スターリンとトロツキー
議場に喧騒が広がっている
談笑する者、煙草を吹かす者、メモを確認する者
議場には連邦各地から選ばれた代表者も集まっている
遠くは東の極東から近くは西のベロルシアまで・・・
私が登壇すると議場は静まりかえる
皆が私を注視し、私の第一声を待っている
そして一言
「同志諸君」
議場からは堰を切ったかのように声援が飛びだす
「スターリン、ウラー!」「タワリシチ、スターリン!」「ウラー!」
声援が静まり返った後、私は議場にいる同志たちにゆっくりと語りかける
「我々は前進している」「ソヴィエトの未来は明るい」・・・
「農場生産は以前より良くなった――「よく言うよ!」
「工業生産は改良によって、今までより効率になる――「どうせ駄目さ」
「我々は正しく党を導いている――「いや正しくないね」
私が話すたびにガヤを入れてくるのは、故レーニンの客将レオン・トロツキーその人である
彼のガヤを無視し私は言を続ける
「ネップの導入により――「そもそも導入したのが間違いだ!」
「赤軍の質は向上し――「俺のおかげだな!」
一言一句も逃すまいとニヤニヤしながら私の顔を見続ける
そして演説が終わり降壇した後に私は彼に聞いた
「今回の演説はどうだった?」
彼はビックリした様子で私をジッと見た
「素晴らしかったよ」
今度は私がビックリする番だった
なんだ素直な所があるじゃないか、じゃあ何であんなガヤを飛ばしてたんだ
いろいろ頭の中で考えていると彼は続けて言った
「君が演壇から降りた瞬間が、特にね!」
私が呆気にとられてるのを尻目に彼は壇上の人になった
「なんだこいつ・・・なんだこいつ・・・」ブツブツブツ
しばらくして、自身の感情を落ち着かせて私は決心した
「やっぱり党から排除しよう」
(この後めちゃくちゃ粛正した)