旅路へ…
「着いてきてくれないの!?」
料理も食べ終わったところでレヴィに強めにきいてみる。
「ああ、元々ボクはスフィアの森の中にある里に行くまでの予定だった。森や平原はボクやキーヴル達の行動範囲でもある。その範囲内で君に死なれたら嫌だった……それだけ。」
冷たいなぁ……と思いつつも、それも当然だとも思う。だって別にほぼ初対面なわけだし、むしろずっと一緒に行こ!なんて都合よすぎかな…。
「ん………じゃあわたし1人で頑張るね。」
「………危険だと思ったら直ぐに引くことだ。それだけで命だけは守れるはずだよ。……それと、これ。」
レヴィは色んな宝石を取り出して、わたしの方に置いた。
「これは君にあげよう。君が持っているその不思議なポーチにならこれを入れても平気でしょ?」
「え!いいの!?」
ついつい大声を出した……けど、店内の騒がしさでそれほど目立たなかった。
「お金がなければ何も始まらない。ボクはこの後またあそこに戻ってキーヴル達とひっそりと暮らすつもりさ。だからお金や価値のあるものは要らない。」
レヴィは別にわたしに気を使ってるとかそういう感じじゃなく、本心で言ってる感じがする。
「それなら………ありがと!やったぁ!」
「くれぐれも使いすぎないように………と、それじゃあそろそろ宿に戻ろうか。遅くなりすぎても良くない。」
立ち上がり、支払うお金を用意しながらレヴィは言う。
「そだね、行こ。」
―――――――――――――
宿に戻ったら寝るまで、レヴィのお話しようと思ってたのに、直ぐに寝てしまった。(2人とも……)
で、次の日の朝。気持ちよく晴れた空と、少しだけある白い雲が綺麗!
「じゃあボクはここまでだね。」
村を出て少し歩いたところでレヴィが立ち止まる。
「うん………元気でね!」
「いい笑顔だね………うん、何も永遠にあわないわけじゃないし、君はその笑顔が良く似合う。」
レヴィも微笑んでくれた。
「………ところで、ルナはこれからどこを目指すつもり?道具の場所も、魔王のいる場所『マウント・ローゼン』の場所も何も知らないんでしょ?」
「うん!だから適当に旅する!そのうち見つかるよ!多分。」
「………最後まで君らしいね。それなら頑張って。応援はするよ。」
「うん!ありがと!またねー!」
「……また……か。」
わたしは前を向き、まだまだ広がる平原を歩き出した。
――――――――――――――――
「………………………?」
多分2時間くらいあるいた。でも、何も無い。景色はずっと同じ平原だし、何も見えてこない。広すぎない?そんなことある?疲れたよ。
「あー疲れた………あ!やば!忘れてた!!」
なんかいい感じで別れて旅立ったから完全に忘れてたけど、何も買い物してない!!食べ物ないまま来ちゃった!よりによって木もないし、川もないような平原だから食べられそうなものも探せない。…………草食べる?いや無理。
「うぇ〜……どうしよう……戻る訳にも行かないし……」
大体、戻るって言っても……もうどの方向にさっきの村があるかも分からない。進むしかない……と、ガックリしながら歩いていたその時。
「あ、ダメですダメです!ここは立ち入り禁止!キープアウト!ですよ!!」
「ほぇ?」
突然声をかけられて、変な声が出てしまう。
「ダメですー!」
グイッと手を引かれる。
「な、なに?」
「ここは調査中なんです!終わるまでは回り道をお願いします。」
「………?」
わたしの手を引き、進路を塞ごうとしていたのはわたしと同じか少し歳下くらいの女の子。
赤と薄い黄色の見たことないような変な帽子をかぶっていて、薄い黄色の長いストレートヘア。服は在り来りなものだけど、右腕に大きめで綺麗な宝石が着いてるリングをつけている。腰には少し大きいポーチがあるし、旅してるのかな?
