子供達
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上玉の獲物を手に入れて数刻後
お頭が領主に報告に行って戻って来たらお楽しみの時間となるので、早くて昼頃、遅くて夕方くらいまでお預けだ。
昨日襲撃に参加した面々はその時の為に早々に仮眠をとっている。
そんな中で、俺は仮眠を取らずに拐ったガキ共を牢に入れての見張りをしていた。
こういう面倒な事をすると順番を早めに上げてくれたりするので、新し目の物が好きな俺は進んでこの役割を買って出ている。
(しっかし今回の奴らは妙に扱いが楽だなあ)
この期に及んでまだ助けが来るなんていう望みを持っているのだろうか・・・だとしたら流石に憐れとしか言い様がない。
静かな牢の、鉄格子のそばでガキ共の観察をするが、当然だが怪しい動きをしているようには見えない。
(ここまで静かだと逆に不気味だな)
少しは感情を表に出してもいいだろうに、ガキ共は無表情にただ座り込んでいる。
異変が起きたのはそれから数刻後。
厠に行き空が白んでいたのを見たあとだった。
ブツブツ
何か・・・音が聞こえ始めた
ブツブツ
それは何かの呪いを詠うような調子で静かな部屋に淡々と響いている。
耳を凝らさずとも、現在この牢を使っているのは限られている。全員が一様に一切の調子を外さずに揃って何かを唱和している。
(うっわ不気味だなあ)
「おい!お前ら!うるせえんだよ!静かにしやがれ!」
怒鳴り声を上げて止めさせようとするが、一向に辞めようなんて気配を見せない。
神に縋るような内容ならば理解できるが、こいつらの唱える言葉はそれとは縁遠い様な単語が目立ちすぎる。
巣食う 血 贄 すする
少し聞き取れるだけでこんな単語が聞こえてくるなんてどう考えてもおかしい。呪術てきな物でもやろうというのだろうか・・・こんなガキ共が?。
何か背筋に虫が這うようなゾワゾワとした感覚が、腰から後頭部まで駆ける。
「静かにしろってのが聞こえねえのか!」
商品をしつける時に使う鉄の棒で格子を何度も叩く。
数度叩くと、ガキ共は唱和をピタリと止めた。
今まで無表情だったこいつらが、露骨に不機嫌そうな顔をしたのに少し動揺してしまう。
少しの間が空き口を開いたのはガキが先だった。
「朝のお祈りの邪魔をしないで貰えますか?」
丁寧だが、確かな拒絶。
「は?何いってんだ?」
反抗的な態度より、その言葉の内容にぎょっとする。
ここは地下に作った牢であり、周囲の景色も音もわからないようにしてあるはず。牢に入るには前室があるので、外の状況など分からない筈なのだ。
(なんで朝だってのがわかるんだ!?)
自分ですら厠にいってしかわからなかったのだ、それも白み始めの絶妙に判断しにくい時間帯だ。
嫌な汗がこめかみ辺りに浮き出てくる。
警戒を顕にする俺をよそに、最初の物静かさを捨ててガキはしゃべり始める。
「それにしても心配致しました。突然お眠りになるので何かよからぬ事が起きたのかと・・・。こんな事が確か前にもあったような気がしますが。ご無事で何よりです。」
明らかに俺にではない、誰かに話しかけている。
しゃべり始めたのはガキ共の中でも一番年上と思われる男で、そいつの言葉に周囲の者は満面の笑みを湛えて頷く。
牢屋の中での光景としてあまりにもいびつすぎる。
思わず2歩後ずさる。




