ゴブリンとの遭遇
日が中天にほど高くなった頃。
「う~ん」
幸子がむずがるような声を上げ目を覚ました。
キョロキョロと周囲を見回し、慌てながら身体をペタペタと触り確認している。
「身体がいたくない?・・・なにこれ・・・これ・・・私の髪の毛?。」
何か納得いかないような仕草をしながら立ち上がると。
「そうだ・・・父さんと母さんは・・・」
フラフラと歩き出した。
(言葉が理解できないのが辛いなあ)
はてさてと、最初のアプローチヲどうしようか悩んでいた所。
「グギャア!!」
何か聞き覚えがある鳴き声が聞こえてきた。
そう、ファンタジー定番の哀れなやられ役、ゴブリン君の鳴き声に間違いない。
(ご都合主義万歳!)
本来女の子一人であるならば、絶望的な状況ではあるが、今はまさに求めていた存在である。数は3匹、粗末な木の棒を持ったのが二匹、ボロボロの錆びた剣を持ったのが一匹。
「・・・。」
幸子はその声を聞いた瞬間から微動だにせず、気配を殺すように息を潜めていた。見つかってしまえばどうなるのか、幼い彼女でも親や他の者から教えられてもいるだろう。
だが、その必死な隠形も虚しく
「グギャギャギャ!!」
「ゲヒャー!!」
「ひぃっ!」
血に濡れた身体の臭いまで消すことはできずにあっさりと見つかってしまった。いや、多分女の臭いってのも嗅ぎつけているのであろう、テンションの上がり方が異様である。
(どうしてこいつらは危険な時と女がいる時にだけ感が鋭いのかねえ)
きっとR18的な要素がからんでくるに違いない。
言葉の通り踊りかかってくる三匹に、幸子は完全に固まってしまった。
(ではでは、幸子を怖がらせる不届きものの排除といきますか。)
幸子の身体を操作して両腕を前に突き出させる。
「えっ?えっ?」
何が何やらとあっけにとられる幸子だが、身は任せてくれているので問題ない。
人間サイズではあるが、ポチの触手の時の威力を鑑みればこんなゴブリン如きを削るには十分だ。
発射機構が少々不安であるが、速度が出ないだけで前に発射する分にも問題ない。
バチン、という短い破裂音と共にその攻撃が放たれ、まっすぐ突っ込んできたゴブリンは胴体を完全にひき肉にされ、そのまま慣性にしたがいつつ幸子の前に散らばった。
(そういえば、この攻撃の名前も決めて無かったなあ。シンプルに魔動砲で良いかな。)
今度は突っ込んできた剣持の一匹が固まる番だった。驚愕に目を見開き、幸子と目を合わせる。両者とも目をパチクリとさせて見つめ合っていたが。
ゴブリンはとあることに気づいた。
それは幸子の髪の毛に擬態した触手が重力に逆らい、肩程の高さに持ち上がりゆらゆらと揺れる様だった。さながら人が手をふる挙動の様に見えるそれについて、このゴブリンは知っていた。理解して、目を剥き出しながら必死の形相で即座に逃げ出した。「ぐげえ~ぐげえ~」とか悲鳴のような物を上げながら。
(勘の鋭いやつめ。)
ゴブリンが消えると、周囲はまたも静寂に包まれる。
幸子は不思議そうにその掌をじっと見つめている。




