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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

かえるのおうさま

作者: 月野 うさ

あるところに ちいさな いずみがありました


そのいずみには かえるの むらがあり


たくさんの かえるたちが まいにち たのしく くらしていました


「げこげこ!こんなにおおきな はえ をつかまえたぞう」


「やい そいつを おれによこせ おまえのものは おれのもの」


ある ちいさな かえるが つかまえた はえを おおきな かえるが よこどり しています


そこへ もっともっとおおきな かえるのおうさまが とおりがかりました


「これこれやめなさい ひとのものを とってはいけないよ」


「はい わかりました おうさま」


おおきな かえるは ちいさな かえるに はえを かえしました


「おうさま ありがとうございます」


「いいんだよ こまったことがあったら いつでもいいなさい わたしは そのために いるのだから」


つよくてやさしい かえるのおうさまは みんなの あこがれでした


おうさまには うつくしい つまと かわいらしい こどもがえるが いました


「げこげこ!ぼく おおきくなったら ぱぱみたいに なりたい!」


「あらあら ぱぱみたいになるには まいにち たくさんごはんを たべないとだめよ」


「うん!ぼくごはんいっぱいたべる!」


「はっはっは たくさん たべて ぱぱよりも おおきく なりなさい」


かえるのおうさまは ずっとこんなひが つづけばいいと おもっていました



あるとき おうさまが でかけている あいだに にんげんのこどもが かえるのむらを おそいました


にげまどう むらびとたちを にんげんのおんなのこが つかまえて たのしそうに ひきちぎって いきます


「げこげこ!やめてー!」


「おうさま たすけて!」


おんなのこは おおぜいの おとなといっしょにいましたが そのさつりくを とめるものはいませんでした


それどころか げんきなひめさまだ といって わらっています


もどってきた おうさまは むらびとたちを たすけなければ と おもいましたが からだが うごきませんでした


そのおんなのこと めがあって しまったからです


かえるのおうさまにとって にんげんのおんなのこは あまりにも おおきすぎました


なかまをたすけるどころか がたがたふるえて にげだすことさえ できません


そのうち おうさまのつまが つかまってしまいました


まっぷたつに ひきさかれ とびだした はらわたが いずみのみずを あかく そめます


おうさまのこどもも つかまってしまいました


つかまった こどもがえるは いわに たたきつけられて しんでしまいました


それでようやく かえるのおうさまは にげだしました


げこげこ げこげこ げこげこ


かえるのおうさまは なきながら ずっと とおくへ にげつづけました


あのおそろしい おんなのこが おってくるかもしれない とおもったからです


なんにちも なんにちも おうさまはにげて あつい あぶらの わきだす いずみに たどりつきました


ぼこぼこと にえたぎる あぶらをみた おうさまは そのままとびこんでしまいました


おうさまは こわくて うごけなかった じぶんが ゆるせなかったのです


つまと こどもを たすけようと しなかった じぶんがゆるせなかったのです


にえたぎる あぶらのなかで おうさまは かなしそうに ないていました


げこげこ げこげこ


そこへ かなしい なきごえを ききつけた あくまのおうさま があらわれました


「かわいそうな かえるのおうさま あなたに えいえんのいのち をあげましょう」


あくまのおうさま が まほうをかけると にえたぎるあぶらに とかされた はだが みるみるもとにもどっていきます


「まってくれ わたしは こんなものはいらない あくまのおうよ わたしの つまと こを いきかえらせておくれ」


「ああ それはかなわぬ ねがい しんだものを いきかえらせることは だれにも できないのです」


「わたしは えいえんの いのちなど いらない どうかもとに もどしておくれ」


あくまのおうさまは こたえることなく そのまま きえさりました


かえるのおうさまは かなしくて なきました


げこげこ げこげこ


にえたぎる あぶらのなかで いつまでも いつまでも なきつづけました


げこげこ げこげこ げこげこ げこげこ げこげこ

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[一言] さすがは悪魔、とうなずいてしまいました
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