プロローグ
季節は夏。熱い日差しが照っている中、道路の脇に植えてある木に青々と葉が茂っている。
ここは竜ヶ丘町。いつも平和なこの町に、今日は一人の青年がやってきていた。
「ここら辺…のはずなんだけどなぁ…。」
彼は手に持っている地図を見ながらボソッと呟く。
「ん?あぁ。」
あちこちを見回し、やっと見つけたとばかりにすぐ横に建っている家を見上げた。「そっかぁ!これか!んーでもオレがイメージしてたのと随分違うんだよなぁ…。」
彼は金髪をかき上げ、家に入ろうとした。その時…
プルルルル
携帯が鳴る。取り出して開いてみると、ボスからの電話だった。
「もしもし。どうかしたんですか?」
途端に、ボスのドでかい怒鳴り声が耳をつんさぐ。
『どうかしたじゃねぇ!!ただのガキんちょ連れて来んのにいつまでかかってんだ!?』
青年はボスの怒声に顔をしかめながらも答えた。
「んなこと言われてもー。ボスが悪いんすよ。オレが方向オンチだって分かってんのにガキの家探し出せなんて言ったり…。」
激怒するボスに対し、至って呑気な声である。
『てめーしかいねぇんだよ、爽やか面のヤツが!!』
「爽やか面ですかぁ?だったらヴィルレントとかアマレーナに任せればいいじゃないっすか。
アマレーナはともかく、あの毒蛇はなかなかの爽やか面だと思いますけど。ただし、笑えばの話ですけどね。」
『ダメなんだよ、アイツじゃ。オレんとこ連れてくる前にガキぶっ殺しちまうだろうが。』
「はいはい。分かりましたよ。ガキの家は見つけたんで、あとは連れて来るだけです。」
『早くやれ!』
ピッ
怒鳴り声を残し、一方的に切られた。