人間との邂逅
ある日
気楽な食道楽を送っていた時。突然ポチが唸り声を上げた。
どうしたのかと、センサーに意識を向けると、熊にしては小さいが二足の生き物がこちらに向かって来ているらしかった。
ポチに見に行くように誘導するが、かなり警戒をしているようで、今までに無い程に慎重に近寄っていく。
「@#/jgdm?」
「→3+<^〒^」
(これは・・・会話?
もしかして人間がいる?)
確かにゴブリンとかがいるのだ、予想はしていたが、まさかこんなに早く遭遇するとは思わなかった。
(このまま不用意に接触しても良いのだろうか。)
人間の恐ろしさは人間であった自分が良く知っている。
しかしながら、この世界の文明レベルが気になる。好奇心と保身で揺れてしまう。
「がああああ!」
「%2÷=〒○¥|!」
「#><|!」
「〜<×*→°÷・:!」
(ちょっポチっ、おまっ)
何という事をしてくれたのでしょう。
何故か慎重だったポチさんが急に人間に襲いかかっていた。
人間サイドは慌てつつも、剣を抜き放ち、陣を整えている。
(奇襲には慣れているのか、剣を鍛造しているし・・・こりゃ本当に剣と魔法のファンタジーかな?)
現実から逃避するために、観察をしてみる。
バキッ
ポチが咥えていた何かから、鈍い音が響いた。
まあ何かなんてわかりきってる。人間だろう。立ち位置的に斥候役だったのだろう。
可哀想な事をしたが、まあ自然の摂理だ。仕方ない。
とにかく、問題は目の前の者だ。
人数は4人。
恐らく役割はタンク、アーチャー、キャスター、ポーターであろう。
まさか魔法をこの目で見られる時が来るとは。
期待と好奇心が膨れ上がり、ポチにはキャスターとポーターを無視して2人の対処をお願いした。
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今、俺達は窮地に追い込まれている。
最近村にゴブリンが何匹も出るとの事で、間引きの討伐依頼が出ていた。予想では繁殖して棲息域が広がったか、オークとの縄張り争いが原因だろうと、皆そう考えていた。
しかし、訪れたここで、村からそう遠くもないこの森で、とんでもない化物に遭遇してしまった。
簡単な依頼の筈だったのに。
長い付き合いだったスカウトのトリシュがまず最初の犠牲者となった。
ウルフの形をしたそれは、大きさこそ通常のウルフよりふた回り大きい程だが、まるで身体中にローバーと言われる生物をくっつけたようで、周囲がぼやけて見える程の威圧感を持っていた。
そして、何より恐ろしく悍ましいのはその体毛だ、まるで1本1本の毛に意思があるように、蠢いているのだ。
まるで、生き物の死骸にたかる蛆虫のように。
対峙すると、本能が悲鳴をあげる。戦っては行けないと、逃げろと。
だがどう逃げろと言うのだろう。背中をみせればトリシュのように首をへし折られる。
それに逃げれば追われるだろう。もし、跡をつけられ、村にコイツが来てしまったら、そう考えると寒気すら覚える。