奪還の人形劇3
無論、ただ見ている程こちらも無能では無いので、触手を使い飛来した矢を掴む。
パシッ! という乾いた音と共に、矢は動きを止めはしたが、矢と触手を見た代表の男が目を向いて驚愕している。
「これは・・・いや、まさか!」
すぐに触手とポチを交互に見てその場で腰を抜かす。
「ははっ・・・まさか動いてるのを直接見る事になるとは・・・だがそうか、やっと納得できたよ。」
交渉していた時よりも幾分か柔らかい雰囲気になったのは、命を助けられたからか、それとも俺の動機みたいなのが理解できたのか、はたまた両方か。
飛んで来た矢に続くようにして街の方より、馬蹄の音が響く。
「夜分なのにお客さんが多い事だ・・・しかも招かれざる客ってのがまた。」
軽口を言うくらいならこの場を切り抜けられる算段でもあるのだろうか。
「おやおや、こんな夜更けにこそこそと動くとは何か人には見せられない物でも密輸でもしているのかな?。」
現れた人間に対して、代表の男は小さく舌打ちして小声で俺に聞こえる様にぼやいた。
「領主本人が直々にか。」
苦り切った代表の顔に対して、得意げに鼻をならして馬上からこちらを見下ろしているのは、他でもないあの街の領主だった。
「ふむ、どうやら噂の物というのは本当に存在したようだな。」
「噂の物とはどういう物でしょうか?私どもは今から急遽王都で入用になった物届ける最中にございます。」
なんとか弁解しようと代表の男が立ち上がり領主の目の前に立ちふさがる。
「おお、それは大変だなあ。それは入用になるだろうなあ、霊薬の素材であればどこでも入用だろう。
どれ、お前たちでは少し荷が重かろう、我々が代わりに王都まで運んでやろう。」
「いえ、それには及びません、我々のみで事は足ります。」
「ふん、そうか?実力が足りるかどうか、試してやろうか?」
「なっ!?それはどういう!」
不穏な領主の言いように代表が噛み付こうとしたところ、横合いから更に矢が飛んでくる。
「くっ!」
脅しを含めた意味合いがあったのか、矢を避けるのは容易のようだ。
「ははっここ一帯は既に抑えてある。いくらギルドの精鋭であろうと、一つの街の兵を相手にできるかな?」
勝ちを確信しているのか、領主はどこまでも強気である。
カラン
空気を変えたのは一枚の木板だった。
代表がそれを拾ったのを確認して、俺は領主と代表の間に割って入った。
「どうやら言葉で解決できうる線を越えている様子なので、ここは私に任せて貰おう・・・っておいまて、この状況で戦うのか!?」
言葉で通じないなら実力行使。当たり前の答えに行き着いて代表はうろたえる。
カラン
(貴方達が私を敵に回さなかった英断、しっかりと認識させてみせましょう。)
代表がそれを読んで間もなく、領主は静かに反転した。
「ガハハ!無駄に言葉を使う必要が無くなったな!やれ!」
背を向け後方にゆっくりと下がっていく領主と入れ替わるように、周囲一帯から矢が飛来する。
しかし、その矢の群れが目標に到達する事は無く、手前2mの範囲以内で、全て時が止まったかのようにその場に静止した。
「なに!?」
これを見て驚いたのは、正面に居た敵の騎兵と、矢の内側にいる者達だ。
矢を反転させ、飛んできた方に投げ返す。
(並列思考なんてもうお手の物さ。あとは人の視界のリミッター外してゾーンを使えば、矢の把握なんて楽々。)
普通はそれに身体がついてこないものだが、こちらはあいにく人間の身体ではない。
いくらか矢が刺さったのか、暗闇から悲鳴が響く。
「ちっ!押しつぶすぞ!」
騎兵の隊長らしき物の号令で、領主軍がこちらに向かって来るが
目の前にはまるで蕾のような形をした1本の特大触手が待ち構えている。
「ヒッ!あれって!」
見覚えのある者が居たのか。ギルド員側から小さな悲鳴が聞こえる。
(こういう時は技名を言うのか?まっいいか面倒だし)
バチン
何かを弾き出すような音と共に、騎兵の中央に居た人間がミキサーに掛けられるように細切れにされていく。鎧をつけている事もあり、威力が減衰するのが思ったよりも早かった。
これ一辺倒で蹂躙してもいいのだが、それはそれでつまらない。ということで、数人を正面に突貫させて乱戦の開始だ。
まあ、それだけでなく、先ほどの砲音という合図によって弓兵もすぐ片付くし、援軍も合流できるだろうし。