「通っちゃダメなの?」
「はい!ここは現在アリスが調査してるので!」
「……アリス?」
「はい、アリス……『アリス・アイリーン』です!」
「アイリーン……聞いたことあるような……」
目の前にいる元気な女の子の名前の1部、『アイリーン』……なんだっけ。誰かの名前……かな。えっと………
「あ、そうだ……どっかの貴族の名前……!」
「えへへ、そうです。『アイリーン』は北の寒冷地帯に住む一族の名前です。アリスはそこの娘だったのですが…」
「過去形?」
アリスは帽子を脱いで照れくさそうに笑いながらこたえる。
「はい、アイリーン家は貴族でありながら、代々スパイや調査など………『探偵』を生業としていたんです。なので当然アリスもその訓練を受けたわけですけど……」
「うん………」
「運動は苦手で体術も出来ない、尾行は3秒でバレるし簡単なピッキング(鍵あけ)にも2時間かかるし、変装はガバガバだし、嘘をつくのも嘘を見極めるのも全然苦手で、全く何も出来ませんでした!だから追い出されてフラフラ歩いていたらいつの間にか東の地域のこんな場所!」
「あ!わたしと同じ波動を感じたよ今!」
「え、そうなんですか?」
「うん、教えてあげる。」
何も無い草原の中、知らない女の子にこんなこと話すとは思いもしなかったけど、多分仲良くなれそう。
―――――――――――――――
「…って訳。」
「いや、それはルナちゃんが180%悪いですよね。」
「え?」
「一緒にしないで下さいよ〜。アリスは好きでアイリーン家に産まれた訳じゃないのに対して、ルナちゃんは頼み込んで入れてもらったんですよね?じゃあ違いますよ〜!」
「あ、うん……そう。」
あれぇ〜???
「ま、まあいいや……それより、調査って何してたの?ここ見た感じ何も無いけど……?」
アリスが『調査』と言い張っている場所は何も無い、そこらの平原と何も変わらない。
「そうです、『何も無い』んですよ!!昨日ここを見たときは大きな穴が空いていたんです!!なのに、今日来た見たら綺麗にその穴が無くなってました!物理的におかしくないですか?」
「たしかに……」
その地面を眺めても、穴が空いていた形跡はどこにもない。1日でそんなに綺麗に埋まるわけないし、確かに謎。
「だから、アリスは調査してます!追い出されても探偵は探偵!アリスなりの方法で頑張りますよ!」
アリスはポーチからルーペを取り出して元気よく言う。ポジティブだ。
「えらいね、アリス。」
と、褒めたのもつかの間。いきなりアリスは俯いてボソボソ喋り出す。
「う〜…でも疲れました。何も見つからなくて……やっぱりアリスはセンスがないのでしょうか……。いや、センスがないのは当然ですよね、だから追い出された訳ですし。こんなことしてても時間の無駄だし素直に謝ってお家に帰って方がいいんじゃないでしょうか。」
「え、なに急に……」
「だってアリスは戦うのも苦手で頭も良くなくて探偵として必要なことも何も出来ない上にまともに働いたことも無くてどうやって生きていくかも全然知りませんしお友達も少ないですし世界は魔王に支配されそうですし何もいいことないですし」
アリスはずっと下を向いて1人でボソボソと呟く。
「え、こわ……」
「そうです怖いですよ。アリスの心はいつも月も星もでてない夜のように真っ暗で夜明けはなかなか来ません。でもそのうちその闇は夜明けの空も覆って常闇になるんです。開けない夜しかありません、」
「ひえ〜……」
と、そこまで言ったところでアリスは不意に黙り、ポーチから何かを取り出した。その『何か』はわたしの位置からはよく見えなかったけど、その『何か』で『何か』をすると、アリスはまたニッコリ笑ってわたしの方を見た。
「ごめんなさい!アリスの良くない部分出ちゃいました!」
「怖すぎ?」
え、ていうか今何した?見間違いじゃなければなにか体に刺してなかった?
「あ、これですか?これは唯一のお友達の、錬金術師の子に作ってもらったんです!その子は公認の錬金術師でありながら薬剤師でもあるから安心です!それで、このお薬凄いんです!気分が落ち込んだ時とか疲れた時、眠い時にもう少し頑張りたい時とかに使うととっても元気になれるんですよ!アリスの必須アイテムです!ルナちゃんも使いますか?」
「いや、それは……」
注射嫌い……じゃなくて、ダメでしょそれ。公認なの?ほんとに?怖い。
「それでは調査再開!ルナちゃんも一緒にやりましょう!」
「あ、うん………」
だ、大丈夫かな色々と……
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おまけ
『アリスのお注射』
お友達に作ってもらった便利なお薬。とりあえず体と心の調子が良くなる。変な成分とか使ってないから安心です。本当に。錬金術だから大丈夫です。魔法みたいなものです。副作用とか反動とかデメリットもないです。便利なファンタジーアイテムです。本当に。合法です
ほんとに安全です。