とある潜伏者の手記1
一日目
本日より某村にて、行き倒れの者として拾われての潜入調査が始まった。
村の中はあちこちに不思議な物が点在しているが、他に特別おかしな物はない。
不思議な物とはどうやら彼らが信奉している神を模した物らしい。
人の形をしていない神とは森の奥にいる蛮族の信仰と似ている節がある。しかし、その神を畏敬しているというよりも心酔していると言っていい程、神を語る彼らの顔は喜悦に満ちていた。
その表情を見て感心や興味というものよりも、何かうすら寒い物を感じた。
帰りたい
二日目
村では魔物であるウルフとの共存に成功しているらしい。
今日はその群長に顔合わせに連れて行かれた。
従えているのではなく、共存と言っていた。3回聴き直したから間違いない。
村の中を歩いても大丈夫なように臭いを覚えて貰うために来たそうで、ウルフは何度か鼻をヒクつかせると興味が失せたかのように一瞥をこちらに送ると何処かに去っていった。
せめて首に縄を付けて欲しい。夜中寝込みを襲われたらひとたまりもない。臭いを覚えられたから私の居場所等すぐに割れてしまうだろう。ウルフの遠吠えがここまで恐ろしい夜は始めてだ。
帰りたい
三日目
この村の子供はとても元気が良い。ウルフの幼体と戯れている姿を遠目で見ていたが、心が洗われるような光景だった。魔物と人の共存。相いれぬ筈の両者が共に遊ぶ様は理想郷の如く遠いものだと思っていたのだが、この村では当たり前なのだ。
しかし、この村の子供は髪が長い。女の子も男の子も全員だ。あと気のせいだと思うが、髪の毛がありえない動きをしたような気もする。風は吹いていなかったと思うのだが。
少し気になって話掛けようとしたが傍に控えていたウルフの存在に気づき止めた。
じっとこちらを見ているウルフ。なんだか今日はずっと見られているような気がする・・・怖い。
帰りたい




