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次の世界へ!

 次の日。朝起きると、もう3人とも起きてきて、出発準備バッチリな感じだった。まあ、わたしは特別時間のかかる準備とかないから別にこれでいいんだけどね。


 朝ごはん(スティアが作った?)も食べ終わり、4人で外に出る。


「いい天気じゃん!良かった!」


「せっかくの旅立ちが雨……だったら、それはそれはでアリスみたいな子にはお似合いだったかもしれませんけど」


「ほら、そんな事言わないで。アリスちゃんのことを大切に思ってくれる人も沢山いるのよ。」


 ソフィさんの言う通り。外には村の人の多くが集まってきてくれていた。とは言っても、わたしとソフィさんはほぼ知らない人だけど…………。


「みんな、わざわざ集まってくれたのね。………ところで、あたし達一言も言ってないのになんで知ってるの?」


「たしかに」


 村の人達はそれに対しては特に答えず、口々にアリスに対する思いや、応援の言葉を言う。アレかな、わたしの住んでたところもそうだったけど、田舎特有のアレ的なやつでみんな知ってるのかな。


「さ、あんまりここで時間使っててもしょうがないわ。行くわよ。馬車は村の入口に用意してもらってるの。ほら、着いてきて。」


「うん」


 わたしとソフィさんは、スティアに着いて歩き出すけど、アリスはまだ村の人達の方を向いてなんか話してる。まあ、そのうち来てくれるでしょ。どのくらいの期間いたかは知らないけど、住んでた村の人達とのお別れなんだし無理やり引き剥がすってのも可哀想。




 村の入口の方に行くと、昨日の見張りの人の他に、もう1人……わたしの親くらいの年齢だと思う女の人がいた。その人は、わたし達に気がつくとすぐに声をかけてくれた。


「あ、きたきた。待ってました。スティア様に頼まれて、馬車を用意させていただきました。本来、馬を他人に預けるというのはしないのですが……スティア様と、そのお友達というのなら安心です。」


 それをきいたスティアは、わたしとソフィさんの方を見て得意げな顔をする。………なんも言わないからね。


「お待たせしましたー!」


 ちょうど、アリスも走ってこちらに来た。思ったより早いけど、いいのかな?


「アリスさんはこのまま言ってしまうんですよね」


 女の人は、アリスにすぐに問いかけた。


「あ、はい………アリスも色々考えたんですが……アリスはこの村にいても、何も役に立てないと思うんです。錬金術も出来ないし、自分一人の力じゃ何も出来ない………だから、ソフィさんたちと一緒に行って、もっとアリスは強くなりたいんです!そしていつか、もっと誇れる自分になったら、スティアちゃんの待っているこの村に帰って………」


「あら、あたしこの村に永住する気は無いわよ?あんたが帰って来れる時、あたしがまだここにいるかはわからないわ。」


「あれ、そうなんですか?」


「あったりまえじゃない!あたしの店どうすんのよ?ずっと放置とか、あたしに店を任せてくれた両親に申し訳ないわ。ある程度、この村に残せるものが出来たらあたしは街に帰るつもり。色々道を踏み外したりもしたけど、やっぱりあたしが帰る場所はあそこなのよ。」


「………さすがスティアちゃんです。」


「そろそろ行かない?」


「ルナちゃんわざと?じゃなかったらめちゃくちゃ空気読めないわね。」


「ま、そうね。あたしも賛成、とっとと行きましょ。借りる以上、少しでも早く返せる方がいいわ。ほら、みんなのって。」


 スティアは馬車の後ろのドアを開き、わたし達に入るように指示する。そして、馬の方に回り、何かを……多分、あの手綱を着けたっぽい。そして最後に、馬車を貸してくれた人に声をかけて、スティアも乗ってきた。全員中に入ってるのに目的地まで動いてくれる馬車とか、面白いね。馬は嫌がらないのかな?まあ、スティアの事だし心配ないか。


「それじゃあ出発よ!」


 スティアが大きい声を出すと、馬車は動き出した。アリスは後ろのドアを少しあけ、村の方に向かって手を振っている。危ない。


――――――――――――――――――――――


「……それでですね、スティアちゃんその時……」


「ちょ、ちょっと!なんでそんな話すんのよ!せっかくルナ達がいなくて知られなくて済んだのに………それなら、アリス!あんただってあの時……」


 いくら早いとは言っても、馬車が着くまではまあまあ時間がある。だから、スティアとアリスがあの村でどんなことをしてたのか、色々聞くことにした。……いつの間にか言いたくない話の言い合いになってて、こっちとしては思ってた以上に楽しい。ソフィさんも、きっとアリスとスティアのこと、もっとよく分かってくれたんじゃないかな。


「ふふ、わかってはいたけど、2人ともすごい仲良しなのね。羨ましいわ。私にはそんなに仲のいい人、いないもの。」


 ソフィさんは、そんなふたりを見て笑う。


「え、わたしは?」


「すごい答えにくい質問するわね。」


「あの!アリス、ソフィさんのお話も聞きたいです!」


「そうね、あたしも興味あるわ。世界統括団体の人がいったいどんな…………と、残念。もう着きそうね。」


 もう着きそう、その時になって、今更思い出したことがあった。


「そういえばさ、お城の話……全然しなかったね」


「あ」


「忘れてました」


「…………」


 うーん…………ま、いっか!


 ―――――――――――――――――――


「馬車で行けるのはここまでみたいね。」


 降りた場所は、深い森の始まり。理由はよくわかんないけど、これ以上は行けないみたい。


「……なんだか、スティアちゃんと初めて行った森を思い出します!」


「いや、こんな深くはなかったわよ………」


 たしかに、少し遠くの方はもう日が届かないくらいに暗そう。ちょっと怖いよね。


「この先に……あるのね。」


「恐らくね。あとは自分たちの足で確かめるしかないわ。……それじゃ、ここでお別れね。ルナ、2人の足引っ張るんじゃないわよ。ソフィ……見つかるといいわね、探し物。」


 別れを惜しむ様子もなく、スティアはすぐに馬車に乗ろうとする。


「そんなにあっさりでいいの?」


「いいのよ、ね?アリス。」


 振り返り、アリスの方を見る。


「はい!アリス達はこれでいいんです!スティアちゃんも頑張ってください!」


「あんたに言われなくてもわかってるわ。……それじゃあね。」


 本当に、特に何も無く……スティアは馬車に乗って行ってしまった。え、ほんとに?これで?お別れ?


「あら………もっとこう……抱き合ったり、別れを惜しんだりするものかと………」


「だ、だよね!わたしもそう思った!」


 すると、アリスは森の方を向いて、笑いながら言う。


「ふふ、平気です。別れが軽いって言うのは、また絶対会えるっていう思いなんです。お別れを惜しんだり、泣いたりする方が……まるで、もう二度と会えないみたいで嫌です。『それじゃ、また明日』……そんなくらいのお別れが、1番なんです。」


 表情が見えないけど、泣いてるわけでもなさそうで、きっとこれは本心だ。


「そう……色々な考え方があるわね。」


「…………だね」


 わたしがマリーとお別れする時、したあとは…………たしかに、そういうことかもしれない。


「よし、それじゃ行こ!!森をぬけた先にあるお城!そこにある勇者の伝承を絶対みつけよう!」


「はい!アリスも協力しますよ!」


「3人もいると賑やかで楽しいわ。あんまり焦らず、楽しく行きましょうね。私はそれが一番よ。」


 まだまだ日の高い時間。暗い森の中に3人で踏み入った。

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