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めい探偵アリス・アイリーン!

「…調査って結局なにするの?」


 許可を得て(?)中に入れてもらい、アリスにきく。


「なんでも構いませんよ!少しでもヒントになりそうなもの、怪しいもの、真実への証拠プルーフ……探しましょう!」


「う、うん………」


 探せるかなぁ………。


「そもそも、調査して答えがわかったとして、どうするの?誰かの依頼なの?」


「違います!そんなことは関係ありません!謎があったら解き明かす……探偵ですから!」


「そ、そっか……。」


―――――――――――


「ん……ねえ!アリス!コレ見てよ!」


 最初はめんどくさいと思ったけど、やってたら楽しくてつい夢中になっていた。村の子供たちと遊んでたこと思い出すなぁ。だからなにか見つけたら、つい叫んでしまう。


「どうしましたか?」


「これ………不自然じゃない?」


 わたしが見つけたのは、極わずかな一部分、草が禿げている箇所。別にそれ自体はおかしくないけど、そこから露出している地面がなにか違和感がある。


「そうですね………ここの地理でいえば草の下は柔らかい土のはず………」


 アリスはその場に座って地面を触りながらルーペを覗き込んでいる。


「でもここ、硬い……岩?みたいなものだよね。」


 わたしも隣に座り、一緒に眺める。


「うーん、不思議ですねぇ。」


「ね、不思議。」


 …………わたしもアリスも、『不思議』は見つけたけどそこから先の答えにいけない。意味ないじゃん……。


「しかしきっとこれは証拠に……」


 と、アリスが言いかけた時。


「わっ!なに!?」


「じ、地震ですか!?」


 わたし達が座っていた場所が激しく揺れだした。でも妙な揺れ。縦にも横に揺れて、時々震える。


「……地面が隆起してますよ!!」


 確かに言われてみると、今いる場所は周りより少し高くなっている。………あ、違う。


「アリス!違うよ!ほら見て!凄い!これ凄い!!」


「あ!そういう事だったんですね!謎は解けましたよ!」


 わたし達がたっていた場所は、地面なんかじゃなかった。めちゃくちゃ大きい亀の甲羅の上。きっと途方もないくらい長生きで、背中に草が生えちゃったんだろうね。アリスが昨日見た穴はこの亀さんの家。ここで寝てるんだ。ピッタリハマる穴だから、一日で穴が無くなったように見えたんだ!


「……どうやって降りる?」


 結構な高さだよコレ。


「アリスの手を掴んでください!」


「え、うん。」


 きっと何かさくがあるはず……そう思い、アリスの右腕にしがみつく。



「行きますよ〜!!えいっ!」


「飛び降りるだけ!?」


――――――――――――――


「な、なんとかなるもんだね。」


「そうですね〜」


 2人で飛び降りたら、ちょうど草が多めの場所に着地して、痛くなかった。そのまま2人で倒れてたら、亀さんはゆっくり歩いてどこかに行ってしまった。………その後には、大きな穴だけが残されていた。


「大きな穴は亀さんのお家………これが答えでした!」


「あんな大きい亀さんいるんだ……やっぱり、わたしの知らないことばっかりだなぁ………」


「あ!そういえば!」


 アリスは飛び跳ねるように立ち上がる。


「なに?」


 わたしも体を起こし、アリスの方を見る。


「ルナちゃんが言ってた『ディープ・アクア』……聞いたことあります!」


「え!?」


 なんで知ってるんだろ………やっぱり貴族って特別なのかな。


「ディープ・アクアは南のどこかにあるという神秘の入江…『蒼海の入江』から行けるらしいです!もし目的地が明確でないのはらそこをめざしたらどうでしょうか?」


「蒼海の入江……うん、そうするよ!じゃあ目指すはとりあえず南!じゃあねアリス!」


 旅の楽しみは出会いでもあるし、いい出会いだったね。きっとこの先も色んな人に……


「ちょっと待ってくださいよ。アリスも一緒に行きますよ?」


「え、いいの?」


「はい!アリスもフラフラとしていただけなので、目的がある人と一緒に旅がしたいです!」


 腕を握って、アリスは笑顔で言う。


「そっか!わたしも嬉しい!ひとりじゃつまんないもんね!」


「ありがとうございます!……ん。」


「……ちょっ……」


 アリスはわたしが何か言う前に、ほっぺたにキスをしてきた。……え?え?なんで?


