王城にて
「ふむ、では此度の謁見とはつまりその事であると。」
王城の謁見の間。人より高い位置に腰を掛けた壮齢の男は、そのヒゲを触りながら指で玉座の腕掛けを叩く。
ヒゲを触りながら指先で物を叩くのは別にイラついている訳ではなく、ただ単に推し量れない事情を考える時の癖である。
「はっ、本来であればこちらである程度の成果を出してからと思っておりましたが、不確定要素ながら霊薬に使用されるような物の取引となりますと、私の手には余ると判断致しました。」
この国のギルドを纏める位置にいる彼は荒事に関する知識、地域毎に関しての慣習等、現場レベルに直結する話であれば対応する事が 可能であるが、これに関してはどう考えても国家の方針に関わると考えたらしい。
そしてそれは間違いでは無かった。
「ふむう。その者達はどういった様相であったのだ?」
話を聞くに交易を望むという点しか分からない。国に保護を求める訳でも、敵対するのかも、報告の内容の内から察する事は難しい。
「特段敵対的な様子も何かを企んでいるという様子も見えなかったようです。こちらの意思を尊重しつつ、自らの要望を明瞭に伝える姿には暮らしに余裕が伺えたそうです。
先に申し上げましたとおりに
1つ、食料品や鉄器等の交易
2つ、とある物質への調査
が今回の打診であります。
これは最低限の内容であり、親睦が築ければ徐々に深めて行きたいと言っていたそうです。」
「ふむ、そうか。しかし、それは少々困った事になるのだよな。宰相よ。」
「そうですな。地図でその者達のいる所に関してあたってみましたが、どうやらそこは開拓地域のきわ、我々が派遣した国民の開拓村がある場所でした。
どういった経緯かは分かりかねますが、不当に開拓村を占拠した疑いが伺える者達と手を結ぶというのは外交上問題があります。」
「それならばいっそのことその村に軍をだして圧力をかけて屈服させる方針はいかがですか?その方がその後も円滑な管理もできますし。」
皆が下をむいて思案にふけりながら唸っていると、王の傍に侍る官位の者がふとそんな意見を言い出した。周囲のものからも「まあそうだろうなあ」なんて賛同の意見が多くでた。
「他の者達はこういっておるが、どうだ?」
それはあくまで文官達の意見であり、現場単位を知る者に回答のお鉢が回るのは当然である。
「・・・正直に申します。あの者達と敵対するのは得策ではございません。」
搾り出しながらも吐き出したその言葉だけでは周囲も納得できていないようで、眉をひそめている。
「少々前の話なのですが、我々はかの者達の眷属というものでしょうか、戦った経験がございます。」
「ほう、それでよく向こうも今回の話をきり出したな。して実力の程は?」
「あの者たちは極めて理性的であり、物事の道理というのをわきまえております。あの時はお互いに不幸な事故であったという話になりまして。
で、その事故の内容なのですが、森林での戦いでした。こちらが100名に対してあちらが1匹での戦いです。しかも老体で死も間近な個体だそうです。」
周囲で息を飲む音が聞こえる。
「ふむ、しかし、それは森林での話であろう?平地に引き込めばそうはいかないのではないのか?」
「いいえ、逆です。彼らは遮蔽物が無い方が、より強力な攻撃を存分に使えるようになるそうで。聞いた通りの威力であるならば正面に立てと言われたら・・・。」
荒事に慣れたその男が身震いするのを見て、周囲の者は肩を落とした。
「そうか・・・。事を荒げる方が愚策か。無闇に兵や民の血を流す必要も無いだろうしのう。ふむ、よし、決まったぞ。」




