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光さす道へ

「……ああ、そういえばそうだった。魚を釣ろうとしていたんだよね。」


「そう〜!忘れてた………ん?なんか向こうの方明るくない?」


「ああ………たしかに。」


 まだ日が出ているけど、森の中は薄暗かった。でも、少し先に方をみると明るく、光がさしている。


「もしかしたら……あそこかも!」


「ちょっと……走ると危な……」


「ぶへっ……痛……」


「転ぶ……転んだね。」


 木の根っこに躓いて派手に転んでしまった。膝を見ると少し血が滲んでいる。


「痛た……でもへーき!わたしの回復魔法で!」


「君の魔法じゃあ時間が……」


「よし!治った!」


「………え?」


「………あれ?」


 あれ?今確かに一瞬で傷が治った。なんで?悲しいけど現実問題、わたしの魔法はとても弱いらしい。なのに、今は一瞬で傷が完全に治った。……もしかしてパワーアップしてる!?


「すごい!じゃあこっちの傷も……………………………」


「……………………」


「あれぇ〜?」


 ぜんぜん治らない。さっきのはなんだったんだろ?


「まいっか!行こ!」


「落ち着いて……ね。」


――――――――――


「ありゃ………」


「本来の旅人であるならこれで良かったけれどボク達は……」


 光のさしていた場所は、森のもう一方の入口にある村……つまり、抜けた先だった。普通に旅をするならここを目指すわけだけど、今のわたし達が目指すのはここじゃない。森の中にあるはずの里なんだけど……。


「さて、どうしようか。」


「……疲れたしお腹すいたから今日はここの村で休みたい……続きはまた明日……。」


「それは賛成……だけど、お金は?野盗に襲われた時に、持ってないって言ってたけど。」


「…はっ!忘れてた!どうしよう………」


 すると、レヴィは溜息をつきながら何かが入っている布袋を取りだした。………今どこから出てきたんだろ?


「仕方ない。これを売ってみよう。原種の人達の間では価値のあるものなんだよね?」


 そう言って袋の中身を見せてくれる。


「これは………!」


 中にはエメラルドやアメジスト、ラピスラズリやルビーなどの綺麗な宝石が入っていた。大きくはないけど、形は綺麗で混じり気の少ない、純粋なもの。これはかなり高いんじゃ…。

 ていうかこんなもの持っていながら、あくまでも『お金はない』で突き通すレヴィも中々……。


「ボクの住んでいた辺りでは時々地面や岩壁に埋まっているのが見つかってね。せっかくだから持っていたんだ。」


「やったぁ!これで多分かなりのお金になるよ!」


 お金に関する不安な気持ちも吹っ飛んで、いい気分で森の出口の村に向かった。


――――――――――――


「………思ったより高く売れてちょっとびっくりした……」


「ああ……まさかこんなにとは………」


 村に入ってすぐに目に付いたお店に入り、袋の中身を見せたところ、こっちが驚くレベルで驚かれた。


 全部買取って貰おうとしたけど、そんなに払えるお金はないとか何とか言われて、エメラルドだけ売ることにした。それでも、普通に働いたら数ヶ月、難しい依頼をこなしたとしても10件くらいは必要なレベルのお金が手に入った。


「話を聞いた感じ、この地域ではエメラルドは特に価値が高いようだ。」


 適当に村を歩き、宿を探しながらレヴィが言う。意外と村が広くて探すのも一苦労。


「そうみたい……。よく知らないけど、エメラルドには治癒の力があるの?わたしの魔法より回復する?」


 エメラルドに触れるだけで傷はいえ、病気は治る……そんなことを言ってた気がする。


「はは、それは無い。あくまでも伝承………迷信と言ってしまえばそれまでだよ。それでも信仰というのは大切だから、よそ者のボクらが正面切って否定することはしてはいけない。」


「そっかー!じゃあわたしの方が回復力で勝ってる!」


「……石と勝負するなんて悲しいね。」


「むぅ」


「……あそこ、いいんじゃないかな。」


 不意にレヴィが立ち止まり、指をさす。そっちを見てみると、中々いい感じの宿があった。うん、良さそう。


「………!ねえみて!温泉あるって!すごいね!」


 宿の看板には温泉があることを示す印がある。ラッキー!


