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勇者

 先代の勇者ってこと?この女の子が?わたしとそんなに年齢変わらないそうな女の子が3000年も生きてる?


「もー!何その冗談!わざわざこんなお城でそんな格好して誰か来るの待ってて遊んでるの?わたしより(人間として)変わってるじゃん!」


「あぁ?()()()なんだよ?舐めてんのか?」


「こわっ!?」


 セーラもなかなかだったけど、それも上回るくらいの態度と口の悪さ!睨んで来る顔も目も怖い!凛としてればかっこよくて可愛い感じなのに。


「あ、あの……勇者って………」


「塔の壁画にあった勇者は強そうで、大きい男の人だったけど………」


 ソフィさんがそれを言うと、エルザはまた不機嫌になって答える。


「だーからさ、んなもん嘘に決まってんだろ。今こうしてここにボクがいるんだからわかるだろうがよ、少しは考えろ。当時の奴ら、『勇者が女』ってのがそんなに嫌だったかね?ボクみたいな可愛くて綺麗でクールで優しくてセクシーで強い勇者、いいだろ?」


「……………」


「………」


「…」


「おい、なんか言えよアホ。また戦うか?」


 エルザは剣に手を伸ばす。


「ま、待って待って……。ちょっと色々あって困ってるだけだよ。」


「そ、そうですね」


「色々聞きたいことがあるわ。いいかしら?」


「いいぜ、でも…………外行こーぜ。超久しぶりに外でてぇ。」


 そのまま剣を背中に背負い歩いていき、エルザは閉まっている扉をぶち壊した。


「この扉もそうだけどさ、まあこの城いろいろなクソな仕掛けがある訳。外で話してやるから、早く来いよ。」


 そう言い残し、エルザは壊した扉の残骸を超えて外に行ってしまった。


「えっと……」


「とりあえず、私達も行きましょうか………」


「は、はい!」


 ――――――――――――――――


「うおぉ!マジで外だぜ!すげー久しぶり!あーこんな匂いだったな、そういえば………。」


 外に行くと、城門もぶち壊したようで、エルザはけっこうはしゃいでた。


「あの剣、かなり重そうだけど………」


「アリスじゃ引きずることも出来なさそうですよ。」


 普通に振り回したり背負ったりしてるけど、どうなってるんだろ………?


「お、来たか。お前たちが来たおかげでやっっっと外に出られぜ。そこに関しては最大限に感謝してやる。だからききたいことがあったらきけよ。わかることならなんでも答えてやる。」


 エルザは壊した城門の瓦礫に座った。足を組んで座ると、スカートが………。


「じゃあまずわたしから!3000年間もどうやって生きてたの?歳もとらず、何も食べなくて生きてたの?」


「どうって……別になにもしてねーよ。ていうか死ねるんならとっとと死んでた。でもそれもできねーような状態だった。死のうとしても死ねなくて、かと言って生きてても何もすることがなくて、体もずっとそのまま……そういう()()みてぇなもんだぜ。」


「へえ」


「絶対分かってないだろおまえ。バカに何言っても無駄か。もっとまともな質問出来るやついねーのか?」


「なら代表して私が。いくつか順番に質問するわね。」


「おーう、いいぜ。」


「じゃあ最初に……あなたが勇者……これは間違いないことよね?」


「当たり前だ。ボクはある日勇者としての力に目覚めて、旅の果てに間違いなくこの手で魔王の野郎をぶっ殺した。何かの間違いで生き返ったりしねーように、ズタズタにして、形が無くなるくらいには切り刻んでやったぜ。このバカでかい剣だって、今は力を失って普通のでかい剣だけど、当時は勇者の剣だった。」


 そう言いながら、エルザは座ったまま()()でその剣を持つ。


「……ということは、勇者の剣はその時代の勇者に合わせて生まれるのね………シオン君が持っていたのは片手用の剣………勇者に合わせて武器も形を変えるのかしら。」


「ん?今も勇者いんの?」


「はい、シオンっていう男の人です。その人が持つ勇者の剣は、長い片手用よ剣らしいです。」


 すると、エルザは愉快そうに笑う。


「あっはっは!片手用の剣?男のくせに随分()()()()な武器使ってんな!そんなんじゃたくさんのモンスターども相手にした時、対処しきれねーだろ?」


「シオンは1人じゃなくて、仲間が3人いるから平気だよ。魔法が得意だったり、すごい剣技が使えたりとか、そんな仲間。」


 わたしも仲間だった……は、さすがに今言うことじゃないか。


「ふーん、仲間か。」


「あなたは1人で魔王を倒したの?」


「そんなの、当然だろ!」


 エルザは剣を持って瓦礫からおり、その剣を天に掲げる。


「旅の途中で一時的に助けてもらうことはあったけど、戦いはいつでも1人だぜ!ごちゃごちゃ周りにいられたら逆に邪魔で、下手すりゃ仲間ごと殺しそーだしな。余計なこと考える必要がない分、1人の方が楽なんだよ。魔王だってタイマンでボクの勝ち。あの野郎、変な魔法とか召喚術とか、呪いとか……とにかくズルばっかしてきやがって大変だったんだぜ?勝ったからいいけど。」


「……伝承によると、勇者は魔王を倒したあと、その力を使い果たして、その後すぐにこの世を去った……とあったわ。でも、3000年のときを超えて今あなたはこうしてここにいる……一体どういうことなの?呪いというは誰の………」


「『勇者は多くの人に見送られて安らかな死を迎えた』……とかだろ?で、『死後の勇者は城に眠る』……か。馬鹿じゃねーの、誰がその壁画残したかはしらねえけど、嘘に決まってんだろ。だから今ここで、3000年のときを超えた勇者の口から真実を語ってやる。あの時、あの時代……魔王が倒された後に何が起きたか。」




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