揺り籠と目覚め
ぼんやりと明るい空間、幻想的というか神秘的というか。それでいて凄く落ち着く。
はて、俺は成功したのだろうか?。ここは目指した、いきつく果てなのだろうか?。
まぁ、それを確認する術は無くただ揺蕩うようにその場に留まる。
(まるで密封された揺り籠みたいだな・・・)
密封された・・・
密封?
・・・
冷や汗が流れる。
(今、俺呼吸してるよね?。)
思考がそこに行き着いた所で、途端に息苦しくなる、段々と揺り籠の温度も上がってきたような気がする。
慌てて身体を動かそうとするが。
(腕も脚も無い!?)
驚愕の真実に更に動揺する。
息が粗くなってしまい、更に温度が上がり、息苦しさもます。
とにかく身を捩らせてみると、壁のような物にあちこち触れる。揺り籠はどうやら広くは無いようだ。いや、広い揺り籠なんてあるかは知らないが。
揺り籠の壁は触ると容易く歪んだ。
水風船のような感触のそれは、思い切って頭突きでもすれば破れそうだ。
「ふんっぬっっう!」
妙な掛け声と共に渾身の頭突きを放つと、揺り籠にパチンッという音が響いた。
(行けそうだ!)
とにかく新鮮な空気を求め頭突きを数度繰り返して、壁を破る事に成功した。
世界は
緑色に萌えていた。
焼き付くような日差しと草の緑色は、網膜を燃やすように、辺り一面に満ちていた。
しかし驚くべきはそのスケールの大きさだ。
(小人になったみたいだ。んで此処はどこ?
俺は・・・ナニ?)
とりあえず喫緊の場面から逃れた事により、一層の疑問が湧き上がってきた。
とにかく、俺は人間では無くなってしまったようだ、その証拠に視線を後ろに向ければ白い殻の卵が割れた状態でぽつんと置いてある。これから俺は「産まれた」ようだから。
(転生って奴かな?)
この手の話しはよく読んでいた。足りない頭でも、文章を読んで雰囲気とストーリーを楽しむこと位は出来ていたと思う。
だからか、現状をどこかゲームのように感じながらも、慌てずに受け入れる事ができた。
(さて、それにしても、これは何とも)
不思議な感覚である。
本能というべき物だろうか、何と無く、次に起こす行動が思い浮かんで来る。理性とは違った面からくるそれは、湧き上がる泉のようで、ムズムズと心臓を擽るように囃し立ててくる。(卵の殻、食べるのか。)
自分が入る程の大きさだ、食べるのは一仕事だろう。
面倒だが、いかんとも逆らい難く、内心溜息をつきながらも、パリパリと卵を食べ始めたのだった。