奪還の人形劇4
「すっすげえなありゃあ」
鎧を纏った領主軍の中に5人ほど吶喊したのが見えた後、人が木っ端のように空を舞う。冗談のような状況に空いた口が塞がらない。
吶喊と同時に林の方面からも悲鳴が聞こえてくる。
唖然としていると、肩を何者かに叩かれ、木札を渡される。
「さあ、ゆっくりと交渉しましょうって、ははっ、この状況でか?。
あんたらは本当になんなんだ?」
苦笑しつつも立ち上がり骸を前に交渉を再開する。木札により、良しなら1回、駄目なら2回肩を叩くらしい。
交渉の合間に林の奥から小さい影が参加し、飛び交う人の数が増えたのは、見ない事にした。
目の前の骸に近い4足の獣っぽい物なんて見てない。
領主軍が壊滅する頃には交渉も終了し、馬車も大分軽くなった。
いつの間にか領主は逃げたのか、うめき声を上げている領主軍が辺りに散らばっている。
「これだけ貰えればもう充分か・・・。」
骸の狼に相当する部分は許可が出なかったものの、本当に欲しい枝?いいや、触手の部分は貰えるようなので、その気分は明るい。
全てが終わってめでたしめでたし。という所で暗闇の奥から人の気配が近づいて来るのに気づいた。
「ああ、神様に呼ばれたから来てみたら、なんか不思議なことになってるね?」
現れたのは10もいかない程の小さな少女だった。
「巫女、危険です、お下がりください。」
その背後に控えるのはどう見ても人間には見えない姿形をしている真っ白な化物の姿。
巫女というのはこの少女の事だろうか?というかあの化物喋った?。
「問題ないよ、神様もそう言ってるし。さて、神様の言う事を伝えて欲しいってことなんだけど。なんで最初から私達を出さなかったんだろうね?」
「巫女、我々の身の安全を慮っての事です。・・・初手で争いになった時万が一があっては困りますから。」
「君達は?と聞くのも野暮かな、お仲間さんなんだろうけど。」
「そうだよ、まあ面倒だから難しい事は置いといて。神様が貴方たちにお願いがあるらしいの。
お願い?じゃないんですか?依頼、そう依頼だそうです。」
少女は年相応な笑顔をして、こちらに近づいてくる。
この血なまぐさい惨状の中に、無邪気とも言えるその笑顔は逆に不気味に見えるが、悪意は感じられない。
「・・・内容がどんな物かによります。」
正直もう物が手に入ったからおさらばしたい気持ちであったが、少女から提案された事は、今回手に入った物よりも大事になる内容だった。
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這う這うの体で街の城門まで戻ってきた領主軍
全ての兵が血の気を失った顔で大急ぎで兵舎に向かっている。
領主本人も騎士に守られつつ、ゆっくりと自分の領館へと向かっていた。
「カッカッカッ、ワシハリョウシュデアル、モノヲヨコヒッヒヒ」
「りょっ領主様?お気を確かに、此度の失敗は確かに痛手でしたが。」
傷一つもついていないのに、領主は涎を垂らしつつ狂ったようにキヒキヒと笑っているのを、騎士が心配して話かける。
とたんに彼は表情を真顔に戻し
「ん?何を言っている?。失敗?ワシは一体なぜ馬に乗っている?」
しきりに首を傾げ始めた。
「はっ?」
その豹変ぶりに声を掛けた騎士が主にあるまじき反応をしてしまい、慌てて口を抑えた。
「ん?どうした?。そうだ!こうしてはいられん!早くギルドの連中を尋キヒッカッカッ・・・・・・・・・。おおう、そうだ仕事をしなければ。この領地を過ごしやすく、平和に導く為に。民の笑顔を1つでも増やす為に。」
支離滅裂な事を言い始めた領主に思わず騎士の歩みが止まる。領主はそれに気付かずに一人で領館に向かっている。
「いったいなんなんだ?。」
その姿に空恐ろしい物を感じとった彼はそう呟いた。呟いてすぐに何かが街の路地、灯りの届かない道の隅で蠢いた気がした。
(考えてはいけない)
咄嗟にそう思い、思考を打ち払って急いで領主の元へと急いだ。




