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新たなるものに向かって

「お腹すいてたの忘れてた!」


「忘れる程度なら別にいいんじゃない?」


 温泉から上がり、それを思い出し早速村の中のお店を探す。少し歩くと直ぐに、恐らく村の中でも1番大きくて、賑わっていると思われるお店が見つかった。看板の大きさ、人の多さ、立地……多分間違いない。


「おぉ〜いい匂い……」


「なるほど、これはいい店だね。」


 ガヤガヤと騒がしい店内で、空いてる席を見つけ座る。丸太のような椅子と、綺麗な岩のようなテーブル。


「何食べようかな、お金あるしいいものにしようかな!」


「それは君の自由だけど、調子に乗って使いすぎないように気をつけるように。」


「はぁーい。」


 ……とは言っても、何があるかよく分からない。店内を見渡すと、厨房に繋がるカウンターの上に色々な料理名が書いてあった。


「ん………あ!『ますのムニエル』!あれがいい!」


 ……あれ?なんかレヴィがこっちみてる。


「………意外だな。ルナのことだからもっと高い肉のステーキだとか、海の魚の料理を頼むと思った。」


「いいの、わたし鱒好きだから。故郷の村でね、たくさん釣れたの!だから大好き!」


「なるほど、じゃあボクもそれにしようかな。」


――――――――――――


「あ、そうだ。なんで今日は全然モンスターと遭遇しなかったんだろね?」


 森の中も、森に行くまでの平原でも、1匹も遭遇しなかった。


 モンスターと言っても実は二種類いて、元々この世界にいた在来種のモンスターと、魔王がこの世界に呼び出したモンスター。でもどちらも出会わなかった。


「そうだね、野生のモンスターがいなかったのは幸運だった…けど、魔王の手先がいなかったのは偶然じゃない。」


 レヴィは行儀よく食べる手を止めて答える。


「ほえ?」


「魔王、またその手下と言っても何も無限の力や人員がいるわけじゃない。効率よく世界を奪うため……そのためには、まずは勇者を潰すのが先決となる。」


「うんうん。」


「だから、君がシオン君と共に居た時は魔王の手先のモンスターとよく遭遇したのだろうね。逆に、勇者から離れ、なんの関係もないボクと歩いていても魔王の手先は目をつけるはずがない。」


「あー、なるほど!」


 確かに思い返せば、道中で遭遇していたのは魔王の手先とされるモンスターばっかりだった。ドラゴンとかの在来種のモンスターは、依頼を受けたりでこちらから出向くことが多かった。


「わかったようだね。………それならついでにききたい。君が対峙したモンスターの中で一番危険だったのはどんなやつだった?」


「うーん……」


―――――――――――――――――――


「……おいおい、まじかよこいつ……」


 記憶にある中で1番やばかったのは、魔界のモンスター『グールドレイク』だと思う。


「………『魔』そのものと言ったところか……厄介だ。」


 『グールドレイク』……信じられないくらい巨大な蛇に、信じられないくらい大きい口が正面と体の真ん中辺りに1つずつ着いている。その両方の口から紫色の毒液が垂れていた。


「は、初めて見ましたよこんな恐ろしいもの……!」


 その巨体に似合わず、激しく素早く動き回っていた。気持ち悪すぎ。


「みんな!落ち着いて!あの大きい口の中が多分弱点!」


 その時の場所は何も無い荒野のど真ん中。利用できそうな地形は何も無かった。


「ひょえ〜…」


 


「なら一気に決めてやるよ!喰らえ!」


 シオンは側面から飛びかかり、勇者の剣で斬りかかった。……けど、もうひとつの口から吐き出された毒液が剣にあたる。流石に勇者の剣だけあって溶けたりはしなかったけど、持っていたシオンの手にもダメージがあったようで、シオンは剣を落としてその場に座り込んでしまった。


「くっそ……なんだよそれ……」


「我が雷鳴の魔剣……邪悪なる蛇を打ち砕け!」


 今度はアルト君が正面から斬りこみ、魔法を纏わせた剣を降るって雷の衝撃波を口の中に向かって飛ばした。……けど、グールドレイクはそれを『噛み砕いた』。


「なっ………魔法ごと噛み砕く………」


「アルトさん!危ないです!!」


 予想外の事に呆然としていたアルト君は、自分の目の前に来ていたグールドレイクに反応できていなかった。噛み砕かれる直前、間にルルちゃんが入ってアイギスの盾で何とか防いだ。


「くっ、すまない…」


 目を向けると、シオンはまだ上手く動けていなかった。見ていても仕方ないので駆け寄って、声をかけた。


「へ、へいき?」


「お前……少しは役に立ってみろよ………」


「わ、わかった!回復してあげる!!」


 多分その時のわたしは、いつもみたいにゆっくり回復してたと思う。


「……遅いんだよ!市販の回復薬の方が早いわ!もういい、お前ここで待ってろ!」


「……あぁ……」



「これ以上好きにさせない!!!『スーパーノヴァ』!」


 メルリアは的確に、グールドレイクの口内に爆発の魔法を打ち込んだ。流石のグールドレイクも、それには大きくよろめいた……けど、全く倒れない。


「つよ!」




………




 その後も、みんなで何とか戦ったけど、おされていた。少しずつみんなにもダメージがたまってたし、ルルちゃんも守りきれなくなってきていた。


「ふざけやがって……なんなんだよこいつ………」


「魔法も斬撃も効かない…世の理を凌駕しているとでも言うのか……」


「わ、私もそろそろ限界ですよ……」


「……んー……。」



「み、みんな……あ、あぶな……!」


 少し離れていたところから見ていた、その瞬間。みんなが油断していたのかどうかはわからないけど、グールドレイクは大きなしっぽで4人を薙ぎ払った。直撃した4人は軽々と吹き飛び、地面に倒れ込んだ。


「………み、みんな……!逃げようよ!ここで無理して死んじゃったら意味……」


「……なんだよそれ……お前になんか言われたくねぇよ!何もしてないくせに!」


 シオンは立ち上がり言った。


「…え?」


「……同感だ。我が魔剣はこの程度では折れない…」


「私もですよ……パラディン・ナイトは絶対に倒れちゃいけないんです………!」


「あ、私は割と元気だよー!」


 メルリアはぴょんと立ち上がった。………さすがだよ。


「見せてやるよ……俺の力!行くぞメルリア!」


「おっけぃ!」


 立ち上がった2人は声を合わせてグールドレイクに向かって走り出す。


紅色型雷放電レッドスプライト…!」


 シオンは見たことの無い技を使った。勇者の剣に雷を纏わせて、天に向けて突き立てる。


「私も!永久凍土パームフロスト!」


 メルリアは杖に冷気をまとってそれを思っきりふるった。そこからほとばしる冷気を、シオンは雷を纏った剣で受け止め、ふたつの属性が混ざりあった剣でグールドレイクを斬りつけた。


「くらいやがれ!化け物が!」


――――――――――


「ってことがあったかなぁ。」


「………やっぱり君は何もしてないね。」


「でも、本当に強かったの!凄いんだよグールドレイク!えっとこうなんて言うか……」


 わたしの話を聞く気は無いようで、レヴィはムニエルを食べ続けている。


「……もう平気さ。……ただ、気をつけて。これから君があの補助道具を探すと言うなら、いずれは魔王に目をつけられるかもしれない。」


「確かにね。その時はレヴィも一緒に戦ってよ。」


「…残念だけど、それは出来ない。」


「え、なんで?」


「ボクが同行するのはここまでだ。この先は一人で頑張ってくれ。」


…………え?


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