「……あれ、どうかしましたか?」


「ふぇ………なんで………」


「……あぁ!ご、ごめんなさい!今のは友好を示す証といいますか…その、北の地域の一部だけの文化でした!いきなりごめんなさい!」


「あ、うん……びっくりしちゃった。」


「それなら、代わりにこっちでちゅっとしましょうか。」


 アリスはポーチから注射器を取り出してわたしの腕に向ける。


「や、やめて……」


―――――――――――――――――


「ところで、アリスのその帽子ってなに?」


 南を目指す……なんて言っても、わたしどっちが南とかわからなかった。アリスもよくわかんないみたいだから、とりあえず適当に歩いて、村でも街でも探すことにした。その道中、最初からきになっていたことをきいてみた。


「これですか?これは昔本で読んだ架空の探偵が被っていた帽子です。おうちを追い出される前、無理を言って作ってもらったんです。本当はパイプも欲しかったんですけど、さすがに怒られました。」


「へぇ……」


 横線と縦線が入っていて、独特な模様をしている。形だけ見れば、そんなに変な形じゃないけど……。


「本と言えば、ルナちゃんも本とか読んでましたか?」


「えーっと……」


 思い返しても、いつも外で遊んでた。勉強も何もしてないし。だってめんどくさい。


 その事を伝えると、アリスは何か違うところが引っかかったらしく、話を変えてきた。


「あれ……でもルナちゃんって魔法使えるって話でしたよね?」


「うん、回復魔法。弱いけど。それが何?」


「いや……弱い強いに関係なく、魔法って………勉強しないで使えるんですか?」


「???」


 質問の意味が全く分からない。


「ですから……『魔道方程式』を使わないと…」


「まどうほーてーしき??」


「え?」


「え?」


 え、なに?



「えっとですね………」


 歩きながら話すのは大変な内容らしく、アリスは立ち止まって地面に座って話し出した。


「魔法の使い方………基礎的な事なんですけど。」


「?」


「魔法の源は『魔力』です。この魔力は人の体の中を流れるのですが、個人差はありません。血液や細胞と同じで、みんなの体の中に同じようにあるんですよ、目に見えないだけです!そこにあるけどここにはないんです。」


「うん?」


「で、これを使って魔法を使うんですよ。アリスは魔法のおべんきょうしてないんで使えませんけど。」


「なるほど」


「例えば……数式みたいなものです……というか、数式ですね。まずはその式を覚えるところからなんです。簡単な魔法は簡単な式、難しい魔法は難しい式というだけです!」


「うんうん」


「属性によっても式は異なっていて、無数にあります。……それを覚えたら、それを頭の中で解けるようにしないといけませんよ!アリスには絶対無理なんです。」


「どうして?」


「複雑でぐちゃぐちゃな式を覚えて、それに色々な数字を代入します。その数値は極論、毎回事細かに違うんです。その時の気温、天気、場所、自分の健康状態、周りの環境……それらも、どういう時にどういう数字を入れるか、覚えてください。じゃないと魔法は無理なんですよ。それに、体力も使います。なので普通の人は体も鍛えておかないと、体持ちません。すぐ疲れて、使えなくなっちゃいます。」


 アリスは淡々と語る。きっと、お家にいた頃理屈だけは教えられてたんかな。


「そしてその式を頭の中で一瞬で解くことで、魔法が使えます。回復、攻撃、補助……沢山ありすぎて全部を使うなんて無理です。だから専門職があるんですよ。わかりますか?」


