百聞は一見にしかず、ということで
「どこ行くの……何があるの?」
ソフィさんについて歩いていくと、村の外には出てないけど、だいぶ外れた方まで来た。浜辺だけど、岩が多くて家も全然ない。何があるんだろ……こんな海の近くじゃ百花繚乱の花畑!なんてのもないだろうし………。
「もうすぐよ、ほら……時間もちょうどいいわ。そこの岩場……がいいかしら。」
なんだか全くわからないまま、海が良く見えそうな岩の上に立つ。ソフィさんがわたしの隣に立って、海を指さしながら言う。
「ほら、見て!すごく素敵よ!」
「………わぁ…………綺麗………」
日が傾いて、オレンジ色に染まっている太陽。それがいままさに、少しづつ、海に………水平線の彼方に沈んでいく。そのオレンジ色の光は静かな海に綺麗に反射して、まるで光の道のようになってこちらまでゆらゆらと伸びてきている。
「せっかくだから、この景色をルナちゃんと見たかったの。世界には百景なんて言って、100の綺麗な場所があるなんて言うけれど……身近なところに、素敵な場所なんていくらでもあると思うの。でも、それを見つけられるかどうか……それは、私達人間の心次第だと思うわ。」
ソフィさんは髪の毛を触りながら、遠くの彼方を見つめて呟いた。
「………なんでいきなりポエム詠んでるの?」
「………いいじゃない、別に。今くらい。」
「うん」
でもまあ、気持ちは分かる。だって、今目の前に広がるこの景色……刻一刻と太陽は沈んでいくから、もうあと少しで終わっちゃう。こんな刹那の景色を見て、安心して、心の底から素敵だって思えるような世界のために、シオンたちは戦ってるんだよね。きっといつか、魔王は倒されて、本当の平和な世界に………
「……いや、おかしくない?」
「なにが?」
「いや、なんでこっち側に太陽沈んでんの?南じゃん。東から昇って南に沈まないでよ。」
「………?」
「あれ、わたしがおかしい?」
「そうね……」
すごい残念そうな顔された。
「季節によって変わるのよ。今の時期はこっち。寒い時期になると北寄りになるのよ。まあ1年の中で西に沈む時期がいちばん多いけど………ルナちゃん、さすがにもう少し勉強とか、した方が……」
「あ、明日の百より今日の五十だよ!わたしは今日という今だけを全力で生きるから!」
「なんでそんな言葉は知ってるのかしらね……それと、使い方微妙に変よ。」
「……あ、沈みそう………」
くだらないこといってる間に、オレンジ色に輝く太陽は、半分くらい海に隠れていた。少しづつ暗くなってきて、少し涼しくなる。
「ねえソフィさん……あの向こう側……水平線の向こうはどうなってるの?何かある?誰かいる?」
「それは…………きゃっ!?」
なにか、すこし考えるような様子を見せて、ソフィが口を開こうとしたちょうどその時、ソフィさんは何かに気がついて、岩場から飛び降りた。
「え、なに……こわ。ていうかソフィさんそういう声出るんだ。」
「べ、別にいいでしょ………まあ、ちょっと驚きすぎたけど………。そこ、私がたってた場所に…」
ソフィさんが指を指す場所、暗いから顔を近づけてみてみる。
「んー……ああっ!?無理!!」
自分でもびっくりするくらいの反応速度で、顔を遠ざけてそのまま飛び降り、ソフィさんの隣に行く。
「見えた?」
「見えた見えた、見ちゃったよ!気持ち悪い!!やだ!!帰ろ!!他にもいるかもしれないし!!」
「あら……ルナちゃん、ああいうの苦手?」
「嫌い!ソフィさんはいいの??」
「そうね……今は突然だからびっくりしたけど、普段は別になんともないわね……色んなところに行くし、生き物1つでいちいち驚いててもしょうがないのよ。」
「慣れてるんだ…………」
何がいたかといえば、ウミウシ。しかもまあまあ大きい。ウミウシって、さも当然のように存在する生き物だけどさ、よく考えてみてよ。貝の仲間らしいけど、貝殻は体内に埋まってて、どう見てもバカでかいナメクジでしょあんなの。気持ち悪い、気持ちわるすぎる。なんで普通にあんなものみんな受け入れてるの??海とかにしか生息してないからまだギリギリいいけど、普通に陸地で、雨の日とかにカタツムリくらいの割合でいる生き物だったら多分わたし100%生きるの諦めてた。
「どっちにしても、もう暗くなったから戻りましょうか。………足元気をつけてね。くらいからよく見えないけど、もしかしたら…………」
「なんでわざわざそういうこと言うの!?」
「ふふ……ルナちゃんが面白いからよ。」
暗いけど、すぐ近くのソフィさんの顔ははっきりと見える。………気持ちいいくらいの、綺麗な笑顔。この人……………。
「イカとかタコはまだいいけど……ウミウシとかヒトデとかナマコとか……海の生き物、なんだか分からない気持ち悪いのが多いよ……百鬼夜行みたい………。」
「……私もだけど、なんか『百』って言葉よく出るわね。」
「え?なに?」
「だから、百……」
「ん?」
「………もういいわ。帰るわよ。」
「はーい」
足元ガン見しながら、ソフィさんの後に続いて来た道をもどる。結局、どうしてソフィさんはこの場所知ってたのかな?
実質的に、今回で100話目でした!いつも見てくださる方、評価やブクマくれるかた、本当にありがとうございます。これからももっと、多くの人に見てもらって面白いと思って貰えるように頑張っていこうと思うので、応援してくれたら嬉しいです………。