寄生した鳥での事
一度寄生してから、鳥は俺のことを気にしなくなったようだ。どうやら、蚊のように血を吸う際に麻酔のような成分を分泌しているようで、感覚を麻痺させているようだ。それでよく日常生活送れるなあ、とか、平衡感覚とか大丈夫か?とも思うが、自然の生き物は思ったよりもタフのようだ。
で、暫く住んでいたのだが、最近本能さんがまた騒ぎ出した。こちとら静かにぬくぬくと耳穴虫生を送っていたいのに、厄介な隣人である。
本能さん曰く、どうやら俺に何かを掴めとおっしゃる。何かってなんだよと思うが、感覚的なものでそれが何かわかってしまうのが何ともご都合主義的な物だ。でも、赤ん坊が乳を吸うように、鹿が生まれてすぐ立つように、あらかじめプログラムされた性質とはそういった物なのだろう。
本能が理性に埋もれていくことなく、同居するとこうなるのかと少し感心してしまう。
でもこのむず痒さは何とも言い難し。睡眠薬の成分で背中が痒くなったあの時のようだ。いや、ほんとムズムズ病っていうのがあるんだけど、あれそうだったのかな?あれがもう少し痒くなったら発狂するだろうな。
人間が痒みに耐性が無いってのが身にしみてよく理解できた。
今寄生虫だけど・・・。
掴めと言うように、それは細い本当に細い糸のような物だった。意識を沈め糸を手繰り寄せてみるが、これが上手くいかない。
(つかめ?本当につかむのか?これを?)
ふと疑問に思った、それを見ることはできる。しかし掴めるほどにそれは大きくない。意識を沈め額?に目があるような感覚でみるのがコツだ。そもそも目どこ?とかもう今更だから置いといて。暫く感覚だけを頼りにその糸に触れようとする事に重点を置いた。
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あれから1年後
いや、俺の寿命あと何年だろう。
とか思い至った頃。ついに糸に干渉する術を身につけた。
長かった、んでもって楽しかった。何が起こるかわからない為、慎重に且つ繊細にそれを操る事に専心していた事が功を奏してか、いまでは指先のように操る事が可能となった。
(で、これが何?)
そう、それだけが未だに謎に包まれていた。いや、本能さん、一番大事なところでしょここ!。
語り書けるようにそう文句を付けると、珍しく反応?があった。
(振れ)
振れってなんだろう、糸をって事かな?少したわませるように波打たせたが、本能さんはそれでは合格を出してくれなかった。
(振れ)
淡白なその反応についにイラっときた。だってこの一年間、人が休むと痒さを出してきてさんざん煽ってきたのに、いや、後半は確かに動かし方にバリエーションが増えてきて楽しかったが、それでも初期は気が狂いそうだったのだ。
鬱憤も詰まっているのだ、いいだろう望み通りにしてやろうではないか。
俺は糸を鞭のようにしならせ力いっぱい振って、空をたたくように叩きつけた。ほら、よく鞭でやるでしょ?タイミング良く引いて音出すやつ。あんな感じ。
パーン!!!!!!!
・・・・・・・・。
え?。