 ………じゃあ全部使えるメルリアってすごいね。天才だ。


「長く話すと疲れます……ちょっと失礼。」


 アリスはポーチからなにか丸いものを取り出して、それを口に入れて飲み込んだ。


「あ、もう平気です!」


 ………わからないなぁ。


「質問いい?」


「いいですよ!!」


「オリジナルの魔法って作れるの?」


「作れます!」


「ありがと!」


 じゃあメルリアのスーパーノヴァとかは多分オリジナルかな。やっぱり天才。


「で、話を戻しますが。」


「ごめんもうひとつ。」


「はい」


「魔術書ってなんなの?グリモワールは特殊だから置いておいて、それ以外の普通の魔術書。」


 すると、アリスはそんな初歩的なことを……って感じで答える。


「教科書みたいなものです。式や理論が書いてります。それ見てお勉強するんです。よくある勘違いですが、『魔術書を読んですぐに魔法は使えない』んですよ。」


 ………だから、手にするだけであらゆる魔法が使えるグリモワールは『至宝魔術書』なわけだね。納得。


「……つまり、なーんにもしらないルナちゃんもが弱いとはいえ魔法が使えるのは…不思議です。…その謎、解き明かしますよ!」


 ルナちゃんもはたちあがあり、ルーペでこちらを覗き込む。


「謎って……わたし本人がわからないからわかんないよ……。わたしはそんな式なんて考えないで、こう……えいっ!って感じで魔法使うし。」


「そうですね………例えば……ルナちゃんもは知ってますよね?種族のこと。」


 ここに来るまでの経緯を話した時についでに話した……けど、


「……あれ、アリスも知ってたの?」


「アイリーン家は………かつての迫害に関わっていたと聞いています。なので、アリスも種族のことは聞いたことがあります。」


 歴史が深いとそういうこともあるんだね。


「それで、種族……魔人種のことは知ってますか?」


「あ、それだけ詳しくは知らないんだよね。教えて?」


「魔人族は人間(原種)と魔物の混血です。ここで言う魔物は在来種のことですね。つまり、片方の親が原種、片方の親が魔物の人が魔人です。」


「人と魔物で子供って生まれるんだね……」


「はい、それがまた不思議です。一体どうやって生まれるのか、そもそもどうしてそんな全く違うもの同士で惹かれ合うものがいるのか………。なので、魔人だけは他の種族とちがい、特定の住処がなく、それぞれで暮らしています。世界中にいると思われますし、人と魔物が居る以上どの時代でも常に一定数は産まれるはずです。さらに、外見上には原種と違いはありません。なので、おそらく迫害もされなかった思われますが……これに関しては真実がわかりません。」


「なるほど〜……」



「魔人は、魔法の才能が優れているとききます。他にも、他の種族と共鳴して一時的に魔法の力が強くなることもあるとか。……だから、例えばルナちゃんが実は魔人とか!……なんちゃって〜」


「あはははは!!それはないって!」


「わかってますよ、だって両親は人間ですよね?」


「うん、まあママはちょっと鳥っぽくて背中に羽生えてるけど普通の人間だよ。」









「それ鳥人獣ハーピィですよ!?バリバリ在来種の魔物ですよ!?普通の人間じゃないですよ!」


 アリスは顔をがくっつきそうなくらい近づいてくる。


「え?」


「なんで背中に羽生えてる鳥っぽい人間を普通って認識してたんですか!?価値観壊れてません!?」


「いや別に……村のみんなも普通に接してたから………個性みたいもんかなって……」


「優しいんですねその村の皆さん!差別も偏見も無い素敵な村ですね!」


「じゃあパパは魔物と結婚してて、わたしは魔人種だったんだ……そっか……」


「あ、その……落ち込まないでください。きっと村の人達は……」


「やったぁ!わたしも混血だったんだ!ねえねえ!かっこいい?かっこいい?」


「か、かっこいいですよ!」





「………あれ?」


「今度はなんですか?」


 とりあえず2人で騒ぎ終わり、また歩き出す。それなら話を続ける。


「わたしがなーんにも勉強してなくても魔法使えるってことは……もしかしてちゃんと勉強したらメルリアくらいになれたのかな!?」


「どうでしょう………でも、きっと凄い魔法使いにはなってましたよ。追放されないくらいに。」


「じゃあ今からやろっかな……」


「残念ですけど、魔人種の成長は15歳で終わります。それから先はもう新たな力を手にすることはできません……。アリスは14歳ですけど、人間なので関係ないです。」


「そっか。じゃあいいや。」


「でも謎が解けてアリスも嬉しいです!ルナちゃんは魔人種……驚きました!」


「わたしも驚いたよ!」


 成長が止まるってなんのことだよ?最近背が伸びなかったのもそうなのかな?なんかよくわかんないけど、まあいいや!


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