そして今へ至る系譜
「で、草を見つけたまでは良かったんだけど、その後結局その『フォレストワーム』と出会っちゃのよ。戦うにしても、アリスがいて危ないから何とか逃げて……そんな危険なことしたからかしらね、何となく、いつの間にかアリスと仲良くなってて、色んなもの作ってあげるようになったのよ。その過程でアリスのことも色々聞いて……それで、最後にドレッド・ブレード作ってあげて……あとはルナの知ってる通りよ。」
「………え、待って待って。そこ端折るの??」
「そうよそうよ!ここからが1番大切だわ!私達、スティアちゃんとアリスちゃんが仲良くなるその『過程』が1番気になるのよ!如何にしてあなた達ふたりがそんな関係になったのか、気になるのよ!」
「そうそう!たっぷり42時間くらいかけてもいいから話してよ。」
「バカ?」
「違うけど………」
普通に考えて、ここで端折るとかありえないでしょ!だってまだこの時点だとアリス、『スティアさん』って呼んでるし。いつ変わって、いつスティアもアリスのことを大好きになったのか……それが知りたい!ソフィさんも同じ気持ちっぽい。
「……みなさん、なんのお話です?」
「……あ、おかえり。」
ちょうどいい……いや、悪いタイミングで、アリスが帰ってきた。…………アリスのいる前じゃあスティアも絶対話さないだろうし、しょうがないけど今はとりあえず諦めるしかない…………か、悔しい………。
「なんでもないわよ。それより、村の人は?怪我とかしてる人なんていないわよね?」
「はい!みなさん元気で、スティアちゃんやソフィさんにも御礼言ってました!」
とびっきりの笑顔でアリスは答えた。
「わたしは?」
「あ、そうだ……ソフィさんとルナちゃん、村長さんが呼んでました。村長さんのおうちは海辺にある、周りに木が生えてるおうちです。急ぎではないみたいですけと、待たせちゃうのもよくないと思うので、今からでもいいですか?」
無視された。
「村長さんが?なんの用かしら……それじゃルナちゃん、行きましょうか。」
「はーい」
こうなっちゃったら、もう完全に話の続きはきけないな……またいつか隙を見て、絶対に全部きいてやる………!
―――――――――――――
アリスに言われたとおり、海辺にいくとヤシの木みたいな木が数本生えている場所に、家があった。
「こんな海辺だと、風が強い日とか大変そうだけど………」
「…………まあ、未だにここにあるってことは何とかなってるんでしょ……多分。」
ちなみに、何がどう大変なのかはさっぱり分からない。
「すいません、アリスちゃんに呼ばれてきました。ソフィとルナです。」
ソフィさんは家のドアを軽く叩いて、中に呼びかける。すると、すぐに返事が返ってきた。
「おぉ……来ましたか……どうぞ、あいてるので入ってください。」
結構歳いってそうな男の人の声……かなりのおじいちゃんかな??
「おじゃましまーーーす」
中に入ると、スティアの家とは全然違う感じで、かなりものが少ない。必要最低限のものだけって感じ。その部屋の中、椅子に座っているおじいちゃん……村長さんがいる。
「よくぞいらっしゃいました……」
村長さんは見るからに辛そうに、立ち上がろうとする。それを見たソフィさんは、慌ててそれを止める。
「あ、そのままで結構です……ご無理はやめた方が……。それで、私達に用って………?」
深く椅子に座り、軽く息を吐き村長さんはゆっくりと答える。
「まず……村を守っていただき、ありがとうございました……。このような田舎の村が何故魔王に狙われたかはよく分かりませんが……助かりました。スティア様とアリスさんも、あなたのことをとてもよく言っていました。」
………達、じゃないあたりね……視線も完全にソフィさん向いてるし。
「…さて、本題ですが………アリスさんから聞きました。なんでも、かつてこの世界に存在していた勇者の伝承を調べている、と。そして、世界のどこかにある古き城に、求めるものがある………。」
「アリス、その話もしたんだ……あ、もしかして村長さん、何か知ってるとか?」
「その通り……しかし」
「しかし……?」
意味深にそこで言葉を区切られると、後に続く言葉はいい意味じゃないことの方が多いけど………
「……簡単には教えることが出来ない……とかでしょうか?」
ソフィさんも同じことを思ったみたいで、1歩前に出て、村長に問いかける。
「…………そうではなく、歳のせいか、記憶が曖昧で………資料を探したり、思い出すために……数日ほど待っていただきたい……それだけです。」
「あ、はい」
「そうなんだ………」
おじいちゃんだからね………
「でもちょうど良かった。わたしもこの村気に入ったし、もう少し居たかったよ。」
「そうね、せっかくならこの周辺のことも調査したいし、スティアちゃんとアリスちゃんのことも村の人にきいてみたいわね。普段の様子とか………ね。」
……なんかソフィさん、あの二人に対して変な感情向けてない?こう、上手く言えないけど………。
「さて……こちらからの話は以上です。わざわざ来ていただいてありがとうございました………。ふぅ………」
「あの、ご老体に無理はしないように……時間がかかっても私達は構わないので、どうか、ゆっくりとお願いしますね。……では、おじゃましまた。」
「おじゃましましたー」
おじいちゃん相手に喋るソフィさん、普段の7倍くらい優しそうに見えるな………不思議な人。
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「さて」
家の外に出たソフィさんは、立ち止まりこちらを向く。
「わ、なに?」
「もうすぐ夕方ね………このままスティアちゃんの家に戻ってもいいのだけど……ねえ、せっかくだからちょっと遠回りしてかない?」
「好きな人と少しでも長くいたいから家に帰るまでの道わざと回り道する思春期女子?」
「は?」
「なんでもない、気にしないくていいから………。でも、どこ行くの?」
「それは……秘密よ。ほら、来て。」
「あ、うん」
ソフィさんに手を引かれてどこかに向かう。初めてした村だけど、そのどこかへの道わかるのかな?まあ、ソフィさんの事だし平気か。
次が事実上の100話なんです