初めての寄生
(さて困った)
本能の下した次なる司令は、[高い草に登れ]だった。
ここからどうしろというのか。そもそも自分がどんな生き物かすら把握して無いのに。こんな目立つ所に誘導するなんて。
(本能さん、君しか頼れる物は無いんだ、頼んだぞ!)
意を決して、暫く後。
それは現れた。揺れる足場、耳朶を打つ轟音。そもそも耳や目があるのか怪しいけど。と現実から逃避しつつ、自嘲気味に笑う。
(本能おおお!テメェェェェェ‼︎)
思わぬ裏切りから、怨嗟の感情を吐き出しつつ、パクリと咥えられた俺は、大空に飛び上がったのだった。
まぁ、消化されればその更に上から見下ろせるだろうね。
(痛い痛い痛い痛い)
身体が千切れそうだ。暫く痛みにのたうっていると、痛みを超えて本能がざわりと騒ぎ始めた。鳥肌が立つような感覚と共に、それを実行することが出来る事を理解した。
プツリ
身体が千切れた音がした。
しかし、これで良いのだ。千切れた先が自由に動き、痛みも嘘のように引いていった。
[自切り]、蜥蜴の尻尾のように、俺は自らの身体を切る事が可能らしい。
(本能、事前に説明しとけよ)
罰として今後敬語は使ってやらんと、心に決めた。
とにかく、今はこの先だ。鳥の頭にとりつく事に成功したが、幸いにも鳥は気にしていないようだ。
羽毛に潜り込んでみると中は暖かい。
(此処で止まるってのは無しかぁ)
本能が囁いてくる。
(もっと・・・もっと奥へ。)と。
導かれるまま這いずり回っていると、顔周辺を動かれるのが気になったのか、鳥が一度顔を振ったが、ここまで入り込んでしまえば、他の鳥に毛繕いでもして貰わねば取り除く事はできまい。
好き勝手這い回っていると、小さな穴のような物を見つけた。
(これは・・・鳥の耳か・・・。)
どうやら探し処ろはここだったようで、本能が入れと急かしてくる。イマイチこの本能のしたいことが掴み難いが、まあ、ここまで来てしまったのだ。希望を叶えてやろう。
入り込むと、ついに鳥が首を猛烈に振り始めた。無駄無駄、このまま侵入してくれようと、内心あくどい笑みを浮かべつつどんどん入っていく。キューキュー聞こえるが、これは鳥の苦悶の声だろう。
(それにしても、これってあれだな、まるで寄生虫みたいなシチュエーションだよな)
少々危険でアクロバットな寄生の仕方だが、自ら食われに行くのはかたつむりに寄生する、某ロイコクロなんとかさんのようではないか。で、どうやら本能が目指す場所は鳥の内部のようだし。
(芋虫とか、そこらへんかと思ってたのになあ。)
また奇怪な物に転生しちまった物だ、しかも寄生先が鳥とか、R18の展開は避けられそうだ。あっいや、でもゴア表現やばそう。
比較的
安全地帯に踏み入ったからか、余計なことにまで考えが差し掛かったところで、本能さんがストップをかける。
どうやら望みの場所に到達したらしい。と、そこでまた新たなミッション。
(・・・寄生虫確定か)ここでどうやらお食事タイムのようだ。