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知識の壁

「あ!なんか明るいよ!」


 歩いていると、不意に前方が明るくなる。


「山頂かも知れません!」


 ここまでの疲れも吹き飛び、2人で走って登りきる。




「………わぁ。」


「……凄いです」


 さっきまでの登山道とはうって変わり、一気に視界が広がる。ほぼ360度見渡せる。


「わたし………こんな景色初めて。」


 低い山での景色で十分感動できたけど、これはレベルが違う。マナの山も高くないとはいえ、今までわたしが行ったことある中ではいちばん高い。


「遠くまで良く見えます!いい天気です!!」


「………うん!」


 昨日まで歩いていた、どこまでも続く平原も、これから歩くであろう低山も、遠くに微かに見える海も、うっすら見える遠くの高い山も、平原にポツポツと見える集落や村も………こんな景色、初めて!


「…………でも、」


「あれ、どうしました?」


「今こうやって見えてる世界も、ほんの一部なんだよね。さっきアリスに言われたとおり、わたし全然何も見えてないし、知らないや。」


「なるほど……それならアリスが教えてあげます!少し休みたいですし、あそこに座ってお話しましょう!」


 見てみると、少し古びた木のベンチが置いてあった。一応山頂ってことで………なのかな?


―――――――――――――


「それではそれでは、はじめますよ。」


 アリスは何故かレンズの着いていないメガネをして話し始める。


「ルナちゃん、どうして世界中どこに行っても同じお金が使えるか知ってますか?」


 そう言いながら、アリスは500ルピアの硬貨と5000ルピアの紙幣を取り出した。


「とくに、紙幣はただの紙です。どうしてこんなものが世界中どこに行っても数千から数万の価値になるんでしょうか?」


「え、なんで?便利だなぁとしか思ってなかったけど。」


「アリスは一応貴族『だった』ので、お金のことは嫌という程ききました。その割にはアリスにはお金くれませんでしたしアリスが貰ったのもはこの帽子くらいです。さて、どうして価値があるか……そんなのは単純ですよ、『価値を定めてくれる人』がいるからです。……アリスの価値を定めてくれる人はいませんけど。」


「価値を決める人……」


 わたしはシオンにないって言われたよ。


「はい、北の地域に聖地『ノーザンベル』と呼ばれる場所があります。かつての女神が降りたという迷信だか信仰だかがある場所です。そこに、『世界統括団体』の本部があります。知ってましたか?…………ああ、その顔は知りませんね。」


「い、田舎の出身だから……」


「いや、田舎とか関係ないですけど………。」

 

 じとーっとした目で睨まれる。


「知らなくても生きていけるから平気!!!」


「その村に一生住めばそうですけど、現にルナちゃんは今アリスと一緒に旅をしてるんです。知らないと困っちゃいます。」


「はぁい。」


 アリスはわざとらしくメガネをクイッとして続ける。


「世界統括団体は、その名の通り世界を統括……言い方を簡単にすれば、まとめる人達です。その人のおかげで言葉や文字、通貨はどこに行っても同じです。アリスみたいな子でも困りません。」


「すごいね、その人たち。」


「そうですねぇ、どうやってメンバーを選んでいるかは詳しくは知りませんが、貴族の中でも特に有能な人が引き抜かれるらしいです。アリスには関係の無い話です。あ、ちなみに統括しているのは原種だけです。他の種族は管轄外です。知りません。」


「ふーん……でも、世界中にたくさん国あるし、それをまとめて統一するなんてできるんだ。」


「何も知らないくせに鋭いとこ着きますね。」


 ……なんか言い方に刺ない?


「そうです、世界が今の形に至るまでは色々あったのです。歴史のお勉強はよくやらされました。魔法の方がやりたかったんですけど。」


 そこで一旦区切り、また続ける。


「長い戦乱の時代なども乗り越えて、ようやく今の形になったと聞きました。そのために、なんとか世界中の国の王族に話を通して、通貨などを共通にしたらしいです。二度と愚かな争いをしないために。なので、世界統括団体が作ったという印の入っている紙幣はただの紙にならず、価値のあるものとして世界中で使えるわけです。価値のあるもの………価値のあるもの…………」


「ほぇ〜……」


「…………大きな戦争が起きないのも、色々な宗教があっても揉めないのも、彼らの活躍らしいです。詳しくは知りませんけど。アリス『達』と違って有能な人達なんです。」


 わたしもいま含まれた?


「あとはそうですね………」


「宗教は?わたしそれも全然知らない。」


「宗教の話はダメですよ。荒れるので。」


「?」


「?」


 なんのはなし?


「まあとにかく、色々あるんです。まあ宗教関連でいえば……そうですね、主に西の地域で『終焉の女神』を崇めている人達は少し気になります。聖地があるくらいですので、女神という存在は信仰に置いては、始まりや希望、生命の源……などと言われます。それなのに終焉とは………聞いたことがない………と言うより、恐らくどこの伝承にもそ存在しないもの崇めているのは不思議です」


「ふーん………そもそもわたしは女神の信仰がなんだかわかんないけど。」


「ありゃ、それも知りませんですか。」


 アリスはもはやすこし呆れたような感じで言う。知らないものは知らないししょうがないよ。


「女神は今言った通り、主に『はじまり』を意味します。世界でいちばん広く信仰されている宗教………と言っても間違いでは無いかもしれません………と、あんまり長く休んでいても良くないので、そろそろ行きましょうか。続きは歩きながらお話します。下りなら息切れもそんなにしないので喋りやすいです。」


 アリスは元気よく立ち上がり、歩いていった。


 アリス、追い出されたとは言ってもさすがは貴族……知識だけはちゃんとあるんだ。


「待ってよ!置いてかないで〜!」


 意外とあるくスピードが早く、置いていかれそうになり慌ててアリスを追いかけてわたしも歩き出す。

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