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死出を迎えぬ永遠の幕開け

「………?」


 エルザの前に現れた国王と兵士たちは、牢屋に入れられたエルザをみて不思議そうな表情を見せる。


「なんだよ?てめえらがぶち込んでおいてなんだ、そのリアクション?」


「貴様が誰かと会話をする声が聞こえたようなきがしてな。気のせいか………」


「………んなもん気のせいに決まってんだろ?やっぱりあたまイカレてんのか?」


 頼まれた訳でもないのに、エルザはイリスのことは隠すことにした。なぜだかはわからないが、これは言ってはいけない………本能的にそう感じた。


「まあよい………さて。勇者エルザよ、貴様の()()の方法が決定した。」


 国王はエルザと初めて会った時とはまるで別人のような、悪意のこもった笑顔を見せながら言う。


「処分だと?てめえらみてーな雑魚どもがボクのことを殺す気か?できるわけねーな。どんな方法でボクから力を奪ったかは知らねーけど、それでも今のボクはその辺の奴らが100人束になってきても負ける気はしないぜ。………なんたって、ボクは()()なんだろ?」


 しかし、そのような挑発には全く乗らず、国王は冷静に返答をする。


「それはこちらも分かっている。力を奪うのにも、限度がある上に、時間が経てばその力もまた貴様は取り戻すだろう。故に………貴様を殺すことをしない。……いや、できない。」


「………いみわかんねーな。殺さない?じゃあどうすんだよ。」


「そう慌てるな………それを今から見せてやろうではないか。」


 そう宣言し、国王は近くにいた兵士から何かを受け取った。それは、先程エルザの動きを止めた宝玉によく似ている、しかし別の色をした玉であった。


「なんだよ、また小細工か?」


「さあ行くがよい……『永遠とわの宝玉』………忌まわしき勇者に永遠の時と呪いを与えよ……!」


「っ!」


 直後、宝玉からは禍々しい闇が溢れ出て、エルザを包み込んだ。それは魔王が使ったどんな術よりも深い闇であり、勇者を迎え入れた国の王が、凱旋した勇者に対し使うものとは到底思えなかった。


 その様子をみた周りの兵士たちも、異様な光景にざわつき出す。しかし、国王はそれを制し言う。


「エルザよ……気分はどうだ?」


「はっ………最悪だな。信じらんねーよ、こんな大国の王がそんなもの持ってて、ボクに対して使うなんてよ。あの魔王ですらそんな力はなかったんだぜ?」


『永遠の宝玉』が与える呪い………エルザはその力を知っていた。宝玉はこの世界のどこかにあるということ、そしてそれは魔王ですら見つけることが出来ず、力を得ることが出来なかったと言っていた。………それがまさか、こんな所にあったとは。


 その呪いはその名の通り、受けたものに『永遠』を与える。それは不老であり、不死であり、生きるための生理現象すらも必要とせず、ただひたすら生きるという呪い。どんな痛みを受けようが死ぬことはなく、例え身体欠損を起こそうが、その部位は復活し、血液もすぐに作られる。


「で、なんのつもりだ?呪いだなんて言うけど、考えみればこんなもん不老不死の無敵の体だぜ?ただでさえ強いボクに、そんな力を与えるなんて、元々おかしいのにさらに気でも狂ったか?」


 鉄格子越しに、エルザはひたらすら挑発を続ける。しかし国王もまた、それには一切乗らず、淡々と言う。


「もちろん、このまま放置などするわけが無い。………安心しろ、貴様のために、儂が特別な城を用意してやった。貴様は未来永劫そこに住むといい。」


「あぁ?こんな所に閉じ込めておいて今度はなんだってんだよ?じゃあその城はどこに」


「……ふむ。無駄話はここまでとしよう………!」


 そして、国王はエルザに向かってなにかを放つ。


「ぐっ……!?て、てめえ……なにを………!?」


 国王の放ったそれは、エルザの体を貫いた。直後、エルザはその場に倒れ、そのまま意識を失った。



 ――――――――――――――――――――――――


「おーい………ねえ………おーい、ねえねえ、起きて…………おきてー!」


「うるせー!!」


 何者かにしつこく揺さぶられ、エルザは倒れていた体を一気に起こし、立ち上がり周りを見る。


「あ………?」


 そこは薄暗い広間で、見渡すと人を馬鹿にしたようなボロい装飾で飾られた壁ばかり目に入る。そしてすぐ後ろには汚い玉座。


「ここがボクの城か?随分とふざけてやがるぜ。…………ところで、さっきの声は………」


「ここよ、ここ〜」


「うお!?」


 声がしたのは足元。すぐ下を見ると、自称女神のイリスが横になっていた。どうやら、倒れていたエルザと並んで寝ていたらしい。


「ん〜……おはよー」


 イリスは体を起こし、のんびりと挨拶をする。


「あー………いや、もういい。とりあえずボクは外いくから。」


 気がつけば、背中にはいつものあの剣もあった。牢屋では奪われていたのに、いつの間にか返して貰えたのだろうか?


「あかない。」


 イリスの言う通り、いくらエルザが力を入れて押しても引いても玉座の間から外に繋がるドアは開かない。


「………ならぶっ壊せばいいだろ。」


 早速、背中の剣を抜き全力で斬りかかった………が、そのドアには傷1つつかなかった。むしろ、剣を持つエルザの方にダメージが入りそうな程に硬かった。


「………どうなってんだよ。」


「それも呪いのひとつなの。エルザちゃん自身にかけられたのは『永遠の呪い』、そしてこのお城には2つの呪い……『忘却の呪い』と『束縛の呪い』がかかってるのよ。」


イリスもドアの近くに来て、ゆっくりと喋る。


「呪い………?だいたい、なんで女神サマがこんな所にいるかもわかんねーし………あのゴミに変な術かけられた後、ボクは何をされて、あの国はどうなったんだよ?女神サマなら知ってんだろ?」


「うん、知ってる……でも、あまりにも酷いことで………それでもききたい?」


「ひどいこと?」


「うん。」


「ならむしろ歓迎だ。あのゴミがどんなことしでかしたのかたっぷりきかせろよ。」


「わかった………」

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