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次への旅立ち

 スティアの家に帰ると、夜ご飯作って待っててくれた。全然知らなかったけど、スティアって料理上手いんだ。そういえば結構前、食べる量多いとか言ってたし、自分で作るのはおかしい事じゃないかな………。


「……へえ、良かったじゃない。」


 ある程度食べ終わった後、村長さんから言われたことを話すと、スティアはうっすいリアクションをしてくれた。


「もう少しこの村にいられるみたいで良かったです。アリスも、旅に出る前に皆さんに挨拶がしたかったので。」


「………スティアちゃんはどうするの?」


 わたしも気になっていたことを、ソフィさんがきいてくれた。


「あたしは………考えてたけど、やっぱり……この村の人たちを置いていきたくはないわ。あたしの錬金術を喜んでくれて、仲良くもしてくれて……それに、きっとここにはあたしが必要なのよ。この周りで取れる物も悪くないし、錬金に困ることも無い………」


 くちではそう言ってるけど、決意はまだ固いようには見えない。きっと、アリスのことが気になってるんだ。好きだから、ただそれだけじゃなくて………アリスのことが心配なんだよね。


「スティアちゃん!!アリスのことは気にしなくていいです!!アリスは絶対大丈夫です!ソフィさんもいるし、アリスだってすこしは戦えます!!だかは、スティアちゃんはアリスのことは気にせず、自分の思う道を行って欲しいんです…………」


「そんなこと、わかってるわよ。あんたに言われなくたって…………大丈夫よ、まだ何日かあるし、お別れのこころの準備くらいできるわ。」


 と、その時、いきなりドアが開き、外から誰か入ってきた。


「だれ!?」


 全員がその方向を見る。そこに居たのは………


「……村長さん?」


 開いたドアのところに立っていたのは、さっき話した村長さん。おじいちゃんだけど、ここまで歩いてきたのかな………わりと元気じゃん………。


「あたしの家に来るなんて……珍しいわね?何かあったの?」


「ソフィさん達に用がありまして………先程の話ですが………思っていたより少し早いですが、資料をも見つかり、思い出すことが出来ました。」


 村長さんは少し早口で答えた。


「はや!?」


「少しとかいうレベルじゃないわよね?本当はかなり元気なんですか?」


「………アリスの話したお城のことがわかったんですか?」


「そうです……ならばと、一刻も早くお伝えしたく、ここまで来たということです。…いま伝えてもよろしいですかな?」


「え、ええ……まあいいですけど……」


「なに?なんであたしの方見たの?」


 これ………下手したら最速明日出発なんじゃ………そういう意味で、ソフィさんはスティアを見たのかな?


「では早速……………」



 ――――――――――――――――――――


「………というわけです。さて………私はこれで失礼します。もしまた何かありましたら、また来てください………では………」


 話が終わると、村長さんはとっとと帰ってしまった。絶対あの人元気でしょ。


「さて………みんな理解出来た?」


「わたしはむりーー。村長さんの話し方よくわかんなかったし。」


 あの人、ゆっくりと、時々ド忘れしながら喋るから内容が全然頭に入らない(普段から頭に入らないとか言うのは無しね!)。


「アリスもちょっとわかんないです…村長さん、長いお話するといつもあんな感じで……村長さんのことをよく理解している村の方が一緒にいないとよくわかんなくて……」


「…………ごめんなさい、あたしですらもよくわかってないわ。ソフィはわかったの?」


「まあ………色んな人からはなしをきくことがあるのよ、私。…………はっきり言って、ここの村長さんはかなりまともな部類よ。世の中、信じられないくらい話が下手な人がいるのよ。何故かいきなり怒りだしたり、必要なことがことごとく抜け落ちてたり、何言ってるか全然分からなかったり……。仕方ないわね、私がもう一度、分かるように話せばいいかしら?」


「うん、お願い!」


 スティアとアリスも頷いている。その様子をみて、ソフィさんは椅子に座り直して、少し声を張って言う。


「まず、みんなに話した通り、お城の名前はミストコーストと言うの。でも、私そんな名前聞いたこともないし、村長さんがいうには、多分世界統括団体の本部の資料にも載っていないらしいわ。でも、村長さんの家にあった資料……代々この村の人達が書き記している手記とか、旅で訪れた人から聞いた話をまとめたものには書いてあったみたいなの。ちなみに村長さんはここまで話すのに15分かかってたわ。」


「やば」


「それでね、そのお城の場所なんだけど、この村から真っ直ぐ北に向かって、あの『ヘブンズ・マウンテン』の麓に向かえばあるらしいわ。つまり、かなりの距離があるわけよ。」


「ヘブンズ・マウンテンって……世界の中心にある世界樹を囲ってるっていう噂がある、すごい山よね。麓とはいえ、まあ……遠いわね。」


「直線距離でもかなりある上に、実際には回り道する必要がある場所もあったりして、直線にはすすめない……思っている以上に時間がかかると思うの。」


「馬車……もないですよね。そんな場所に。」


「そうね……自分たちで所有してればよかったけど、そんなもの」


「あるわよ?」


「え?」


 ソフィさんをさえぎり、あっさりとスティアは言う。


「どこにあるのかしら?」


「どこって……あたしが頼めば、馬車くらい村の人に借りられるわ。目的地まであたしも同乗して、帰りはあたしが1人で帰れば問題ないわよね?もちろん、安全には考慮するわよ。」


「スティアすごーー」


「さすが、神様級の存在ね……そんな大切なものでも直ぐに借りられるなんて………。」


 積み上げた信頼ってすごい!わたしはどれくらい積んでるかな?


「アリスもそれに賛成します!だってそうすれば、スティアちゃんともう少し一緒に居られます!ですよね、スティアちゃん!」


 アリスは立ち上がり、スティアに抱きつく。


「ちょ………」


「あれ?スティアちゃんも同じじゃないんですか?だからさっき、村長さんがもうお城のことわかって言った時、残念そうな感じだったんですよね?」


「う、うるさい!あたしご飯の片付けしてくるわ!ほら、ソフィとルナもあたしの家に泊まっていっていいから、あっちの部屋にいってて。アリスもよ!」


「えへへ、はーい!」


「そうね、そうさせてもらう。お城のことも、場所以外は馬車の中で話せばいいわよね。……ところで、馬車の操縦……というか、馬をちゃんと動かせる人はいるのかしら?」


「平気よ。これ使うから。」


 スティアは手綱?みたいなものを持ち、見せてくれた。


「あぁ!それは……!人が持たなくても馬と車を繋ぐところにその綱を付ければまるで意志を持ったかのように勝手に動いて目的地まで馬を走らされることが出来る神秘の手綱じゃないですか!!」


「露骨な説明じゃん」


「でも安心したわ………馬車があるのに動かせない、なんてなったらバカみたいだもの……それじゃ、私達はあっちの部屋に行ってるわ。」


 ――――――――――――――――――――


 部屋で話した結果、やっぱり明日の朝にもう出発することになった。ソフィさん曰く、『魔王の気まぐれでいつ世界が今より酷い状態になるかわからない』から、できることは早くやる……と。わたしは今できることは後でもできる派だけど。そんなわけで、とっとと寝た。寝坊したくないし。じゃあまたあした。


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