新居(察し
鳥の頭が爆ぜた。
どうしてこうなった。
糸が空間を叩くと、それは伝播していき、あるところでは反響し、あるところでは何故か増幅していき、やがて内包蓄積されていったそれらは、俺のいた場所、つまり鳥の頭部分から開放を求める為に、一気に内部から爆発を伴って空中に四散していった。
何故か俺自身は全く影響を受けてはいなかったが、飛んでいた最中だった鳥は慣性と引力によって、地面に叩きつけられた。
(すまん、鳥さん・・・。)
1年以上一緒にいただけに愛着はあった。悲しさに包まれると同時に、これからどうしようかと途方に暮れる。今回は完全に俺が悪かった、本能はただ俺に生きるすべを提供していてくれていたのに、当り散らすようにあのような行動をするとは、まるで子供のような精神ではないか。
それがこの様を招いたのだ。
反省とともに残された鳥の身体から余った血を吸いつつ、次の行動の思案に移る。
次の好機は、時を置かずして来てくれた。
鼠である。少し大きいドブネズミくらいの大きさの鼠が2匹やってきた。その二匹はどうやら鳥がお目当てのようで、自ら肉に顔を突っ込み漁ってくれる。
本能さんは囁く。
(これでも問題はない)
逃してなるものかと必死に体を動かし、鼠の喉元あたりに取り付く、俺の体は鳥の内部で成長していたらしく、10cm近くまで伸びていた。
頭を下げた鼠に取り付くのは容易な事だった。
しかし、悠長にしてはいられない、できる限りはやく耳に入り込まなくては行けないのだ。
二匹いるということは、勘付かれると毛繕いなどで取り除かれてしまう。
耳付近に来たところで、鼠が頭を上げて、首を傾げる。
(まずい!)
「ヂュ!」
もう一匹の鼠が俺に気づいて、頭をこちらに寄せてきた。
そして、俺の体は悲しい事に鼠にくわえられて、取り除かれてしまった。
まあ、自切りした少し大きめの方の身体だけど。
本命はきちんと耳に侵入して、血も吸ったので感覚は消えただろう。
代償は大きかったが、まあなんとかなってよかった。
こうして俺は新しい新居を手に入れることができたのであった。