「温泉………か。珍しいねこんな場所で。」


「?」


「まあいいや、行こうか。」


―――――――――――――


「わぁ〜………広い!」


 受付を終え、部屋に荷物を置いた後すぐに温泉に行ってみた。外からなんとなく分かってたけど、露天風呂で周りは見たことの無い変な材質の壁で覆われている。温泉自体はにごり湯?ってやつでなかなか大きい。ラッキーなことにほかのお客さんもいない。


「なにこれ?」


 温泉に入りながら、変な壁に手を伸ばして触ってみる。


「う〜ん……ボクも見た事がない。」


 硬い岩……のようだけど、表面はツヤツヤしていて冷たい。ま、いいや。


「………うーん………」


「なに?ジロジロみて。」


 改めてレヴィの体を見てみても、やっぱりどう見ても人間。脱げば何か変わってる部分もあるかなって思ったけど、鎧で隠れていた部分も、特にそれっぽい箇所もなく、魚人と竜人の混血だなんて信じられない。


「だから言った通りだ。鱗がないから鎧を着ている。鎧で鱗が隠れているわけないでしょ?」


「ま、そっか。」


 温泉は熱すぎなくてぬる過ぎなくて長く入れるちょうどいい温度。……あ、そうだ。


「温泉も水場判定になるかな?」


「………面白いね、やってみようか。」


「よぉし!…セーラ!出てきて!わたしの声に応えて!来て!」


 わたし達以外誰もいないから、思い切って叫ぶ。すると、ぶくぶくと泡があがり、すぐにセーラが飛び出してきた。


「あっつ!?アホかお前!?殺す気かよクソ!!」


「いった!?」


 飛び出してきたセーラの尾びれで思いっきりビンタされた。そのサイズのヒレのビンタは強すぎるって…。


「ぶへぇ……。」


 起き上がり、セーラの方を見てみると怒ってる。


「ふざけんなよバカ!」


「熱い?そうでもなくない?」


「そうじゃねぇよ!普通に水に呼ばれると思って出てきたらいきなりお湯だったんだよ!反射的にそう思うだろ普通!!てかいきなり温泉で呼び出すとかなんなんだよお前!」


「……一緒に入りたいなって思って。」


「ボクは止めたんだけどね。」


「え!?」


 なんでいきなり裏切るの!?


「あークソ!服が硫黄臭くなるわ!」


 セーラはブチ切れながら服を脱ぎ捨てて遠くに投げ捨てた。ま、温泉だからねその方がいいよ。


「………硫黄と言えば、やっぱりこんな場所に温泉があるのは珍しいね。」


 レヴィはゆったりと座って喋る。


「なんのはなし?」


「は?お前温泉がどんなところに多いか知らないの?」


「え?温泉ってどこに多いとか決まってるの?」


「……マジでお前バカだな。やばいだろ。」


 すごいさめた目で見てくる。わたしそんなに変なこと言った?


「ルナ、温泉っていうのは基本的には火山の近くに多いんだよ。理由は……」


「あ!ねえねえ!」


「馬鹿なうえに人の話も聞けないとか、お前ほんとにやばいでしょ………。」


「ちょっと聞きたい……というか、気になってたことがあるの。」


「なんだい?」


「火山とかの話でちょっと思ったんだけどね、わたし……地理的なこと全然わかんなくて。いつもシオンに任せてたから。」


 よく考えたらわたし、世界のこと全然知らなかった!


「なるほど、ならちょうどいい。ボクとセーラのふたりで色々教えてあげよう。」


「私もかよ………まあいいけど。バカでアホなルナにたっぷり教えてやるよ。けどその前に、お前たちのこと教えろよ。よく考えたらお前たちのこと何も知らないし。」


「あ、たしかに……じゃまずはそれから話すね。」


―――――――――――――――


「……ってわけ。」


「いや………150%ルナが悪いだろそれ。」


「うーん……やっぱりそうなのかな。」


「当たり前だろ……むしろよくすぐ外されないである程度いられたなお前………。」


 めちゃくちゃ呆れながら言われた。


「むぅ。」


「ま、いいや。じゃ今度は私が話してやるよ。何も知らないお前に色々教えてるやる。」

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