し進めば街があるはずだな。危険な箇所や生き物は………ない……はずだな………」


 ビッドさんは顎の髭を触りながら、スラスラと話す。


「そう……なら、行きましょうか。情報提供助かったわ。ほら、行くわよ。」


「ひ、引っ張らないでください〜」


 お礼も早々に、スティアはわたし達の手を引いて外に出ていく。最後、ビッドさんなにか言おうとしてたように見えたけど、聞こえなかった。なんだろ?







 そして、言われた通りに少し歩くと、林をぬけて直ぐにまた草原になった…けど。


「ん、何よこれ?」


「………建物…じゃないよね?遺跡?」


「遺跡なんてないと思いますけど……」


 林をぬけた先、その平原には妙な形をした巨大な………建造物?があった。それも同じようなものが複数。


 3分の1が欠けたような巨大なドーム状のシェルターみたいな形で、かけた部分から中に入って覗いてみると、地面は草原のままで、囲っている部分は変な素材。濃い緑色で、テカテカしている。


「変なの。」


「そうですね……アリスにもわかりません。まあアリスはカス探偵なのでわからなくて当然ですしそもそもわかったところで何も出来ませんし第一本当に探偵かも怪しいです。」


 アリスは首を上下して、色んな場所を見ている。


「ま、気にしてもしょうがないわ、さきにすす……」


 と、外に出ようとした時


「あ……あぁぁぁ!!!嫌です!!やです!!無理無理!無理です!!アリスは帰ります!!無理ですから!!!ダメなんです!!」


「…は?」


 なにかに気がついた?アリスはいきなり叫びながら走り出し、来た道を戻って行った。見たことないくらい早い。


「え、なに?」


「なんなのあの子……追いかけるわよ。」


 ほっとけないし、後を追って見ると、さっきのビッドさんの小屋の中にいた。端っこでしゃがみこんで震えている。


 中に入ると、まずビッドさんに声をかけられた。


「なんかあったか………ってまあ、あれだな。」


「心当たりあるのかしら?」


「ま、まずはあの子にきいてみるんだな。あの様子ならなにか気がついたんだろうな。」


「………?」


 やっぱり探偵だから何かに気がつく………なんて言っても、そもそも何に?何を発見したの?


「アリス……どうしたの?」


「あんたおかしいわよ、いきなり叫んだりして。」


 まだ震えているアリスは、ちいさなこえでしゃべりだす。


「アリスはおかしくありません……気がついていない2人がおかしいです………アリスは見てしまいました………」


「な、なにを……」


「さっきの欠けたシェルターのようなもの………あれの中に入って上を見上げた時……見えました………折りたたまれたような羽と、開閉が出来そうな構造………あれは………あの謎の物体は、『巨大な虫』です…………少し動いてましたし………」


「…………え」


 まさかの展開に固まる。


「んな馬鹿なことあるわけないでしょ………少しは落ち着きなさいよ。暗かったし、見間違えよ。」


「いいんや、あれは虫であってるぞ。地面を覆い尽くす巨大甲虫『シェルビートル』っていう種類の虫だな。」


 こっちに来ていたビッドさんが後ろから声をかけてきた。


「ひえー………」


 知ってるなら最初に教えてよ………


「知ってるなら聞かせてくれるかしら、その虫のこと。」


「シェルビートルは本来西の地域に生息してるんだな。でも、この時期だけは産卵のためにあそこに集まる。ああやって数日、長い時は数週間じっとしていて、シェルターみたいな内部に卵をうみおとす。で、その卵はわずか1日でかえる。用が済んだら子供を体の中にしまってまた西に飛び立つ………そういう習性の虫なんだな。面白いのは、産まれてくる子供は石っころくらいのサイズしかない事だな。一体いつの間に、どうやって大きくなるのか…分からないんわけだな。ま、しばらく前からいるから今日の夜中には産卵を終えて、明日にはきれいさっぱりいなくなるだろうな。」


 ビッドさんは丁寧に解説してくれるけど………そんな虫……き、気持ち悪い……。


 そういえば、さっきここに来た時、最後になにか言おうとしてたのはこれのことかな………ちゃんと聞かなかったし。


「アリス達もあのままあそこにいたらきっと産み落とされた卵と一緒にあの中にしまわれてたくさんの幼虫たちと共に空に連れていかれて幼虫たちと長い長い空の旅をしてきっとその間に幼虫たちの餌にされて身体中食い破られて死んじゃってました。それにあんな大きさの虫の羽ばたく姿なんて見たくも想像したくもないです気持ち悪いです。一体本体がどんな姿なのか足が何本あるのかどんな目をしてるのか羽を開いたらどれくらい大きいのか考えただけでも震えます。近くを歩いた時に何かの拍子で動き出すことを考えるともう何もできません。アリスはもう今日はここから動きませんお外には出ません。」


「あーアリス……ちょっと落ち着きなさい。わかったわよ、今日はもう終わり。ここでお世話になりましょう。ルナもいいでしょ?全然進んでないけど、あんな虫いたらあたしも近く通りたくないわ。いきなり気まぐれで羽ばたかれたら嫌だし。」


「賛成………さすがに怖い……」


 ということで、仕方なく今日はここまで。ビッドさんも、わたし達3人がここに泊まることは承知してくれたし、レヴィから貰ったお金とか宝石があるからそういう心配もない。



さて、まだまだ明るい時間だけどどうしよう?


むしきらい

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